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世界で広がる同性婚、G7で不許可は2か国だけ…年配が反対する日本が変わるか

2018年01月14日 10:23  弁護士ドットコム

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同性間での結婚を認める法改正が、世界各国に広がっている。2017年には新たにドイツ、マルタ、フィンランドが同性婚を認める法改正を行い、オーストラリアや台湾でも同性婚が認められることが決まった。G7の中で同性婚を制度として認めていないのはイタリアと日本だけだ。


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イタリアにしても、国レベルでの同性間の登録パートナーシップ制度がある。一方、日本では、地方自治体によっては、パートナーシップ制度があるものの、条例があるのは、6自治体だけ。国政レベルでも議論はまだまだ進んでいない。


世界における同性婚の実現状況と日本での可能性について、同性婚の実現を目指すNPO法人EMA日本理事の原島有史弁護士に聞いた。


●まだ15年ほどの歴史しかない「同性婚」、GDPレベルでは世界の半数が容認

ーー現在、同性婚を認めている国はどのくらいある?


同性間での結婚が世界で初めて認められたのは、2001年4月のオランダです。その後、2003年にベルギー、2005年にスペインとカナダが続き、2010年代に入るとその流れが加速します。2018年1月1日現在、同性婚が認められている国と地域はあわせて24か国、これに登録パートナーシップ制度を持つ国を加えると、40か国以上の国で同性カップルが法的な保障を享受しています。


さらに、オーストリアは2019年1月までに、台湾は2019年5月までに同性婚を導入する予定となっており、タイやベトナムでも同性婚法案が現在国会で審議されています。


同性婚が認められている国・地域の人口は世界の人口の17%弱に過ぎませんが、GDPで見ると、世界の50%強を占めている計算になります。つまり、経済的に裕福な先進国ほど、同性婚を認める方向に進んでいることがわかります。



ーー日本でも同性婚を求める声は多い。同性婚が認められないことで、どのような不利益があるのか?


現在、日本では同性婚は認められていません。こうした中、(戸籍上)同性同士のカップルは、パートナーの危急時の病院面会、死別時の相続人との関係、離別時の財産の帰属など、様々な場面で困難を抱えています。


ただし、結婚が認められないことによる当事者の不利益の一部は、(1)当事者双方が遺言書を作成する、(2)婚姻契約書を結ぶ、という手段により、回避または緩和することができると考えています。


私が所属するNPO法人EMA日本では、遺言書と婚姻契約書のひな型を解説文とともにホームページで無料公開していますので、ご関心のある方はぜひ一度ウェブサイトをご覧ください。


http://emajapan.org/aboutemajapan/%E5%A9%9A%E5%A7%BB%E5%A5%91%E7%B4%84%E6%9B%B8


とはいえ、回避できる不利益はあくまで一部です。多様な生き方を認める上でも、同性婚などで異性カップルと同等の権利を与えることが望まれます。


●高齢世代の説得と、若者世代の投票率引き上げがポイントに

ーー今後、日本が同性婚の議論を進める上で、何が課題になり、どうやって解決していく必要があるのか?


国立社会保障・人口問題研究所の釜野さおり教授らの研究グループが2015年に行った調査結果によると、日本における同性同士の結婚の法制化について「賛成」「やや賛成」の人の割合が、51.2%に上ったとのことです。この中では、年配の方ほど反対の割合が高いという結果が出ています。


「自国の伝統や文化に反する」「伝統的な家族の在り方が失われる」として同性婚に反対する主張は、日本に限らず、世界各国に共通して見られるものです。婚姻の平等(同性婚)を実現したアメリカやヨーロッパ各国においてもそうでしたし、現時点で同性婚が認められていない韓国やその他の国でも同様です。しかし、家族制度は時代とともに変化していくものです。


戦前の日本では、結婚は個人同士の結びつきではなく、家同士の結合だと考えられていました。敗戦直後の1946年9月、憲法改正を議論していた貴族院の特別委員会では、婚姻に関する個人の尊厳と男女の本質的平等を定めた憲法24条の規定に対して、次のような意見が出されました。


「この24条においては、どうも今までの日本の社会状態をこれからこれがひっくり返す非常な力のある規定のように思われるので、それが心配でならないのであります」


「日本は長い間、家ということを細胞として、家が一つの細胞である、これが集って一つの体をなしているものと私は思う」


「夫婦関係だけを中心とする、団結の一つの中心として、何千年の歴史に反する制度を設けるというようなことがもしありましては、私はこれは非常に心配すべきことだと思うのであります」


それから約70年経った現在、結婚には戸主の同意が不可欠だとか、夫婦関係を中心とする家族構成が日本の伝統に反するなどと考えている人はほとんどいません。つまり、結婚の意味や伝統は時代に応じて変化するものだということを、我々日本人は既に経験しているのです。


先の同性婚に関する意識調査によると、20~30代では72.3%の人たちが同性婚に賛成しています。若い世代の投票率が現在よりも高まっていけば、同性婚は日本でも今すぐに実現可能ということになるでしょう。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
原島 有史(はらしま・ゆうじ)弁護士
青山学院大学大学院法務研究科助教。LGBT支援法律家ネットワークメンバー。特定非営利活動法人EMA日本理事。過労死問題や解雇などの労働事件、離婚・相続などの家事事件などに関わる傍ら、LGBT支援の分野でも積極的に活動している。

事務所名:早稲田リーガルコモンズ法律事務所
事務所URL:http://www.legalcommons.jp/