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森川葵×前野朋哉が語る、『嘘八百』の独特な撮影現場 「20代、30代では作れないような雰囲気」

2018年01月05日 11:32  リアルサウンド

リアルサウンド

 中井貴一と佐々木蔵之介がW主演を務める映画『嘘八百』が1月5日より公開されている。監督・武正晴と脚本家・足立紳の『百円の恋』タッグと、NHK連続テレビ小説『てっぱん』の脚本家・今井雅子によって制作された本作は、千利休の幻の茶器を巡る大騒動を描いたコメディ映画だ。今回、リアルサウンド映画部では、空振りばかりの古物商・小池則夫(中井貴一)の娘・大原いまりを演じた森川葵と、落ちぶれた陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)の息子・野田誠治を演じた前野朋哉にインタビューを行い、初共演のお互いの印象や、撮影時のエピソードなどについて話を訊いた。


参考:『嘘でしょ!?』な撮影に中井貴一や佐々木蔵之介も驚き!? 『嘘八百』メイキング秘話


ーー森川さん演じるいまりと前野さん演じる誠治は、次第に惹かれ合っていくという役どころです。お互いの印象はどうでしたか?


前野朋哉(以下、前野):僕はこれまで人を好きになる役をあまりやったことがなかったんです。しかも森川さんとは10歳ぐらい年が離れていることもあって、最初はどうしよう……と少し照れくさい気持ちがあったのですが、森川さんがすごくフランクに話してくれたので、僕もどんどん楽しくなっていきました。


森川葵(以下、森川):いまりと誠治が出会うシーンでは、私たちもまだほとんど話していない状態だったので、前野さんの誠治と私のいまりがそのまま出ているような感じがしました。いまりはそんなに緊張しているわけではないけれど、誠治は模型を作りながらおどおどしている(笑)。その関係性がいいかたちで反映できたのでよかったなと思います。


前野:コメントめっちゃうまいですね! うわぁ、すごい……。


森川:そんなこと言われるとすごく恥ずかしくなるじゃないですか(笑)。


前野:いやいや、ごめんなさい。感動しました。あと、待ち時間にずっと2人で将棋をしていましたよね? おじさま方は寒い中撮影されていましたが、若い僕ら2人は控え室でぬくぬくと将棋をしちゃってて、申し訳なかったなと(笑)。


森川:おじさま方が集まって競りをやるシーンがあるのですが、私たちはそのシーンでは皆さんと一緒に映らないので、控え室で待機していたんですよね。「申し訳ないね」と言いながら2人で将棋をするという(笑)。


――今回、キャストの方々の平均年齢が高くて、森川さんが最年少だったんですよね。


前野:22歳の森川さんが一番若くて、次に若いのが31歳の僕でしたから。さらにその次に若いのが39歳の宇野(祥平)さんだったんですよ。あとは40代から80代までの方々が集中していて。


森川:本当に素敵なおじさまたちが(笑)。


前野:皆さん本当に楽しそうでした。ここまで年の近い方々で集まることも、あまりないようで。役者にも先輩後輩もちろんありますが、それを感じさせない空気があって、見ていて僕も羨ましかったです。だって、坂田(利夫)さん、芦屋(小雁)さん、近藤(正臣)さんなど年が上の方々を、中井(貴一)さんや佐々木(蔵之介)さんが普通にいじるんですよ。僕らもその輪の中に入れていただいたのですが、さすがにいじるまではできませんでした。


森川:本当に20代、30代では作れないような雰囲気でしたよね。撮影中はものすごく寒かったのですが、皆さん楽しそうにしていたのがとても印象に残っています。現場ではみんなでこの作品のことを“大人の青春映画”と言っていたのですが、現場自体もまさに“大人の青春の現場”という感じでした。


ーー今回は大阪・堺でロケが行われていますが、撮影スケジュールが相当タイトだったらしいですね。


森川:多分主演の方々だけ……(笑)。


前野:中井さんと佐々木さんはめちゃくちゃタイトだったと思います。大体僕らが早く終わって、「お疲れ様でした」と先に帰っていたような記憶があります。


森川:次の日に「昨日ご飯食べに行ってきたんですよ」って言うと、「お前そんな時間あるのか!?」って貴一さんに言われたこともありましたね(笑)。


前野:佐々木さんも外で食べる時間がほとんどないと言っていたのですが、僕もそのあと普通に「このお店おいしかったです」とか言ってしまって、「あ、やばい!」となったことはありました(笑)。


――親子役を演じた佐々木蔵之介さんとの共演はいかがでしたか?


