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キャラが抱える悩みに共感 『映画 中二病でも恋がしたい!』が女性にこそ観てほしいワケ

2018年01月15日 17:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』が、現在公開中だ。『涼宮ハルヒの憂鬱』『けいおん!』などを手掛けてきた京都アニメーションの作品は男女問わず人気があると思っていたのだが、筆者が本作を劇場で鑑賞した際、レディースデーだというのに女性客は自分ひとりだけで、周囲は全員男性だった。だが、声を大にして言いたい。本作は、女性にこそ観てほしい。


参考:『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』場面写真


 作家・虎虎によるライトノベル『中二病でも恋がしたい!』は、これまでにテレビアニメ2シーズン、そして劇場版アニメも制作された人気シリーズ。元中二病の主人公・富樫勇太と、現役中二病のヒロイン・小鳥遊六花の恋愛を中心に、個性的なキャラクターたちが笑いあり涙ありの青春学園生活を繰り広げる。


 劇場版アニメは総集編が多いなか、本作は完全新作。テレビシリーズ2期『中二病でも恋がしたい!戀』以降のストーリーが描かれている。


 劇中の舞台は、2期のラストからおよそ半年後。勇太と六花は高校3年生目前の春休みを迎えていた。2人は恋人ながら、未だに上位契約(キス)すら結べておらず、関係性に大きな進展もない。さらに、18歳を目前にして、六花はまだ中二病を患っていた。


 そんなわけで、このままテレビ版のテンションで物語が展開されていくかと思いきや、序盤から、「おや?」と違和感を覚える描写がしばしば登場する。勇太たちの一つ上で、高校3年生だった五月七日くみん先輩の卒業。六花を慕っていた後輩・凸守早苗が、突如「自己保身のため」と六花に刃向かう。


 そして、これまで物語の舞台となっていた高校ではなく、“大学”の話がしばしば出てくる点などに、時間の流れのみならず、それぞれの“変化”も感じられたのだ。まさに、高校生の彼らは大人への階段を着実にのぼって、サナギから羽化しようとしている。


 その後、「六花をイタリアへ連れていく」という姉・十花から逃げるため、勇太と六花は“駆け落ち”を決意する。これまでのシリーズでは高校や地元の風景が中心に描かれていたが、本作では、京都、神戸、東京を経由して北は北海道まで、様々な土地の景色が次々登場する。この全国を巡る逃走劇においても、“目まぐるしいまでの変化”を、否が応でも感じさせられた。


 そして、六花は「恋によって力(中二病であるための原動力)が失われていく」、つまりは自身のアイデンティティーが揺らいでいることで悩みはじめる。前半で感じた違和感は、六花のこうした心の変化を描くにあたっての予兆だったのだろう。


 この六花の悩みは、2期で七宮智音が「恋を取るか中二病を取るか」で迷い、最終的には恋を諦めて中二病を貫き通すことを選んだ時と同じ性質のものだ。中二病に限らずとも、「恋愛を取るか◯◯を取るか」という二択で悩んだ経験は、多くの人にもあるだろう。実際、筆者も本作を観ていて、「恋か自分のやりたいことか」という選択を迫られた過去のしょっぱい経験を思い出した。だからこそ、年齢は違えど、六花や七宮の心の揺らぎには大いに共感できるのだ。


 さらに、たとえば「恋か仕事か」という二択を迫られるのも、女性の方が圧倒的に多いだろう。実際に「恋か仕事か」というキーワードでネット検索をかけてみても、上位を占めるのはほぼすべて女性向けの記事だ。


 『中二病でも恋がしたい!』の登場人物には女性キャラが多いため、男性向けアニメだと敬遠している女性も多いのかもしれない。だが、女性キャラたちが抱える悩みは、同性から見てもとてもリアルだ。六花が最終的に恋と中二病、どちらを選んだかはここではあえて言及しないでおくが、「恋か◯◯か」という二択に悩む女性には、ぜひ本作を観てほしい。(まにょ)