マクラーレン・ホンダF1チームの戦いをグランプリごとに辛辣に批評してきたF1速報WEBの連載「マクラーレン・ホンダF1辛口コラム」。パートナーシップの終わりに伴い、筆者のNick Richards氏が、スペシャル企画として、マクラーレン・ホンダの3年間を振り返り、なぜこのパートナーシップは成功しなかったのかを検証、それぞれが新しいパートナーとともに臨む2018年シーズンに向けて課せられる課題について考察する。
3回にわたって掲載する特別編の第1回では、ホンダにとっての最大の過ちは何だったのか、第2回では、マクラーレンはなぜこのパートナーシップをうまく機能させられなかったのかがそれぞれテーマだった。最終回の第3回では、2018年、新たなスタートを切る両者にはどのようなプレッシャーがのしかかるのか、どれだけのことを成し遂げなければならないのかについて、Nick Richardsが論じる。
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2018年はマクラーレンにとってもホンダにとっても重要な年になる。3年にわたり不振から抜け出せず、結局パートナーシップが失敗に終わったことで、いずれも名誉が著しく傷ついた。ホンダがパートナーを公然と批判するようなことはほとんどなかったが、マクラーレンの方は、スタッフの大半があらゆる機会を利用してホンダをこき下ろした。そのために世間から見たホンダのイメージはマクラーレンのそれよりも大きく傷ついた。だが、F1関係者たちは、どちらにとっても2018年は正念場であると見ている。マクラーレンもホンダも、今年いいパフォーマンスを見せることで、パートナーシップが失敗したのは相手のせいだったと証明する必要があるだろう。
表面上は、ホンダの方が難しい状況に立ち向かわなければならないようにみえる。新しいパートナーであるトロロッソは、12年のキャリアのなかでのコンストラクターズ選手権最高位は6位、過去4シーズンは7位にとどまっているようなチームだ。トロロッソには、マクラーレンのような立派な設備も大量の人材も莫大な予算もない。さらに2018年のドライバーラインアップは全チーム中、最弱のひとつだ。別にピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレーをけなすつもりはない。ふたりとも今まで参戦してきた他のカテゴリーでは非常にいい結果を出している。だが、グランプリ出走経験がふたり合わせて9戦しかなく、しかも2017年シーズン終盤には信頼性のトラブルが相次いだため、F1マシンでの走行距離も非常に少ないことは不安要素だ。
ホンダが最初に目標とすべきなのは、信頼性の高いエンジンを提供できるということをトロロッソに対して証明することだ。しかもテスト初日からそれをする必要がある。過去3年のプレシーズンテストでは悲惨な状況が多々見られたが、今年は最初からしっかり走り、距離を稼がなければならない。パフォーマンスを追求するのはそれからだ。トロロッソが今年もルノーと戦い、メルセデスPUを搭載するフォース・インディアやウイリアムズを追いかけ、ハースやザウバーとのギャップを拡大できるよう、サポートするのが大事な仕事だ。マクラーレン・ルノーに勝てればなおいいし、もしもレッドブルを2019年と2020年にホンダのエンジンを使いたいという気持ちにさせることができれば、半年前には誰からも関心を寄せられなかったエンジンサプライヤーとしては大成功だろう。
この3年、ホンダは自身がいくつか失敗を犯したことを認めているが、マクラーレンの方は、とにかく大口をたたく一方だった。自分たちのシャシーはF1のなかでもベストのひとつであるのに、ホンダ製パワーユニットのパフォーマンスと信頼性が劣っているがために低迷しているのだと主張し続けたのだ。2018年にマクラーレンはレッドブルおよびルノーと同じパワーユニットを搭載する。彼らの自慢げな主張が正しいと証明するには、少なくともレッドブルに匹敵するパフォーマンスを見せる必要がある。しかしレッドブルに敗れるようなら、多くの者が信じているように、この5年のマクラーレンにはトップチームと呼ぶにふさわしい力がなかったという事実が露呈することになるだろう。シャシーはメルセデス、レッドブル、フェラーリと比べられるようなものではなく、レースストラテジーはお粗末、ピットストップ作業はひどいものだし、商業的な方向性も見失っている──F1関係者の多くはそう考えている。
ホンダは多少なりとも向上してトロロッソとまずまずのシーズンを送りさえすれば、評判を回復することができる。だがマクラーレンが、その能力を疑う者が間違いであると証明するためには、大きな成功を収める必要があるだろう。コンストラクターズ選手権でメルセデス、フェラーリ、レッドブルから大差の4位に終わり、一勝もできなかった場合、ザック・ブラウン率いる首脳陣にとって大きなダメージになるはずだ。パートナーシップを解消した両者にプレッシャーはかかっているものの、ホンダよりマクラーレンにかかるプレッシャーの方が比較にならないほど大きいと私は考える。しかしそういう状況に追い込んだのは、ほかでもない彼ら自身なのだ。