ホンダのMotoGPマシン、2017年型RC213V。このマシンを駆ってマルク・マルケスがチャンピオンに輝き、コンストラクターとチームタイトルを獲得して、ホンダは2017年シーズン3冠を達成した。今回は、チャンピオンマシンRC213Vにスポットを当て紹介する。
まず最初に、RC213Vの元祖、RC211Vの誕生についてひもといてみよう。MotoGP最高峰クラスを戦うホンダのマシン、RCシリーズの始まりは2002年。この年は、それまで2ストローク500ccマシンで争われていた世界選手権の最高峰クラスがMotoGPと名称を変え、4ストローク990ccマシンとの混走となったシーズンだった。
このときホンダの4ストローク990ccマシンとしてデビューしたのがRC211Vだ。その後、MotoGP最高峰クラスは4ストローク990ccマシンのみのレースとなり、さらに2007年には排気量が800ccに引き下げられた。
この変更によって登場したのがRC212Vで、さらに2012年には排気量が1000ccに引き上げられる。この変更によって開発されたのが、今回取り上げるRC213Vだ。
RC213Vが搭載するエンジンは1000ccの水冷4ストロークDOHC4バルブV型4気筒。最高出力は180kW以上にも及ぶ。RC213Vデビューイヤーの2012年は急きょ変更された最低重量などにより苦戦した。ホンダのワークスチーム、レプソル・ホンダ・チームは2011年チャンピオンのケーシー・ストーナー、ダニ・ペドロサといったライダーラインアップだったが、ヤマハのホルヘ・ロレンソにタイトルを奪われる。
2012年限りでストーナーが引退すると、2013年にはルーキー、マルケスがレプソル・ホンダ・チームに加入。マルケスはMotoGPクラスルーキーながらも2013年型RC213Vでチャンピオンに輝き、2014年には連覇を達成した。
2015年は再びロレンソにタイトルを譲ったが、2016年にはクランクシャフトが逆回転のエンジンを採用したRC213Vでマルケスがチャンピオンを奪還する。2016年はタイヤがブリヂストンからミシュランのワンメイクに、タイヤサイズが16.5インチから17インチになり、ECUが共通化となった革新的な年でもあった。
そして、マルケスがドゥカティのアンドレア・ドビジオーゾと最終戦までタイトルを争った2017年。2017年型RC213Vはエキゾーストシステムがテルミニョーニ製からSC-プロジェクト製に変更となり、エンジンの点火順序が等間隔爆発のスクリーマーから不等間隔爆発のビックバンに変わった。
さらにシーズン途中のテストでは空力カウルが登場している。2017年型RC213Vによってマルケスは全18戦中6勝を挙げてチャンピオンに輝き、ペロドサは2勝を挙げてランキング4位でシーズンを終えた。
ちなみに、空力パーツと思われていたサイドカウル中段、『REPSOL』の“P”付近にある黒いパーツはエンジンスライダー。このパーツの主な役割は、転倒時にエンジンへのダメージを軽減したりするもので、MotoGPでは転倒した際、コース上にマシンを残さないためにマシンを滑らせる役目も果たす。