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春畑道哉が語る、ギタリストとしての挑戦と“TUBEの夏” 「やりたいことがたくさん出てきてる」

2018年01月22日 10:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 TUBEのギタリスト春畑道哉が、海外ドラマ『リーサル・ウェポン』シーズン2の日本版オリジナルエンディングテーマとして、新曲「【Re:birth】」を書き下ろし。1月22日より配信がスタートした。


 2016年にソロデビュー30周年を迎え、通算9枚目のフルアルバム『Play the Life』をリリース、その後は全国ツアーも回った春畑道哉。新曲「【Re:birth】」では、『リーサル・ウェポン』の物語をさらに引き立たせるための音を追求したドラマチックな楽曲に仕上がっており、デビュー30周年を超えても、なお新たな挑戦を続ける春畑の姿を垣間見ることができる。


 今回のインタビューでは、楽曲の制作過程はもちろん、今後のソロ活動について、そして昨年8月に行われた、TUBEの29回目の横浜スタジアム公演について話を聞いた。(編集部)


■「あのスピード感が、一曲でうまく表現できれば」


――1月22日に配信リリースとなる新曲「【Reːbirth】」は、緊張感のある激しいギターリフから始まり、一本の映画を観るようなドラマティックな楽曲です。人気海外ドラマ『リーサル・ウェポン』シーズン2日本版のエンディングテーマとして書き下ろしたということですが、どんなところから構想を膨らませたのでしょうか?


春畑道哉(以下、春畑):シーズン1の映像をいただいて、イメージを固めていきました。とにかくのめり込みましたね。18話というボリュームで、しかもレコーディングで忙しい時期だったこともあり、飛ばし飛ばしに観て要素をつかもう、と思っていたんだけれど、一話目を観たら、もう止まらなくなってしまって(笑)。本当に多くの要素が詰まった作品なので、結果としてすべて観てよかったです。


――激しくスピーディなところから、家族や仲間への温かな思い、そして立ちはだかる壁とそれを乗り越える力……と、さまざまなイメージがシームレスに、違和感なく表現されているように感じました。


春畑:そうですね。このドラマはカーチェイスや銃撃戦、街中での爆破シーンなど、刺激的な部分とスピード感が最初に飛び込んでくるので、まずはそれに合うギターリフを考えて。ドラムも普段とは違う、爆破しているような音を使ったり、ギターもメタルなどによく使われるドロップD(6弦を1音下げる)という変則チューニングにしました。TUBEでは一度も使ったことがないチューニングですね(笑)。


 あとは、痛快というか、ポジティブというか、スカッとするドラマでもあると思うので、サビの部分は前向きな気持ちになれるような、躍動感のあるスッキリとしたメロディにして。おっしゃるように、家族愛や友情を感じるシーンもテンポよく描かれているので、一曲にそれも入れてしまおうと。泣けるシーンだと思ったらすぐに笑えるシーンが来て、笑っていたら背筋がゾッとする場面が来たり。あのスピード感が、一曲でうまく表現できればと考えました。


――サウンドメイクの面では、どんなことを意識しましたか?


春畑:シーンごとに録っていったので、凶悪犯罪をイメージする部分では、それこそドロップDでアンプも強い設定にして。また友情や家族愛を感じさせるシーンでは温かいトーンを目指して、サビでは爽快感とポジティブさを出せるように……と、ギターチョイスもアンプのセッティングも、シーンに合わせて調整したんです。


――ドラマの制作サイドとは、どんなやり取りがあったのでしょうか?


春畑:やっぱり、ポジティブであるということはすごく重要視されていました。ただスリリングでスピード感があるだけでなく、前向きであってほしいと。僕が思ったのは、シーズン1で挿入曲も本当にカッコいいものが使われているので、「エンディングだけダセえよ」とは絶対に言われたくないな、ということで(笑)。『リーサル・ウェポン』は、映画版ではエリック・クラプトン、デヴィッド・サンボーンという、どちらかと言うとブルージーで、シンプルなギターフレーズ、サックスフレーズが印象に残るけれど、ドラマ版はヒップホップだったり、「これぞアメリカ!」というカントリーだったり、シーンに合わせてさまざまな曲が流れていて、映像にマッチしている。その流れのなかでカッコよく聴こえるものにしたい、というのはずっと思っていました。


――劇中の挿入曲もそうですが、エンディングを締めくくる音楽も、ドラマのイメージをつくる大切な要素ですね。


春畑:そう思います。映画を観終わったあと、エンディングのクレジットが流れるときにかかる曲で、「ああ、制作者はこういう印象で締めくくりたいんだな」というメッセージが伝わってきますから。


――人気ドラマのエンディングテーマだということを抜きにしても、リスナーを熱く鼓舞する聴き応えのある一曲です。リスナーには、どんなシチュエーションで聴いてもらいたいですか?


春畑:僕、ミックスの確認をけっこう車でするんですね。スタジオだけだと、どうしても視野が狭くなってしまうし、周りがうるさい状態で聴くとどうなのかな、ということを確認したくて。それでこの曲も車で聴いてみたら、アクセルを踏み込みそうになって危なかったので、注意してください(笑)。


――気持ちよくドライブできそうな曲ですが、注意ですね(笑)。例えば社会人だったら、大きな仕事に臨む前に聴くとパワーがもらえそうです。


春畑:確かに、「これから戦いに行くぞ」というタイミングにいいかもしれないですね。


――さて、ソロデビュー30周年を超えて、さらに新しいことにチャレンジする姿勢が伝わってきますが、いまはギタリストとしてどんな時期ですか?