前野:僕は楽しさの中にも緊張感を持ちながらやらせてもらいました。佐々木さんとお芝居をするときって、いい意味でピリッとする瞬間があるんです。京都の時代劇をやっているときの感覚に何となく近くて、自分では作れない心地いい緊張感でした。


ーー芝居に対して厳しい?


前野:厳しいというか、役に対して真面目な姿勢でいることをものすごく感じました。例えば、僕が言葉につっかえちゃったことがあったんですけど、現場ではOKが出て、僕がホッとしていたら、蔵之介さんから「そこは次にちゃんと繋げないとな」と言われてハッとしたことがありました。僕は何ならちょっと「おいしかったな」と安心していた部分もあったので、「自分は本当にダメだな」とそれを機に心を改めました。


ーー森川さんは父親役の中井貴一さんとの共演はどうでしたか?


森川:中井さんは面白いことや楽しいことが大好きで、みんなが楽しんでくれるのが嬉しいみたいでした。どちらかと言うと「好きなように、自由にやっていいよ」という感じでしたね。私は「自由」と言われると、もっといろんなことをしたいと求めてしまうタイプなので、貴一さんが作ってくれた環境は自分にとってすごく合っていて、やりやすかったです。


ーーいまり自体も自由な女の子ですもんね。


森川:そうなんですよ。自由なんだけど、親に対していろいろと思っていることがある。それこそ(中井さんが)厳しくないからこそ、ちょっと睨んだりムスッとした表情をしたり、役作りもしやすかったです。


ーーいまりは食事のシーンが非常に多かったですね。


森川:常に食べているくらいでした(笑)。しかもクランクインしてすぐに食べるシーンが続いたんですよ。そしたら、監督に「いまりちゃんが出てるシーンはずっと食べてても面白いね」と言われて、それで食べるシーンが結構増えたんです。バームクーヘンを食べるシーンは何回か出てくるのですが、そこは食べ方を変えてみたりしました。


前野:すみません、僕も森川さんにバームクーヘンを食べさせてもらいました。役得だなぁって(笑)。


――(笑)。2人の結婚式のシーンも印象的でした。


森川:あのシーン、誓いをした2人がキスする寸前で扉が開くんですけど、なかなか扉が開かなくて「あれ? あれ?」って2人で戸惑いましたよね。監督がカットかけてくれなかったんでしたっけ?


前野:微妙なラインだったんですよね。(キスしに)いくのは僕なので、「あぶねー! するところだった!」みたいな(笑)。


森川:「テストではしなかったけど、本番ではするのか!?」というドキドキ感がありましたね(笑)。


前野:本当にドキドキしましたね。でも本編を観ると、意外とまだ距離があったんですよ。自分の中ではほぼキスしているぐらいの距離感だったんですけど(笑)。


ーーでは最後に、映画の公開が新年一発目ということで、2017年の振り返りと2018年の意気込みをお願いします。


前野:2017年は感覚的にすごく長い1年でした。これまでは映画・映像のお仕事が多かったのですが、ナレーションや声優、舞台など、これまでにやったことがなかったことをたくさんやらせていただいたので、自分にとっては挑戦の年でした。2018年もいただいたお仕事や出会いを大切にしながら頑張っていきたいです。


森川:高校を卒業してからはずっと「1年早いな」と思っていたのですが、2017年はすごく充実していたので、私も長く感じました。それこそこの『嘘八百』の撮影で始まり『嘘八百』で終わるという、本当に濃い1年でした。映画やドラマなどたくさんの作品に出演させていただいたので、ほぼ毎日やることがあって。そういう日々が続くと早く過ぎていっちゃうのかなとも思ったのですが、意外と濃さがちゃんと自分の中に残っているんですよね。今後公開される映画も控えていますし、1月からはドラマにも2本出演させていただくので、『嘘八百』でうまくスタートダッシュを切って、そのまま1年を走り抜けられたらと思います。(取材・文=宮川翔)