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スペイン人ライターのF1便り:デイトナ24時間でル・マンに向けた実践式のリハーサルに臨むアロンソ

2018年01月16日 13:02  AUTOSPORT web

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デイトナ24時間のテストを行うフェルナンド・アロンソ
スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。1月にデイトナ24時間に参戦するフェルナンド・アロンソ。ル・マン24時間に向けたリハーサルという面もあるが、もちろん優勝を諦めることはない。

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 今年のデイトナ24時間における最大の話題は、IMSA全般や、DPiとLMP2マシンの違いなどはほとんど関係がない。むしろ話題の中心は2005年と2006年の2度にわたってF1タイトルを勝ち取り、昨年のインディ500では優勝に近づいた、フェルナンド・アロンソの存在にあるだろう。

 だが、アロンソ自身も認識しているように、耐久レースはF1とまったく異なるもので、そこには彼がコントロールする余地がないチャンスの妨げになるような多くの要素がある。両レースとも伝説的な存在であるとはいえ、デイトナ24時間はインディ500ではないのだ。

 今回のアロンソはトップ層のチームにいるわけではない。アロンソはインディ500に2016年と2017年に優勝を飾ったチームから参戦したものの、この1月に彼がレースに出るのは、デイトナ24時間に復帰しようしているチームから参戦する。

 さらに、彼がランド・ノリスとフィル・ハンソンとともにドライブするリジェJS P217は、2017年シーズンに優位にあったキャデラックのようなDPiマシンほどの競争力がない。


 実際、キャデラック勢は先週末の『ロア・ビフォア・ロレックス24』(デイトナ24時間に先駆けて行われる公式テスト)でトップ4を占めている。驚いたことに最速ドライバーは、F1でシートを失い現在はウェーレン・エンジニアリング・レーシングから参加しているフェリペ・ナッセその人だった。

 もしIMSAがBoPでの新たな調整を通じて、LMP2マシンをDPiマシンに近づけるようにすることが必要不可欠だと見なした場合、状況はまだ変わる可能性がある。そうなれば、ピットエリアおよびガレージを決定するための最終セッションで総合12番手につけたアロンソだけでなく、他の活気あふれるLMP2チームの助けになるだろう。

 そうしたチームのひとつに37号車ジャッキー・チェン・DCレーシング・JOTAがある。現F1ドライバーであるランス・ストロールが参戦し、F3マカオグランプリで優勝経験がありスペイン人ドライバーのダニエル・ジュンカデラを擁しているため、母国スペインのファンとメディアの注目を集めるだろう。彼らはアロンソのすぐ後ろの13番手でフィニッシュしている。

 BoPによる変更の可能性と、一部のチームが本来出せるスピードを隠すために、実力を出していないことを考慮すれば、『ロア』の直後に評価を下すのは、当然のことながらあまりにも早計だ。どのマシンが勝利のチャンスを掴むか推測できるのは、最後の予選が行われる1月最後の週になってからだ。しかし目下の状況では、キャデラックのDPiマシンが間違いなく優勝候補だろう。

 プロトタイプクラスでは、最速のLMP2マシンでもナッセのタイムからほぼ1秒半遅れだった。GTLMクラスではより熾烈な接戦となり、フォード、ポルシェ、コルベット、フェラーリの差は0.5秒未満だった。

 その一方でBMWはより苦戦している。最終的にGTDクラスは18台のマシンが1秒以内の差に収まっており、あまり分析することはできない。今もなお、ランボルギーニとアキュラは強力に見える。


 アロンソは野心的なレースドライバーで、優勝を狙うという明確な目標はあるものの、彼にとってのデイトナ24時間は、ル・マン24時間に向けた本番さながらのリハーサルである可能性が最も高いということは指摘しておきたい。

 アロンソは三冠(モナコGP、インディ500、ル・マン24時間での優勝)達成の目標を隠していないし、今年はトヨタでのル・マン出場が現実味を帯びている。だから苦戦すると思われるLMP2マシンに乗ることはあり得ることだし、実は彼にとっては良いことなのかもしれない。

 もし彼が優勝したら、その英雄譚はこの先数十年語り継がれることになる。だが、たとえ優勝を果たせなくても彼はル・マンのために耐久レースの力学を実践練習するのだろう……。