春畑: 「【Reːbirth】」をつくって、面白い作品ができたと自分でも思っていて。ガットギターのフラメンコスタイルにも取り組んでいますし、やりたいことがたくさん出てきているんですよね。それだけに、一枚のアルバムにまとめるのは大変そうですが(笑)。


――今年の活動も楽しみです。あらためて、ドラマを楽しみにしているファンにも一言、メッセージをお願いします。


春畑:僕自身、こんなに引き込まれるとは思いませんでした。本当にいろんな面から楽しめるドラマで、家族や仲間を大切にしようと思わせてくれるところもあるし、「このミッションを意地でもやり遂げたるで!」という気持ちにもしてくれる。オススメです。


■「再開のときに歓声がすごくて、本当にうれしい気持ちになった」


――ファンの記憶に強く刻まれるライブになった、去年の横浜スタジアム公演を収めたBlu-ray&DVD『TUBE 2017 横浜スタジアム sunny day ~Live&Back Stage~ + 2016 大晦日』 が発売中です。雷雨で一時中断というトラブルがあり、予定されていた春畑さんのソロコーナーが流れてしまったのが残念でしたが、あらためてどんなライブでしたか?


春畑:この日に向けて一生懸命特訓していたので、もちろんフルで観ていただきたかったんですが、再開したときにほとんどの方が待ってくれていて、本当にうれしかったです。それが一番ですね。


――アコースティックスタイルのオープニングも印象的でした。


春畑:そうですね。メニューを考えるときに、いつも4人で「絶対にこれまでにやったことがないオープニングにしよう」と話し合うんです。去年は4人だけでバンドスタイルで出て、ロック曲をメドレーで届けて。その前は逆バンジーとか、アトラクションの要素もありましたね(笑)。今回もたくさんのアイデアを出し合ったなかで、4人でアコギを弾きながら打ち合わせていたときに、「スタジアムでもこの感じで始めちゃう?」って。アコースティックな部分は自分たちの音楽性のなかでも好きなところだし、ここは堂々と、私服で普通に歩いて出ていこうと。年に1度の横浜スタジアムですから、ド派手なオープニングを望まれる方が多いかもしれませんが、50歳バンドでたまにそういうオープニングもいいかなと思うんです。それで、あのままジワジワと盛り上げていこうと思っていたら、あいにくの雷雨で。


――かなり近い位置で雷鳴がとどろきました。


春畑:雷は僕たちの背後で鳴っていたし、イヤモニをしているので、実は全然気づかなかったんですよ。ドン、ドンと何かが鳴っているのはわかっても、イヤモニ越しだと、水柱や爆破という特効と同じように聴こえて。イヤモニを外して振り返ったとき、やっと気づいた感じで、映像を観てとにかく驚きました。


――一時中断になりましたが、バックステージではどんなお話を?


春畑:きちんと再開できるのか、お客さんは大丈夫なのか、という心配をしながら、再開した場合にどこまでできるんだろう、という話をずっとしていましたね。再開のときに歓声がすごくて、「ああ、待っていてくれたんだ」と、本当にうれしい気持ちになりました。照明が故障してしまって、野球のナイターくらいの明るさになって。前田は「着替えを覗かれているみたいで恥ずかしい」なんて言っていましたね(笑)。


――中断の影響をまったく感じさせないパフォーマンスでした。24年ぶりにリリースされたミニアルバム『sunny day』の収録曲がひとつの軸になっていたのも印象的で、TUBEがさらに先へと進もうとしていることを印象づけるライブにもなっていたと思います。


春畑:そうですね。4人も新しいことにチャレンジしたい、という気持ちがあって、それが11月からのアリーナツアーにもつながっていて。アリーナでは、4人それぞれがこれまでとは違うかたちでパフォーマンスする、というメニューもありますしね。ワンパターンなライブとか、ワンパターンなアルバムにしたくない、というのは、実はずっと思っていることで、いつ発表できるかはまだわかりませんが、「TUBEがこんなことをしたらおもしろいよね」という話は、しょっちゅうしています。もちろん、夏に「待ってました!」と聴いてくれるのもうれしいんですけどね。


――DVDの注目ポイントについても、一言お願いします。


春畑:普段のライブDVDとは趣が違って、今回はライブを映しているだけでなく、中断したときに何をしていたかとか、避難しているお客さんの映像とか、メンバーでメニューを考えているところとか、ドキュメンタリーのようになっています。ライブに来ていただいた方も、別の視点から楽しんでもらいたいですね。


――そして次回の横浜スタジアムは、記念すべき30回目です。


春畑:本当にデビュー前から、横浜でライブハウスに出ていたし、横浜スタジアムは、地元でのライブということが強く感じられる特別な場所です。リベンジじゃないですけど、なんとか晴れるように祈りつつ、突き抜けたライブをやりたいですね。アコースティックなオープニングはもうないので、おそらく、最初からド派手なものになるんじゃないかなと。


(取材・文=橋川良寛)