ヤフーオークションやフリマアプリメルカリに、自衛隊の教範やテキストが複数出品されている。このうち、陸上自衛隊の「新入隊員必携」はメルカリで1万円~2万円台で売買が成立していた。ヤフオクでは「平成25年度版」が7万円で落札されているものもある。
しかし、出品画像を見ると、テキストに「用済み後は確実に破棄する」と書いてある。本来外部に出回るはずのない物が売られているのはなぜなのか。また、機密上問題はないのだろうか。
出品自体は違法ではないが、「よろしくない」と自衛隊広報者
同書は名前の通り、新入隊員の教育訓練用に使われる冊子で、使用期間は入隊後1年未満と短い。国から支給される官用品ではなく、個人がお金を払って購入する有料頒布品扱いで、価格は昨年8月時点で税込み1045円。実際の価格の10倍以上の値段で売買されていたことになる。
冊子には、地雷の除去方法や野外勤務時の注意点、地図の見方などが書かれている。全部で773ページと、かなり厚い。ミリタリーグッズ収集家などに需要があると見込まれる。
なかなか興味深い品だが、ネット上では「出品して大丈夫なのか」といった声も。たしかに、普通なら自衛隊員しか知ることのできない情報がネットを経由で民間に流れていると思うと心配になってくる。
陸上自衛隊の広報担当者によると、冊子に書かれている内容は秘密扱いではないため、出品すること自体は違法ではないという。しかし、誰でも買える訳ではなく、購入前には上官や教範管理担当者の許可印、管理を徹底する旨の誓約書を出す必要があり、購入時にも上官や担当者が同行し、誰が何を買ったかも、全て記録されているという。
任期満了や中途退職で自衛隊を脱退する場合には、上官や担当者立ち合いの元破棄する規定になっていて、破棄の記録も取っているという。こうした規定に基づく扱いがきちんと行われていれば、テキストが外部に出回ることはないはずだ。担当者は、
「通常は部内専用で使用するもの。出品者がどういう経緯で手に入れているのか分からないが、隊員がやっている場合は目的外使用になるので、よろしくない」
という見方を示した。現役の隊員や、かつて隊員だった人が脱退時に破棄せず持ち帰った場合にどんな処分があるのかも聞いたが、「どういう人が出品しているか分からないので、仮の話で説明するのは難しい」という回答にとどまった。
「購入手続きや管理、破棄を徹底していく」
オークションでは、出品者が備考欄に
「過去に一度も自衛官であったことがない民間人です。商品の入手に際し、自衛官が故意に出品者に商品を提供した事実もありません」
と、自衛隊との関係はないと明記しているケースもある。こうした場合、民間人の入手経路として考えられるものはないか聞いたが、「分からない」という回答だった。
ネットでは陸上自衛隊の「新入隊員必携」以外にも、「野戦特科本部中隊」「野外令」などのテキストが売られている。同広報担当者は、「購入手続きや管理、破棄を徹底していく。出品者の実態が分かり次第、規則に則って対処する」と話していた。