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なぜ若手俳優は“クズ”を演じるのか? 『トドメの接吻』山崎賢人のホスト役がハマるワケ

2018年01月17日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 山崎賢人がホストを演じる『トドメの接吻』(日本テレビ)。第2回までの放送を観ていると、こうして文章を書くときのポイントがかなりある作品だと感じた。


参考:“可愛い弟分”志尊淳が山崎賢人に迫る! 『トドメの接吻』第2話で迎えた衝撃の展開


 まず、山崎のほかに、門脇麦、新田真剣佑、志尊淳、佐野勇斗など、若手俳優の注目株がたくさん出ている。そのうえ、主題歌を菅田将暉が歌い、友情出演もしているとなれば、それだけでも注目するというもの。


 ストーリーとしても、さまざまな要素が盛り込まれている。山崎演じる主人公の堂島旺太郎(源氏名:エイト)は、幼いころに父が船長を務める船で事故に遭い、弟を喪い、父が事故の責任を負わされたことで愛を信じていない。しかもその事故の真相には、エイトが100億の女と言ってその財産を狙う並樹美尊(新木優子)の父親の会社、並樹グループが関わっていることが2話で明らかになってきたために、復讐ものへと変化する可能性もある。


 これだけでも、ドラマとして十分成立するというのに、このドラマでは、そこにもう2個も3個ものっかってくる。なぜかエイトはサンタやメイドのコスプレをした佐藤宰子(通称:サイコ/門脇麦)からキスをされると一時は死においやられるが、そのたびに時間をさかのぼるというタイムリープものでもあるのだ。


 その上、ホストの後輩としてエイトが信頼している小山内和馬(通称:カズマ/志尊淳)もまた不可解な行動をとる。一時は単にエイトに嫉妬して襲撃しているのかと思いきや、2話の最後では、エイトに包丁を突きつけた後に「ずっと好きでした。一緒に死んであげます」とつぶやくのだから、謎が深まる。そしてそこに路上で生活していると思われる菅田将暉演じる謎の男がきて、「だから言ったろ、サイコはエイトを助けてるって」と言いながら高笑いをするという結末を迎えた。


 こう観ていくと、このドラマはホストものであり、復讐ものであり、タイムリープものでもあり、そして謎解きミステリーでもあると言えるだろう。


 このドラマでもう一つ注目すべき点といえば、山崎賢人が毎回、さまざまな女性ゲストたちと絡み、そして女性たちから「クズ」と言われるところではないだろうか。


 1話では釈由美子演じる元キャバ嬢のエステティシャンの常連客から、2話では並樹美尊が所属する並樹乗馬倶楽部のメンバーで、内緒でホステスのアルバイトをしている青田真凛(唐田えりか)からエイトは「クズ」呼ばわりされる。だいたいは、エイトに弱みを握られた女性たちなのだが、今後も1話に1回は女性から「クズ」と言われる展開になっていくのかもしれない。


 しかし、「クズ」を演じる山崎賢人はどこか生き生きしているようにも見える。しかも、このところ若手俳優は「クズ」を演じる人が多い。現在公開中の映画『伊藤くん A to E』では岡田将生が「クズ」の伊藤くんを演じているが、そのドラマ版では、田中圭、中村倫也、山田裕貴が代わる代わるで伊藤くんというクズを演じた。


 本作に出演の菅田将暉は、数々の映画、特に『ディストラクション・ベイビーズ』などで「クズ」と言っていい役を演じてきたし、新田真剣佑も『刑事ゆがみ』(フジテレビ)でクズなIT起業家を演じて話題となった。また、志尊淳はクズとはいいがたいが、『探偵はBARにいる3』でも謎の多い最強の男、しかも探偵たちの敵役を演じていて、その延長線上にあるような役を本作で演じている。


 なぜ、若手俳優はクズを嬉々として演じてしまうのだろか。俳優にとって、クズを演じるほうが、良い意味でも悪い意味でも人間の泥臭い感情を演技で表現できるということもあるのだろう。実際、そういう意見をインタビューで聞くことは多い。


 また彼らは数年前には数々のラブストーリーでクズとは正反対の役を演じてきた。しかし、イケメンと過剰にもてはやされる状態に面映ゆい思いを持つこともあったのだろう。ラブストーリーの人気に変化が見えてきたと言われる今、クズを演じる若手俳優はこの先も増えていくのかもしれない。(西森路代)


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記