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GLIM SPANKY、ロックファンの期待を背負う頼もしい姿 『BIZARRE CARNIVAL』最終公演

2018年01月12日 19:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 4月にミニアルバム『I STAND ALONE』、9月にフルアルバム『BIZARRE CARNIVAL』と、自らの日本語ロックのスタイルを貫く作品を立て続けにリリースしたGLIM SPANKYは、2017年、音楽シーンで強烈な存在感を放っていた。ライブでも、6月の東京・大阪野音初ワンマンがソールドアウト。次なるステージへと歩みを進める中で迎えた全国ツアー『GLIM SPANKY「BIZARRE CARNIVAL Tour 2017-2018」』は、2018年1月5日・6日新木場スタジオコーストにてファイナルを迎えた。


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 昨年10月、彼らの地元・長野からスタートした同ツアーは、全20公演を開催。1年前と比べると動員数はおよそ倍に増えている。スタジオコーストの満員の客席の一部エリアには、子供連れのファミリーの姿も。今回のツアーでは座席のある会場に限り、親子エリアが設けられていた。ライブハウスツアーということもあり、おそらく昨年出演した各地音楽フェスや野音ライブで家族連れが目立ったことを踏まえての配慮だろう。この日も亀本寛貴(Gt)がアンコールのMCで「いろんな人が楽しめるライブにしたいと常日頃思っています。これからも、いろんな楽しみ方ができるロックを提供していきたい」と語っていたように、彼らの視点の先には常に多くのリスナーの姿がある。


 GLIM SPANKYが表現しようとしていることは実にシンプル。ロックやブルースを基調とした王道のサウンドをベースに、自分たちのテイストを加えながら、オリジナルな音楽・メッセージをいかに多くの人たちに届けることができるか。その上で、日本語ロックの可能性を追求し続けている。また、今回のライブを見て、その“自分たちのテイスト”の部分にあたる松尾レミ(Vo/Gt)の表現豊かなボーカルと亀本のギターの音色が一層個性を強めていることには驚いた。ライブ中も亀本のギターソロに起こる歓声や曲間の声援が以前よりも際立っており、今の彼らのライブには、“GLIM SPANKYの時代がいよいよやってきた”と思わせる圧倒的なホーム感が漂っていた。


 本公演では『BIZARRE CARNIVAL』の収録曲が前半・中盤・後半にバランスよく配置され、全体を通してアルバムの世界観が表現されていた。特に今回は、かど しゅんたろう(Dr)、栗原大(Ba)、中込陽大(Key)というバンドメンバーに朝倉真司(Per)が参加し、打楽器の音色が追加されたことが大きい。「白昼夢」ではいろいろな道具を楽器に見立てたり、メンバー全員がステージを自由に動き回ってアドリブ演奏をするなどの新たな試みを取り入れ、楽曲の世界を表現していたのは印象深かった。また、「吹き抜く風のように」「Freeder」「アイスタンドアローン」といった昨年発表された楽曲たちが、新たなアンセムとしてライブを盛り上げる役割を果たしていたこともまた、グループの勢いを示していた。ロックを愛する多くのリスナーの期待を背負う二人の姿は、1年前にコーストに立っていた姿よりもはるかに頼もしく映った。


 アンコールでは、1月31日リリースのシングル表題曲「愚か者たち」を披露。ダークなサウンドにのせて<お前なら さあどうする>と問いかける、迫力あるロックナンバーだ。様々な作品、ステージを経て表現力にも磨きがかかった今のタイミングだからこそ歌える曲なのかもしれない。そして、そんな今だからこそ「理解してくれない人の心にも突き刺さる歌」として生まれた「大人になったら」が、当時とは違った輝きを放ち、多くの人の心に響いていた。


 GLIM SPANKYは5月12日、日本武道館にてワンマンライブ『GLIM SPANKY LIVE AT 日本武道館』を開催する。松尾の「『ロックは生きてるんだぞ!』ということを世間に見せつけてやりたい」という宣言どおり、生き生きとしたロックが鳴り響くであろうその瞬間にも立ち会いたいと思う。(久蔵千恵)