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芳根京子の可能性が最大限に発揮される!? 月9『海月姫』で見せつけた高いポテンシャル

2018年01月16日 11:42  リアルサウンド

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 アニメ化と映画化もされ、昨年完結を迎えた東村アキコの代表的コミック『海月姫』が、連続ドラマとなって15日に放送スタート。男子禁制のレトロなアパート「天水館」に、オタク女子たちだけで半ば引きこもり気味の同居生活を送る主人公・倉下月海(芳根京子)が、ひょんなことから出会った女装男子の鯉淵蔵之介(瀬戸康史)と出会い、彼の弟(原作では兄だったが)の修(工藤阿須加)に恋心を抱き始めるラブコメディーである。


参考:瀬戸康史が語る、『海月姫』女装男子役への不安と自信 「自分がキレイに見える角度は狙っている」


 前クールの『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』が最終回で史上最低の視聴率を叩き出し、すっかり低迷の続く月9ドラマに、スピーディーな展開とフレッシュなキャスティングが見どころのシュールなラブコメディーという異例の作品選び。果たして『海月姫』はフジテレビドラマを代表する看板枠を立て直すことができるのか注目は尽きない。


 その糸口は、NHK朝の連続テレビ小説『べっぴんさん』でヒロインの坂東すみれを演じ、同作の終了後初の主演ドラマとなる芳根が初めて挑むコメディー演技を開花させるかどうかにかかっている。まず第1話の劇中、すき焼きを食べる場面で早くも彼女の経歴を活かした笑いが生み出されたことは見逃せない。「私もNHKさんにはお世話になりました」。


 映画版では同じく朝ドラヒロインを経験し、現在はのんの名前で活躍する能年玲奈が演じていた月海というキャラクター。鹿児島弁を話し、極度の近視で眼鏡を外すと何も見えず、洒落っ気のないスウェット姿で猫背&ガニ股で歩き、人と目を合わすことができない。その一方で、自分の好きなクラゲのことになると突然饒舌になるという、典型的なオタク像だ。


 芳根の過去の作品を思い返してみれば『向日葵の丘 1983年・夏』でも映画に熱中する少女を演じ、『表参道高校合唱部!』(TBS系)では歌を歌うことに熱中し、『べっぴんさん』のすみれも周りを気にせず手芸に没頭していた。好きなものにだけまっすぐに向かうというキャラクターを演じるという点に関しては、まったくもって心配する必要はなさそうだ。


 そこに一昨年の月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)や『べっぴんさん』でも挑んだ方言での芝居(この2作では奈良弁と神戸弁だっただけに、イントネーションががらりと異なる)と、映画『心が叫びたがってるんだ。』とは異なるベクトルの社交不安障害の演じ方。それらすべてをコメディーの方向性に持っていけるか、ということだ。


 それを可能にするのは、芳根京子という女優の最大の魅力である表情の豊かさと動作だ。前述した歩き方に然り、人と会話するときの挙動不審な動きであったり、渋谷のシーンで縮こまり、逃げ帰ってきたときの放心の表情。充分すぎるほど、彼女のポテンシャルがコメディー要素に作用しているではないか。


 中でも寝たふりをしようとベッドに飛び込むアクションと、メイクをしてもらった直後の、画面の隅に頭部しか映っていないカットでの些細な動き。個性の強すぎるキャラクターたちの中に放り込まれても、一切彼女の演技が負けておらず、主演としてしっかりとリードしている。このドラマは、芳根京子の可能性が最大限に発揮される作品になるのではないだろうか。(久保田和馬)