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PAX JAPONICA GROOVEが体現した、音楽とテクノロジーの“和” 代官山UNIT初ワンマンレポ

2018年01月22日 15:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 黒坂修平によるソロプロジェクトPAX JAPONICA GROOVEが1月5日、代官山UNITにてワンマンライブ『NEW YEAR SPECIAL SET -EN:VISUAL & Extended-』を開催した。


参考:ライブ演出×テクノロジーが次に向かう未来は? PAX JAPONICA GROOVE×VJyou対談


 日本の“和”、融合・ユニティという意味の“和”をコンセプトに持つPAX JAPONICA GROOVE。2007年に活動を始め、ピアノとダンスミュージックを掛け合わせた音楽性を主軸に意欲的なリリースを重ねている。デビューから12年というキャリアでありながら、意外なことに今回が初のワンマンライブだった。


 同公演は「音とインタラクティブエキシビジョンの融合」がテーマになっている。ライブ前に行ったインタビューで黒坂は、同公演について「PAX JAPONICA GROOVEが持ってる世界観を視覚化させて、それを拡張させることで体験してもらいたい」と説明。これまでもRhizomatiksやチームラボといったクリエイティブグループの作品に参加してきたPAX JAPONICA GROOVEが、音楽×テクノロジー×アートを掛け合わせた新感覚のライブを見せてくれた。


 ライブは4つのテーマを持つブロックで構成されており、まずは日本の“和”を取り入れた楽曲からライブはスタート。ギター、ベース、ドラム、ピアノ、DJセットといった機材がステージ上に配置される中、その中央には空中パフォーマンス用のリングが置かれる異様なセットが組まれていた。黒坂が登場して和太鼓のビートが会場を満たすと、「昇竜」「Odori」とダンスナンバーを立て続けに披露した。バンドサウンドにクラブミュージックを同期させ、そこに篠笛や尺八といった和楽器の生演奏も参加。和と洋が入り乱れる独特のグルーヴが生まれると、フロアの観客も徐々に体を揺らし出す。


 また、竹林や花火をモチーフにしたVJをバックに、エアリアルパフォーマー集団・GRO vi ARTがリングを使って妖艶に舞い、一気に会場の視線を集める。「HIBANA-sparks-」では津軽三味線も参加。尺八の渋みのある音と三味線の軽やかなメロディが絡み合い、さらに黒坂によるエモーショナルなピアノがダンスビートの上で弾ける。ライブという枠を越え、よりエンターテインメント性に特化したPAX JAPONICA GROOVE独自の空間が広がった。


 和とダンスミュージックの融合を見せた後、黒坂のDJとギター、ベース、ドラムによるDJパートへ移行。舞台転換でホログラフィックスクリーンがステージ前面に張られ、音と映像で魅せるパフォーマンスが展開された。フロアを揺らすほどの重低音が響きわたり、黒坂は「Radiant massive」「Light on galaxy」といったアップテンポのダンスナンバーをつなげていく。ホログラフィックスクリーンによって空間に映像が浮かんでいるような錯覚が起こると、まるで演者が映像の中に入り込んでいるような不思議な感覚を覚えた。近年は最新のテクノロジーを取り入れ、意欲的なライブを行うアーティストも少なくない。映像や演出分野のクリエイター、他ジャンルのアーティストとタッグを組み、ライブそのものをひとつの作品として昇華している。同公演でもVJやレーザー、照明などに専門家が参加。プログラミングと手動を使い分け、演出にもライブ感を出したという。宇宙や近未来をモチーフにしたVJ、ステージから四方へ飛ぶレーザー演出、先ほどとは打って変わり会場は一気にクラブの雰囲気に包まれた。


 ライブ中盤では、4名のゲストボーカリストを迎え、ボーカル曲を中心としたブロックが設けられた。tomoe sugoが「Fly To The Star 」を歌唱した後、「Starry fight」のボーカリストとしてchi4が登場。疾走感のある楽曲に体を揺らしながら、chi4の伸びやかな歌声に聴き入るオーディエンス。PAX JAPONICA GROOVEが3月にリリースする新アルバムから、Hiro-a-keyをボーカルに迎えた新曲「stay gold」を初披露。黒坂が惚れ込んだという芯の通った歌声に、流麗なピアノが合わさることで、ムーディーな空間を演出。PAX JAPONICA GROOVEのまた違った一面を垣間見ることができた。


 本編を締めくくったのは、黒坂のピアノと打ち込みのみで演奏された「Pianophonic」。ダンサブルなビートと切なさを孕んだピアノ、相反するふたつの感情が調和を見せながらクライマックスへと向かっていく感覚は、PAX JAPONICA GROOVEの真骨頂とも言えるだろう。ステージ背面に設置されたLEDライトやレーザー、照明の光が音とシンクロして弾けるように輝き、フロアで踊る観客の笑顔を照らす。PAX JAPONICA GROOVEが掲げた“和”の世界観が、この会場の中で体現されたようなステージだった。


 ライブハウスやクラブの垣根を越え、演出面でも新しい体験を追求したPAX JAPONICA GROOVE。今回のライブでは「音楽を視覚的に楽しむ」という試みも実践されていた。インディペンデントだからこそ今回の公演は実現したと黒坂が語っていたように、今は個人の意思があればアイデアひとつで様々なことにチャレンジできる。これからはより一層ライブの多様化が進んでいくのかもしれない。(泉夏音)