北ヨーロッパの共和制国家で、人口134万人のエストニア。スカイプ発祥の地であり、国を挙げてIT化を進め、世界最先端の電子国家として知られている。
1月15日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)がエストニアの電子化ぶりを紹介すると、その技術力の高さに、日本は「既に技術後進国になってる」とネット上で話題になった。(文:okei)
国際結婚の手続きも「インターネットで空いた時間に簡単にできる」
エストニアでは、住所変更や納税など様々な手続きが、政府のサイト「エスティー」からいつでもどこでもネット上で行える。このサイトには、政府発行の個人IDカードを端末に挿入し、4桁の暗証番号を入力することでログインできる。
IDカードは免許証や保険証としても使えて、15歳以上のエストニア人はほぼ全員が所持している。このシステムになってから、「生活は快適でスピーディーになった」と一般市民にも好評だ。
エストニアの男性と国際結婚した日本人の女性は、夫婦で首都タリンに暮らしている。国際結婚の手続きは、日本では市役所で待たされ何時間もかかったが、エストニアでは5分から10分で終了し、あとは自宅からインターネットで済ませられて楽だったと言う。
「日本では有給休暇を使って市役所で手続きをしなければならなかった。エストニアでは自宅のインターネットで空いた時間に簡単にできる。すごい良い国だなって思いました」
しかし、政府のサイトと1枚のIDカードですべての個人情報を管理されることに、不安はないのか。女性の夫であるエストニア人男性に訊くと、
「日本に短い間住みましたが、ハンコよりエストニアの2つの暗証番号システムの方が安全と思います」
と言い切っていた。確かにその通りだ。
現在、役所の手続きの99%が電子化され、区役所を利用する人はほとんどいない。紙を使う手続きは、パソコンを持たない低所得者への対応や、結婚・離婚・不動産取引の3つのみ。30人以上いた職員は3人になり、コストの4分の3を削減できたという。
「日本は未だに印鑑という非合理なシステムにこだわっている」
日本企業もエストニアの技術に関心を寄せている。保険大手・東京海上日動は、エストニアのIT企業と連携して、保険金支払いの手続きを電子化し、支払いまでの期間を短縮することを目指している。これまで、各病院と情報を安全にデータ交換する仕組みづくりが技術的に難しかったが、「エストニアの技術で実現する」と同社の担当者は期待している。
一方で、エストニアの女性技術者からは、「日本にこの技術がないことが驚いた。日本は発展しているイメージだったから」との声も聞かれた。日本人には耳の痛い言葉である。
番組は大きな反響を呼び、ある視聴者がつぶやいた、
「既に技術後進国になってる自覚が無い日本と、先進国エストニアの差がコレである」
というツイートは2万件以上リツイートされている。
また、前述の「IDカードはハンコより安全」発言に対しても、
「その通りだと思うね。印章は簡単にコピーできるから、偽印鑑が簡単に作れるし。それなのに日本は未だに印鑑という非合理的でセキュアじゃないシステムにこだわるんだから呆れる」
とツイートされている。印鑑や紙にこだわるのは日本人だけと指摘する多くの声には、どこか怒りがこもっているようだ。
日本は世界的に見て技術立国というイメージが残ってはいるが、IT分野で先を行く国を見ると、実に大きな差を感じてしまう。技術力だけでは立ち行かないものを、感じる人も多かっただろう。