2018年01月13日 10:52 弁護士ドットコム
サラリーマンや主婦の小遣い稼ぎとしても人気がある「FX(外国為替証拠金取引)」。業者を通じて、拠出金の数倍のお金を動かす「レバレッジ」によって、うまく行けば少額のスタートでもそれなりの儲けを出すことができるという。
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しかし、裏を返せば、それだけ損したときのリスクも大きいということ。通常なら出せないお金を動かす分、自分では手に負えない負債を抱えることもある。そこで現在、金融庁はレバレッジの規制を検討しているという。
もし、FXでレバレッジを高く設定しすぎて、大損した場合、自己破産することはできるのだろうか。西岳郎弁護士に聞いた。
ーーFXで多額の負債をつくった場合、自己破産はできる?
「はい。結論から言うと、FXによる借金であっても、自己破産によって、借金の支払いを法的に免れることができるケースが多いといえます。
たしかに、FXは、少ない予算から始められるなどの利点がある反面、ハイリスク・ハイリターンの投機的な取り引きであり、いわばギャンブルのような側面もあります。破産法上、浪費やギャンブルによって多額の借金をすることは、免責が許可されない事由の一つとされています(破産法252条1項4号)」
ーーでは、どうして自己破産できるという結論になるの?
「浪費やギャンブルによる借金がある場合でも、裁判所が裁量によって免責を許可することは可能であり(破産法252条2項)、実際の運用上、裁量によって免責が受けられるケースは非常に多いのです。
ギャンブルによる借金の場合であれば、(1)過去を十分に反省している、(2)現在は、ギャンブルを断って堅実な生活を送っている、(3)破産管財人の業務に十分に協力している、というような誠実な債務者に対しては、免責が許可される可能性が高く、FXの場合も同様であると考えられます」
ーー破産管財人はどんなことをする人なの?
「裁判所から選任されて、破産者の財産などを調査したり、債権者に配当すべき財産を管理したりします。FXによる借金の場合は、免責を許可すべきかどうかについて、管財人による調査が必要であるとして、管財事件になるのが一般です。
管財事件になると、手続きのための予納金(東京地方裁判所を始め、多くの裁判所では、20万円とされています)の納付が必要です。逆に破産管財人が付くことなく手続きが終了するケースを「同時廃止事件」と呼びます。
ーーどんな場合、免責が受けられないのか?
「破産をすれば免責を受けられるのが原則ですが、破産法に定められている免責不許可事由に該当する事情があると、理論上は、免責を受けられないことがあります。
具体的には、今回取り上げた浪費・ギャンブルのほかに、(a)財産を隠して破産を申し立てた場合、(b)カードで回数券等を購入してチケットショップで安く換金していた場合、(c)ローンやクレジット利用の際に経済的信用に関わる情報に関して嘘をついていた場合、(d)過去7年以内に免責を受けたことがある場合、(e)裁判所の調査や破産管財人の業務に協力しなかった場合、などが挙げられます。
もっとも、このような事情があっても、裁量によって免責を受けられる可能性があることは、前述のとおりです。
なお、免責を受けられた場合であっても、非免責債権に当たる債務については、免責の対象にはならず、支払義務が残ります。代表的なものとしては、税金、社会保険料や養育費などがあります」
「このように、FX等のハイリスク・ハイリターンの取引が原因で借金を負ってしまった場合であっても、破産することによって借金を免れることができる可能性は高いと考えられます。
しかし、他方で、免責は、債権者の犠牲を伴うものであることも事実であり、これからFXを始めようというような方は、大きな損失を出すことのないよう、是非とも、十分な準備と慎重な判断を心掛けていただきたいと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西 岳郎(にし・たかお)弁護士
平成15年弁護士登録。東京弁護士会所属。弁護士登録以降、個人・中小企業を中心に、債務整理案件を多数取り扱っている。「親しみやすく、誠実な弁護士」がモットー。
事務所名:あおぞら法律事務所
事務所URL:http://www.aozora-lawoffice.com/lawyer.html