映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』の予告編が公開。あわせて主題歌が発表された。
3月17日から公開される冨永昌敬監督の『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、末井昭の自伝的エッセイを映画化した作品。幼少期に実母が隣家の息子とダイナマイトで心中した過去を持つ末井が、妻や愛人、先輩、カメラマンらとの出会いを経て雑誌の名編集長になるまでを描く青春映画だ。
予告編では、柄本佑演じる末井、前田敦子演じる妻・牧子、三浦透子演じる愛人・笛子、尾野真千子演じる母・富子、峯田和伸(銀杏BOYZ)演じる末井の同志・近松、松重豊演じる刑事・諸橋係長らの姿に加えて、音楽監督を務める菊地成孔が荒木経惟をモデルにした写真家の「荒木さん」を演じ、被写体を前に「これ、芸術」と語る姿などが確認できる。また自主規制で音声に効果音を被せた箇所なども織り交ぜられている。
主題歌は、尾野真千子が原作者・末井昭とデュエットした“山の音”。尾野真千子が映画の主題歌を担当するのは初めて。
作詞作曲を担当した菊地成孔は同曲について、「音楽監督のオファーを頂いたときに、真っ先に閃いたのは、末井さんに主題歌として女優さんとのデュエットソングを歌って頂く事でした」とコメント。劇中への出演については「演技などできるはずがないので、3年断り続けましたが、とうとう逃げられなくなり、かなり軽い役に落として頂いく事、そして末井さんを主題歌に必ず起用する事、を条件にやらせて頂きました」。
尾野真千子は主題歌のオファーがあった際について「本当に私で良いの?嘘でしょ?と思いました」、末井は「歌が上手くて、声が超カワイイです。女優さんってスゴイ!」と賛辞を贈っている。主演の柄本佑は「映画を観てから聴くと、末井さんと末井さんのお母さんが奇跡のディエットをしている!と、素敵な錯覚を味わえます!」と語っている。“山の音”は3月7日にリリースされる同作のサウンドトラックに収録される。
■柄本佑のコメント
コロコロと転がっていくような曲とちょっとヘンナ歌詞がとっても色っぽく、そこに重なる尾野真千子さんと末井昭さんのめくるめくコラボが聞いていて気持ちいい一曲です。更に映画を観てから聴くと、末井さんと末井さんのお母さんが奇跡のディエットをしている!と、素敵な錯覚を味わえます!
■尾野真千子のコメント
・主題歌のオファー時について
本当に私で良いの?嘘でしょ?と思いました。感覚が掴めずとても難しかったですが皆さんの励ましのおかげで、もっともっと歌ってみたい。という感情が湧き、皆さんがおだて上手だなと思いました。まさか原作者の末井昭さんとデュエット出来るなんて、とても貴重な体験をさせてもらいました。
・自身の歌についての感想
何も言えません…(笑)
■末井昭のコメント
ダイナマイト心中した母親がベースになっていますが、色んなイメージが膨らむ歌です。最初に聴いたとき涙ぐみました。
・尾野真千子の歌について
歌が上手くて、声が超カワイイです。女優さんってスゴイ!
・収録時のエピソード
尾野さんは2時間ほどでレコーディングが終わりましたが、僕は2日かかりました。
一緒に行った妻が焦って、菊地さんに「スエイは歌えるんです。荒木経惟さんのパーティでよく宗右衛門町ブルースを歌うんです」と言っていました。カラオケじゃないんだから。
■菊地成孔のコメント
音楽監督のオファーを頂いたときに、真っ先に閃いたのは、末井さんに主題歌として女優さんとのデュエットソングを歌って頂く事でした。これは、私が知る限り世界映画史上はじめての事ですし、複雑にねじれたマザコン映画(登場する女性――男性の一部さえも――は全て末井さんの母親の変形した投影です)である本作の本質を突く事になり、本作に音楽からのオーラを与え、映画としての霊力的階級を一段階上げると確信したからです。母親役である尾野さんの素晴らしい歌唱によって、「残された子(本人)と母親(女優が演ずる虚構)」という倒錯的な構造にフォーカスが絞られました。この構造が発想された瞬間から、自然に歌詞も曲も出来ていました。小田朋美さんの中期ビートルズ風の素晴らしい管弦編曲も、無限の虚無と愛へのもがき、その葛藤を更に効果的に押し上げてくれました。素晴らしい主題歌だと思います。
・監督からの出演オファーについて
演技などできるはずがないので、3年断り続けましたが、とうとう逃げられなくなり、かなり軽い役に落として頂いく事、そして末井さんを主題歌に必ず起用する事、を条件にやらせて頂きました。私は過去、荒木先生に撮影して頂く機会があり、ちょっとした知己がある事、体型や声質や下町弁が似ていることから、冨永くんが勝手に興奮しただけであって、彼の判断は今でも間違っていたと思います。撮影自体は、自分の音楽のMVのそれより遥かに短時間で簡単に済みましたが、他人が考えた台詞とカメラの動かし方を覚えて、そこに体や顔の動きをつけ、他の俳優さんたちとお芝居を会わせるというのは、私にはとてもじゃありませんが無理で、そのことはキャメラが雄弁に記録していると思います。
■冨永昌敬のコメント
「山の音」は、菊地さんと小田さんによって書かれた『素敵なダイナマイトスキャンダル』のエピローグです。これほど「主題」を補完してくれる主題歌はありません。たとえば歌詞の「地下鉄のトンネル」という一節(そんな場面は本編に存在しないし、そんな場面を撮りたかったと監督が思うほど、まさに補完)には、エンドクレジットの黒い背景も相まって無性にイメージを掻き立てられます。そして尾野さんと末井さんの歌唱は、二人のあたたかい声によって音響的な高揚を画面にもたらし、なお、散り散りに消えてゆく母と探し求める息子といったキャラクターさえ感じさせてくれるでしょう。この歌の魅力は、キャスティングの鮮やかさにまったく留まりません。じっくり聴いてほしいと思います。