フェリックス・ローゼンクビスト(マヒンドラ・レーシング)の歓喜の優勝で幕を閉じた第3戦マラケシュePrixの翌日、フォーミュラEルーキーテストが同地で開催された。このテストに“強豪”ルノー・e.ダムスから参加した高星明誠は「シミュレーターの方が難しかった」とフォーミュラE初走行の感想を語った。
今回行われたテストの舞台はムーレイ・エル・ハッサン・サーキット。テスト前日の1月13日(土)にフリープラクティス、公式予選、決勝が行われたマラケシュePrixの舞台その場所だ。
テストに参加したドライバーはF1やスポーツカーレース、ミドルフォーミュラなど、さまざまなカテゴリーで戦ってきた粒ぞろいの強者ドライバー達だが、日本のファンがもっとも注目していたのは、やはりルノー・e.ダムスからテストに参加することになった高星だろう。
2018/19年のシーズン5から、ルノーに変わってニッサンがフォーミュラEにワークス参戦することがほぼ確実となっているなか、そのニッサン/ニスモの契約ドライバーで2017年の全日本F3選手権チャンピオンとなった高星が今回テストに抜擢された。
好天に恵まれた13日とは一転して、どんよりとした厚い雲に覆われやや肌寒いコンディションとなった午前のセッションが14日(日)9時にスタート。
多くのドライバーたちがセッション開始前からピットガレージでエンジニアたちと話をしていたが、高星が姿を見せたのはセッション開始直後だった。
ルノーe.ダムスのレーシングスーツに身を包んだ高星はマシンに乗り込み、エンジニアとマシンの最終チェックを開始。そして9時06分過ぎにピットからコースインすると、まずは1周コースを周ってピットイン。その後は用意された2台のマシンを交互にドライブしフォーミュラEマシンの感触を確かめながら周回を重ねていった。
セッション後半に降り出した小雨の影響で徐々にコースに出るマシンが少なくなっていくなか、12時過ぎに3時間に及ぶ午前のセッションが終了。
高星はこのセッションで33周をラップし、23周目に1分23秒052というパーソナルベストをマーク。午前トップのポール・ディ・レスタ(パナソニック・ジャガー)から0.709秒差の10番手につけた。
「シミュレーターで準備をしてきたので、ファーストインプレッションは良いです」と初めてのマシンの感想を語った高星は「(実車よりも)シミュレータの方が難しかったです」と続けた。
ファーストシーズンから3季続けてチームタイトルを獲得しているトップチームでテストに参加したことに対しては、「(セバスチャン・)ブエミ、(ニコラス・)プロストがいるチームなので、今回のテストで何が良くてどこが悪いのかをすぐにフィードバックできています」とチャンピオンチームの利を活かしている様子だった。
午後のセッションは14時に開始。天候が回復してきたこともあり、各ドライバーとも午前よりもペースを上げ周回を重ねていくが、それに伴い次第に赤旗中断の回数が多くなっていく。
最初にそのきっかけとなったのが高星だった。詳細は不明ながら積載車でマシンがピットに戻ってきたことから、何らかのアクシデントによって走行不能になったものと思われる。
セッション再開後、高星はもう1台のマシンに乗り込み、ふたたびコースへ。午後は周回数を伸ばす走りに集中し47周を走行。ベストタイムは予選で使用できる200KWモードを使用しなかったことから1分24秒179と午前よりも遅いものとなり、20番手に留まった。
それでもルーキーテスト全体では、全20名中2番目に多い計80周を走破。また、午前中にマークした1分23秒052で総合18番手に入っている。
「午後のセッションは、アタックできませんでした」と高星。しかし、テスト全体としては「今日1日、良い経験ができました」と語る顔からは午後のセッションで満足するスピードで走ることができなかった悔しさと、少し疲れたような入り混じった表情に見てとれた。
今回、セッションの合間に設定された取材時間でニッサンの関係者に話を聞くことができたが、シーズン5からのワークス参戦については「準備することが本当に多いが、とても楽しみにしている」という。
そして、気になる日本人ドライバーの起用については「シーズン5に向けてのドライバーに関しては、いろいろなことが起こりえる」とし、今回テストに参加した高星に限らず「ベストなドライバーを選択します」との回答を得た。
今季から本格的にワークス体制を敷いたアウディ陣営に続いてBMW、メルセデス、ポルシェといったドイツ勢が相次いでシリーズへの参入を表明しているフォーミュラE。1年後にワークス体制で挑むニッサンの動きは日本のファンだけでなく、電気自動車開発に舵を切りはじめているモビリティ社会全体から注目を集めることになるはずだ。