2018年01月22日 11:03 弁護士ドットコム
会社や部署によっては貸与されることもある社用携帯電話。最近はガラケーではなくiPhoneなどを支給されるところも多いようで、私用の携帯と合わせてスマホ2台持ちの人も珍しくありません。
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そんな中、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに「社長が社用携帯を強制的に取り上げ閲覧した」という相談が寄せられました。相談者の女性によると、社長がメールの個人的なやり取りを見たり、その内容について問い詰めたりしたそうです。
女性は「正当なものなのでしょうか」と疑問に感じているようです。社長のこのような行為が法的にOKなのでしょうか。林浩靖弁護士に聞きました。
社長が社用携帯を強制的に取り上げ閲覧したという相談ですが、これは正当なものなのでしょうか。
「社長が暴力をふるったような事案ではないことを前提にして、プライバシーとの関係に絞って回答します。
労働者の送信する電子メールをモニタリングしていたという事案において、裁判例は、『監視の目的や手段およびその態様等を総合考慮し、監視される者に生じる不利益と比較衡量して、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視が行われた場合には、プライバシー侵害となる』としています。(東京地判平成13年12月3日労判826号76頁)」
つまり、合理的なものであれば認められるということでしょうか。
「そうなります。そして、この裁判例は、自己のセクハラ行為告発の動きを知った上司が労働者の電子メールを監視し続けたという事案ですが、この上司による監視行為を社会通念上相当な範囲を逸脱していないと判断しています」
「そもそも、社用携帯はあくまで業務上の利用をするためのものというのが前提です。そして、先のような裁判例の考え方からすると、社長が『無条件に』社用携帯を強制的に取り上げ閲覧することができる訳ではありませんが、例えば、労働者の私的利用が疑われる相応の事情があれば、合理的なものと考えざるを得ないでしょう。
そのため、社長が興味本位で労働者のプライバシーを知るために社用携帯を強制的に取り上げ閲覧したような事案でもない限り、プライバシーの侵害とは評価できず、適法と評価される可能性が高いでしょう。
相談者の女性の方の場合、メールの個人的なやり取り、すなわち、私的利用をしていたとのことですので、私的利用の疑いがあるための調査でしょう。ですから、社用携帯を閲覧されてもやむをえませんし、そのメールをやり取りしている理由は聴取されてもやむをえないと思われます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
林 浩靖(はやし・ひろやす)弁護士
東京弁護士会所属。企業法務を中心に取り扱う事務所、金融商品被害を中心に取り扱う事務所を経て、事務所を開設。中小企業の企業法務、金融商品被害などを中心に業務を行い、原発被災者弁護団団員として、福島第一原発被災者の問題にも携わっている。
事務所名:林浩靖法律事務所
事務所URL:http://www.hayashihiroyasu-lawoffice.jp/