2018年01月06日 10:42 弁護士ドットコム
お正月と言えば、初詣。多くの人が家族や友人と神社に足を運んだのではないでしょうか。そこで外せないのが家族の健康や交通安全などを願うお守りです。売り場には長蛇の列ができ、家族全員の分も大量に購入している人がいます。
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こうしたお守り、消費税も含めて、実は課税対象となりません。おみくじや祈祷なども同様です。
ですから、初詣は宗教法人にとっては「稼ぎどき」なわけですが、この非課税ってどこまで許されるのでしょうか。ちょっと極端な事例で考えてみましょう。
例えば、神社の境内に巫女さんが接客してくれる「ご祈祷カフェ」を作ったとしたらどうなるのでしょうか。田邊美佳税理士に聞きました。
「株式会社のように営利を目的として設立された法人は全ての所得に対して法人税が課税されます。しかし、宗教法人は公益目的の法人であり、宗教法人本来の活動から得られた所得については課税されません。したがって、賽銭や祈祷料等はもちろん、お守りやおみくじ等の販売代金も実質的には『喜捨金』と認められるため非課税となります」
田邊税理士はそう指摘します。では「ご祈祷カフェ」はどうでしょうか。
「宗教法人でも収益事業を行う場合には、その所得については法人税が課税されることとなっていますので、『ご祈祷カフェ』が『収益事業』であると判断される場合には課税対象となってきます。
この収益事業には、物品販売業や飲食店業など34種類の事業が掲げられています。ただ、その事業に該当したとしても必ずしも課税されるわけではありません。そもそも収益事業に課税がなされるのは、公益法人等が行う事業が一般の会社が行う事業と競合する場合に、公平に課税をするためです。したがって、掲記されている事業に該当しても『継続的に』『事業場を設けて』行っていない場合には課税対象とはなりません」
なるほど。では、例えば、500円を払うと巫女さんが「今年も良い年になあれ」と祈祷をしてくれ、甘酒やお神酒、おしるこなどを無料で振る舞うといった「ご祈祷カフェ」を正月限定で境内にオープンした場合はどうでしょうか。
「『ご祈祷カフェ』が正月限定のカフェで、料金はあくまで巫女さんに祈祷をしてもらうための対価で、飲物は無料でふるまわれているだけ、という形であれば収益事業には該当せず、非課税になるかと思います」
逆に言うと、そのような形から逸脱してしまうと、やはり課税対象になる可能性もありそうです。さすがにこれで一儲け、というのは難しそうですね。
【取材協力税理士】
田邊美佳(たなべ・みか)税理士
オネスタ税務会計事務所所長。公認会計士・税理士・行政書士・ファイナンシャルプランナー。相続税申告、生前対策業務をメインに行っており、国際相続案件にも対応可能。
事務所名 : オネスタ税務会計事務所
事務所URL:http://www.onesta-tax.com/
(弁護士ドットコムニュース)