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ヒュー・グラント&ヒュー・ボネヴィルが語る、『パディントン2』に込められたメッセージ

2018年01月21日 15:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 英作家マイケル・ボンドによる小説『くまのパディントン』の実写化シリーズ第2弾の映画『パディントン2』が1月19日から公開された。前作でブラウン一家の仲間入りを果たしたパディントンは本作で、故郷にいる育て親のルーシーおばさんへ飛び出す絵本を贈ろうと試みる。その中で、初めてのアルバイトに挑戦したり、絵本泥棒の濡れ衣を着せられ牢屋に入ったりするなど、様々な試練が待ち受ける。


 今回リアルサウンド映画部では、パディントンを家族に迎え入れた一家の主ブラウンさんを演じたヒュー・ボネヴィルと、今回から出演する落ち目の俳優フェニックス・ブキャナン役のヒュー・グラントにインタビューを行い、本作に込められたメッセージや昨年亡くなった生みの親ボンドについて聞いてきた。


参考:『パディントン2』場面写真


 前作から登場するボネヴィルは、パディントンと人生で初めて出会ったのは4,5歳だと語る。1958年に第1冊目『くまのパディントン』が出版され、母親に読み聞かせられたのが始まりだと言う。それから成長していくにつれ新刊が出て、自分で読むようになったそう。「子供時代からすごく思い入れのあるシリーズだ」と語り、パディントンを愛するブラウンさんの役柄にぴったりの幼少期を送っていたようだ。


 今回から登場する“落ち目の俳優“ブキャナンは、グラントの実績とは真逆だが、グラントがポール・キング監督から脚本を受け取った時、一緒に手紙も付いていたそう。そこには、「『パディントン2』を作ることになりました。演じるキャラクターは、かつて有名で現在落ちぶれてしまった俳優で、あなたにぴったりだと思っていました」と書かれていたと明かし、「正直とってもショックだったよ(笑)」とグラントは笑いながら語る。


 『ノッティングヒルの恋人』以来の共演となる2人だったが、ボネヴィルは、「20年前に共演して以来共に仕事をすることはなかったけれども、役者としても悪役としても素晴らしい人物だった」とグラントを絶賛。グラントは、2月18日に発表される英国アカデミー賞で、助演男優賞にノミネートされており、「鑑賞するみんなも、彼の役どころを堪能できると思うよ」とベタ褒めだった。


 なんだか憎めない悪役ブキャナンは、劇中で華麗なダンスを披露するのだが、グラントは「歌ったり踊ったりが好きじゃないのに、なぜかどの作品でもやらされるんだ(笑)」と冗談交じりに語った。


 2017年6月27日、残念ながら原作者のボンドは息を引き取った。その日『パディントン2』チームは追加撮影のクランクアップを迎えた日で、「僕たちにとって、とても切ないことだった」とボネヴィルは語る。ボンドは1作目から非常にこのシリーズを気に入って、本作を制作する過程でもずっとキング監督と話し合いながら作り上げていったそう。ボンドのレガシーを受け継いだ彼の娘からも、「父は、本作を気に入ってくれるわ」と太鼓判を押されたと言う。「監督として、パディントンとこの世界を生み出した神様に見てもらいたかったと思うよ」と、ボンドの死を悼んだ。


 また、ボンドの葬儀が行われたのは本作の劇中でも出てくるセント・ポール大聖堂だったこともボネヴィルが明かしてくれた。劇中に出てくるだけでなく、ボンドの遺作となる新刊『Paddington at St. Paul’s』のタイトルにもセント・ポール大聖堂の名前が入っており、ボンドにとって思い入れのある場所で別れを告げることができたそうだ。


 前作でブラウン一家の家族になったパディントンだったが、本作では近所の一部の人々から街への受け入れを拒絶されている。移民問題を抱えるイギリスのみならず、多様性が重視される世界にとって本作から伝わるメッセージは非常に重要なものだ。


 ボネヴィルによれば、ボンドがパディントンを生み出したインスピレーションは大きく2つあるらしい。1つはボンドが戦時中に疎開する子供たちがガスマスクを付けている風景を見たことで、それは前作で「このクマをよろしく」と首に札を下げていたパディントンに見立てることができると語る。また2つめは、ボンドが住んでいた西ロンドンにはカリブ海の移民がとても多く、様々な文化がぶつかり合う時代を過ごしたことに理由があるらしい。


 外国からやってきたパディントンを優しい人々が手を差し伸べ、出会うという物語になっている同シリーズ。ファンタジーではあるけれど、そこにあるメッセージは現実の世界でも見つけることができるとボネヴィルは語り、「この作品を観て、寛容性だったり人の中に善を見つけることの大切さを感じてもらえているのなら、それはいいことだと思うよ」とコメントしている。(阿部桜子)