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広瀬すず、10代最後の奮闘 『anone』で見せる“少女”からの脱却に注目

2018年01月09日 19:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 坂元裕二が脚本を手がけた社会派ドラマ『Mother』、『Woman』に続き、両作品のスタッフが再結集して放たれる『anone』(全て日本テレビ系)。連続テレビドラマの初主演を務めた『学校のカイダン』(日本テレビ系)以来、じつに3年ぶりに主演を務める広瀬すずの、10代最後の活躍に期待が高まる。


参考:広瀬すず主演『anone』ーー日テレ×坂元裕二が次に描くものは?


 学内に革命を起こすべくコトバで闘う生徒会長・春菜ツバメを好演した『学校のカイダン』以降、つねに主役やヒロインなどとして、作品の中核を担い続けてきた広瀬。その底知れぬポテンシャルは誰もが知るところである。完結編が公開待機中の『ちはやふる』シリーズでは、容姿端麗ながら走って跳ねて、果ては白目をむいて眠り込むほど競技かるたに熱中する主人公・綾瀬千早を演じている広瀬だが、彼女は活発に、全身をつかって自己を表現するキャラクターが見事にハマっていた。


 近作でいえば、『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』での、友永ひかりというキャラクター。弱小ダンス部を未経験者ながら率いるようになり、やがてはメンバーの中心として全米制覇するまでを、最高の笑顔とキレのあるダンスで表現した。『ちはやふる』同様、「ここまでやるのか、広瀬すず!」という姿に終始おどろかされる。つづく、広瀬にとって初の本格ラブストーリーである『先生! 、、、好きになってもいいですか?』で演じた島田響もまた、奥手ながらも活発な姿が印象的であった。意中の相手である先生に向けた真っ直ぐなまなざしや、タイトル通りのセリフを大胆に言い放ち、初めての恋心を爽やかに演じ上げた。先生のもとへ走って行く姿は、なんとも言えぬ清々しさを湛えていた。


 本作『anone』で広瀬が演じるのは、幼少期は天真爛漫で野放図な少女だったものの、現在は自分の世界に閉じこもりがちで、どこか挙動不審。仲間たちとともにネットカフェに寝泊まりし、スマホのチャットゲームの中だけで会える人物と日々の他愛ない会話を交わすのが楽しみな、辻沢ハリカというキャラクターだ。


 男子顔負けの活発な、陽気なキャラクターを演じることの多い広瀬であるが、彼女のポテンシャルの底知れなさが発揮されるのは、そればかりではない。吉田修一原作で、李相日監督の渾身の一作『怒り』では、無垢な少女が暴力にさらされ周囲に影響を及ぼしていくさまを体当たりで演じ、2度目の是枝組参加となった『三度目の殺人』では、『海街diary』で見せた少女の純粋で瑞々しい葛藤とは真逆の、見ていて息苦しくなる重々しい“静の演技”で、すでに“少女”からの脱却をはかっていたようにも見えた。


 本作が『Mother』、『Woman』につづく第三弾ということで、社会派ドラマとして期待しないわけにはいかないだろう。両作を支えたベテラン・田中裕子や、同じく坂元脚本の『それでも、生きてゆく』や『最高の離婚』(ともにフジテレビ系)の中心に立っていた瑛太が、本作を、そして広瀬を、脇から支えるのは頼もしい。その中で、広瀬のシリアスな演技に期待が集まるのも、また当然のことである。


 広瀬は、10代最後の連ドラ主演の抱負について、発表時に「10代は少女といわれる時期でもあると思います。今の自分だからこそ見える世界、感じられる感覚を大切にしたいな、と思います。初めて連ドラの主演をやらせていただいたのが16歳で、日本テレビ(学校のカイダン)だったので、そのご縁がすごくうれしくて、今回も大切に演じられたらいいな、と思います」と語っていた。20歳を迎えるこの2018年は、今のところ『ちはやふる -結び-』『ラプラスの魔女』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』の公開も控えているが、本作で幸先の良い出だしとなるか。10代最後の奮闘を、見守っていきたい。


(折田侑駿)