「岩手大学、出席はもとより、欠席した場合もGPSから位置情報が特定されるため、生徒が完全管理され、代筆が不可となる完全刑務所化アプリを出しました」
同大の学生が昨年末にこんなツイートを投稿し、ネットで物議を醸していた。大学が学生の位置情報を把握しようとしていることに対し、「プライバシーゼロ」「スマホ忘れたら即死」「ディストピア」といった批判が相次いでいたのだ。
しかし岩手大学の担当者は1月5日、キャリコネニュースに対して「GPSで所在地を把握するというのは完全な誤解だ」と話した。
何週間も大学に来ていない学生を把握し、担任や指導教員がケア
問題となったのは、同大が出欠管理のために導入した「Campus eMe」というアプリだ。同大の担当者は、「教養科目が行われる一部の講義室にビーコンを設置しています。それによってアプリの情報を検知し、出席を把握する仕組みです」と説明する。特定の講義では、スマホのBluetoothをオンにしておくことで、出席報告ができるということだ。
アプリ導入の目的については、
「100~200人も受講生がいるような授業では、出席を取るだけで10分近くかかってしまいます。もっと簡単に出席を取れるような仕組みが必要でした」
と話す。他にもこのアプリを利用して「学生のケア」を行っていくという。
「個々の授業の欠席を集約して、把握すれば、ある学生が何週間も大学に来ていないといったことがわかります。そうした場合には、担任や指導教員から連絡がいく仕組みを作りたいと思っています」
学生からすれば代返を頼めなくなることが大きな痛手になりそうだが、大学の目的はあくまでも出欠管理の簡略化と学生のケアだという。
「アプリの導入によって、友人に代返を頼んだり、出席カードの提出を頼んだりすることをけん制できるとは思います。ただしこれは主たる目的ではありません」
「GPSで所在地を把握するというのは完全な誤解。アプリの表示はミス」
アプリをダウンロードすると、一番最初に、
「位置情報サービスを『常に許可』以外にすると、出席報告が正常に行われません」
という通知が表示される。アプリの説明欄にも同様のことが記されており、ネットでは「常に位置情報を把握される」という情報が広まった。しかし、担当者は、
「GPSで所在地を把握するというのは完全な誤解です。そもそもGPSは使用していません。アプリの表示はミスであり、現在対応を検討中です」
と否定した。富士通システムズ・ウエストが開発し、長崎県立大学でも利用されているこのアプリ。岩手大ではまだ試行段階だが、来年度の導入を目指して検討中だという。