F1チームで重要な役割を果たしている関係者たちがそれぞれの視点から現役の世界チャンピオン4人について語るF1i.comの連載企画。第2弾はメルセデスのテクニカルディレクターを務めるジェームズ・アリソンが現F1王者であるルイス・ハミルトンについて語った。
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かつてミハエル・シューマッハー、フェルナンド・アロンソ、キミ・ライコネン、そしてセバスチャン・ベッテルといったそうそうたる世界チャンピオンたちといっしょに仕事をしてきたメルセデスのテクニカル・ディレクター、ジェームズ・アリソンは「彼らとルイスに共通点は多い」と語る。
「たとえば勝利への渇望。あれだけ勝ち続け、タイトルを獲り続けているにもかかわらず、その欲求はいささかも衰えていない」
「一方でルイスだけの、他の誰よりも優れた特質もある。マシン限界を見極め、どんな状況でもコントロールしてのける能力だ。それなしに、あれだけ多くのポールポジションは獲得できないよ」
さらにドライバーとしての自然体も際立っていると、アリソンは言う。
「ミスを犯した時、ルイスはそれを正直に認める。それができないドライバーが数多くいる中で、驚くべきことだよ。そしてわれわれスタッフ側がミスを犯した際には、残念ながら去年はバクーでヘッドプロテクターが外れかけたことを始め、何度もあったんだが、そんな時もルイスは冷静さを失わなかった。われわれのミスで失ったポイントを合計すれば、かなりのものだったにもかかわらずね」
「ギヤボックス交換で、グリッド降格ペナルティを受けたオーストリアも同様だった。決して集中力を失わず、最後まで戦っていた」
「世界チャンピオンともなれば、自分がすべての中心で、すべてが自分の思い通りになると思い込みがちだ。私がいっしょにやってきたチャンピオンたちは、少なからずそんな傾向があった。ところがルイスだけは、そんなことがなかったんだ」
そう語るアリソンが例に出したのが、バルテリ・ボッタスに表彰台を譲った2017年のハンガリーGPだ。
「いつでも全力を出し切り、ベストの結果にこだわるルイスだが、チームにとって必要なことだと判断すれば、躊躇なく指示に従う。自分自身のタイトル争いに、最終的に不利になる恐れがあるとわかっていた。それでもルイスは、指示に従ったんだ」