2018年01月11日 19:53 弁護士ドットコム
東京地裁・高裁が入る裁判所合同庁舎(地上19階・地下3階)で1月10日、19基ある来庁者用エレベーターのうち18基が停止。利用者が階段での昇降を余儀なくされるなど、不便が生じた。1日の利用者は多い時で1万人を超えるというだけに、大きな問題になっている。
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停止の理由は、基準値を超えるアスベスト飛散の疑いがあること。裁判のスケジュールにも影響が出ている。高裁によると、高裁の刑事7件、民事2件、地裁の刑事1件が10日から別日に期日変更になったという。
一夜明けた11日は、稼働が5機(3機は9階まで、2機は10階以上)に増え、混雑はある程度緩和された。ただし、昼休み明けなどには依然として長蛇の列ができている。
記者は1月11日に裁判所を訪れた。まず目に入ったのは、黄色い拡声器を持った職員の姿。「エレベーターをご利用の方は南エレベーターをご使用ください」。北側・南側のエレベーターホールにも、多くの職員が張り付き、「ご不便をおかけします」と来庁者に頭を下げていた。
10日、11日と裁判所を訪れた前田泰志弁護士によると、「10日はエレベーター待ちがひどかった。20分待ちという立て札があって、そんなに待つならと、6階まで階段を使いました。今日(11日)はいくらかマシですね」。
一体、階段を使うと、どのくらいの時間がかかるのか、実際に1階からゆっくりペースで上ってみた。記者は30歳男性。PCとカメラなど、3kgほどするカバンを肩にかけている。高校まで野球をしていたが、つい数日前、人間ドックの結果報告で医者から「痩せましょう」と言われたばかりだ。
4階をすぎた辺りから息が切れ始め、汗がにじんできた。階段で行ける最上階の18階までにかかった時間は、5分20秒だった。
階段を使うようお達しがあったのか、途中、多くの職員とすれ違った。こちらが息を切らしているからか、会釈すると「お疲れ様です」や「ご不便をおかけして、申し訳ありません」とのあいさつ。山ではすれ違いざまにあいさつをするのがマナーというが、裁判所の階段が、まるで登山道のようだ。
つらい気持ちほど共有しやすいのだろう。下りでは、ある女性に会釈したところ、「地下1階から地上18階まで階段で上っているんですよ」と息も絶え絶えといった感じの返事があった。
裁判所の地下には売店や食堂が併設されている。普段、昼休みになれば、職員らが大勢訪れるが、人もまばら。
いつもなら、店からはみ出そうなくらいの行列ができるファミリーマートも静かなものだ。すき家や食堂も明らかに利用者が少ない。どうやら、多くの職員たちは出勤途中で食料を調達しているようだ。
全エレベーター復旧の予定は未定。来場者の不便はもちろん、職員にとってもしばらくは厳しい時期が続きそうだ。
【追記】
1月30日、東京高裁はすべてのエレベーターの運転を再開したとHP上で発表した。
(弁護士ドットコムニュース)