2018年01月18日 10:12 弁護士ドットコム
最近ではあまり見かけなくなった「野良犬」。犬の放し飼いも減り、野外で単独の犬に遭遇することも珍しくなった。
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大学生のAさんは、山間部で旅行していたとき、野良犬と思われる犬に遭遇したというが、近くにいた中年男性がその犬を追いかけ始め、最初は逃げていた犬も最終的には捕まってしまったそうだ。しかし、驚いたことに、その中年男性がそのまま犬を連れ去ってしまったという。
もし仮にこの犬が野良犬だったとして、捕まえた人がそのまま持ち帰ることは許されるのか。渡邉正昭弁護士に聞いた。
「野良犬とは、飼い主がいない犬で、野犬のように野生化していない状態のものをいうと理解され、飼い犬とは区別されています。また、捕獲者の捕獲後の行為については今回のケースでは問題とされていません。以上を前提に考察します」
野良犬を捕まえ、持ち帰ることは許されるのだろうか。
「野良犬の生命を奪ったり、怪我を負わせるような虐待をして持ち帰ると、動物愛護管理法44条1項に該当し、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。
ですが、野良犬には飼育管理する者はいないので、他人の所有権等の権利を侵害することはなく、刑法261条の動物傷害罪には該当しません」
では、野良犬と思って連れ帰ったが実は飼い犬だった場合、連れ帰った人は何かの罪に問われるのか。 「捕獲者が飼い犬と認識して飼育管理者の支配領域内で飼育管理されている犬を持ち帰った場合は、刑法235条の窃盗罪に該当する余地があります。
しかし、今回のケースでは、飼い犬と認識しておらず、捕獲者には通常窃盗の故意(盗もうという意思)は認められないでしょうから、特別な事情がない限り窃盗罪は成立しません」
「ただし、犬が逃げ出して野良犬のように見えても、例えば、所有者である飼育管理者が遺失物法上の遺失物届をしていて、しかも実際に犬を捜索しているような場合には、飼育管理者の支配領域内に留まっていると考えられるので(所有権の放棄もない)、捕獲者がそのことを認識しているような場合には窃盗罪が成立する余地があるので注意すべきでしょう。
なお、不注意で野良犬と勘違いした場合であっても、窃盗罪には過失処罰規定はないので窃盗罪は成立しません」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
渡邉 正昭(わたなべ・まさあき)弁護士
交渉戦略家・税理士・弁理士 元家事調停官
心理学を活用した法的交渉が特徴。ペット問題に30年関わり、相談や事件依頼は全国各地から、近時は世界各国からも。セカンドオピニオンや引き継ぎ依頼も多い。
事務所名:渡邉アーク総合法律事務所
事務所URL:http://www.watanabe-ark.gr.jp