2018年01月18日 10:12 弁護士ドットコム
中小企業の2代目ボンボン社長が高級車を乗り回すーー。このような話を耳にしたことはありませんか。ベンツやBMWなど、車種は様々ですが、中には社用車にしているケースもあります。
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ネットのQ&Aサイトに投稿されている、ある事例を想定してみましょう。
・資本金:5000万円、従業員数:60人
・2代目社長が1500万円くらいの高級外車を社用車として通勤などに利用
1500万円の高級外車を社用車にするとは何ともうらやましい話ですが、オーナー一族の2代目ボンボン社長と、その下で働くサラリーマンの格差は具体的にどれくらいあるのでしょうか。柴田篤税理士に聞きました。
「年収600万円のサラリーマンが、自分の給与で1500万円の高級外車を買うケースを考えてみます。数字を単純化するため、近似値を使用し、社会保険料等は無視します。年収600万円のサラリーマンの所得税は給与所得控除等差し引いて、約50万円、地方税も約50万円です。サラリーマンは税引き後の500万円をためて、あるいは自動車ローンを組んで車を購入します。
一方、2代目ボンボン社長は、1500万円の高級外車を、会社の経費で購入しますので、自分の実手取り報酬は減りません。さらに会社の経費で購入した1500万円の高級外車は、その年の売上に対応する費用として、通常5年で減価償却されていきます。
1年300万円の経費として落とせます。法人税の実効税率を30%としますと、経費300万円の30%分90万円は、税金を払わなくてよくなります。こうしてサラリーマン君と2代目ボンボン社長との間の格差は見た目より拡がります」
なぜそのような格差が広がるのか。
「租税法で、税金を納める力=担税力を有する者が、所得の最終帰属者である自然人だけでなく、実在する法人にもあると考えられているからです。これまでの議論は自然人と法人をごちゃまぜにして、自然人の観点から比較しているんですね。
担税力を有する者は全部自然人だけとすると、この問題は解決します。しかしながら法人制度ができたおかげで、投資家からリスク資本を集め、事業が成功したら配当を得る、失敗しても当初投資額だけの損で済むため、経済は発達してきました。
物事なんでも光と影があります。この自然人制度と法人制度をうまく活用して、自然人・法人融合体で活動すれば、自然人の観点からは、自然人・法人融合体は得しているんじゃないの?ということになります。2代目ボンボン社長は、自然人であるとともに、法人の所有者でもあるので、まさにこの融合体ということになります」
「自然人・法人融合体は利益を法人に溜め込み、必要に応じて、自然人である投資家段階に累進税率の低い税率で所得を還流することもできるんです。
ただ、2代目ボンボン社長が、制度を悪用していた場合は、たとえ税務調査で追及を免れたとしても、従業員や取引先はやる気をなくし、やがてこの会社の業績は間違いなく衰退していくでしょう。
両制度を一元的に解決する方法をたくさんの租税法学者が考えていますが、未だよい答えは見つかっていません」
【取材協力税理士】
柴田 篤 (しばた・あつし)税理士
貿易通商・物流を中心とする国際税務会計事務所。貿易、国際税務会計・国内税務、国際投資国際法務、IT IoTの4部門からなり、システムエンジニアを3名抱える。
事務所名 :TradeTax国際税務会計事務所(東京・大阪・バンコク・欧米提携事務所)
事務所URL:http://www.japan-jil.com/
(弁護士ドットコムニュース)