2018年01月08日 10:22 弁護士ドットコム
不倫相手の自宅に出入りする「決定的な写真」があるのに、それだけでは裁判の証拠としては不十分なのかーー。夫の不倫相手に慰謝料を求める訴えを起こした女性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談を寄せている。
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夫が夜、不倫相手の女性宅に入り、朝出ていく写真を3日分おさえており、当初、勝訴の可能性は高いと認識していたそうだ。ところが裁判が始まると、不倫相手側は「家には入ったけど不貞行為はないという説明」を始めた。さらに証人や証拠も準備してそれなりに筋が通っているように感じ、相談者の女性は不安を抱いているようだ。
このような写真があるのに、裁判で負けてしまうことは考えられるのか。また、写真に加えて、どういった証拠があれば勝訴の可能性を高められるのか。加藤寛崇弁護士に聞いた。
「当事者が認めていない場合、不倫(性交又はそれに準ずる行為)の直接的な証拠はないのが通常ですから、不倫の有無が争われているケースでは、ラブホテルの出入りを撮った写真とか、メール・ラインのやり取りなどの間接的な証拠で裏づけることが通常です。
こうした間接的な証拠から最終的に認めさせたい事実(不倫)を裁判所が認めるかは、反対方向の証拠などとの兼ね合いもあるので、抽象的にどういう証拠があれば不倫を認めてもらえるかを論じることはできません」
今回の場合、不倫は事実として認められそうか。
「本件の写真で直接裏づけられるのは『女性宅に夜入り、朝出てきたことが3回あった』ことです。一般的に考えれば、確たる理由もないのに、女性の自宅に3度も既婚男性が泊まるのは、的確な反論と反対証拠を出せなければ、不倫の事実ありと認められるでしょう。
しかし、夫と女性の人間関係や、どういう理由で家に出入りしたという説明をしているのかといった証拠と事情によっても左右されます。例えば、夫と女性は高校の同級生など純粋にプライベートな関係で、女性宅が一人暮らしであり、単に女性の相談に乗っていたという程度の弁解しかしていない、といったようなケースなら大半の裁判官は不倫の事実があったと認めると思われます」
どんな点に注意しておけばいいのか。
「裁判官によって証拠の評価が異なったり、不倫が証明できたかどうかのハードルを高く見積もるかどうかが異なったりすることもあります。私の経験でも、客観的証拠や証明された事実関係は異ならないのに、一審と控訴審で不倫を認めるかどうかの結論が逆になった例もあります。
写真の他にどういう証拠があった方がいいかという点については、配偶者と不倫相手のメールやラインのやり取りといったものは、ごく一般的です。あくまで補助的な証拠にとどまりますが、配偶者の自動車にGPSを置いて不貞相手の自宅への出入り状況を裏づけている例もあります。
単なる仕事等の関係では説明できないような密接な接触・関係があったと思わせる証拠をできるだけ用意できるほうが認められやすくなります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。不倫絡みの事件は、地裁・高裁で結論が逆になった事件など、ユニークな事例もある。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/