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広瀬すず主演『anone』への期待ーー日テレ×坂元裕二が次に描くものは?

2018年01月04日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 1月新ドラマ最大の期待作はズバリ2作品だ。1つは、1月12日スタートの脚本・野木亜紀子×演出・塚原あゆ子、石原さとみ主演TBS金曜10時ドラマ『アンナチュラル』。そして、もう1つは、1月10日スタートの、『カルテット』の脚本・坂元裕二×演出・水田伸生による、広瀬すず主演日本テレビ水曜10時ドラマ『anone』である。


参考:『anone』『アンナチュラル』『隣の家族は青く見える』…新ドラマはオリジナル作品が目白押し


 また、木村ひさし演出のTBS日曜劇場、松本潤主演の『99.9-刑事専門弁護士-』は安定のシーズン2、石田ゆり子・江口洋介はじめ豪華キャスト陣と井上由美子脚本のテレビ朝日系木曜9時、木村拓哉主演の『BG~身辺警護人~』も間違いないだろう。さらに見逃せないのが、遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、松重豊、光石研による、深夜ドラマではない2月7日水曜21:54~放送、テレビ東京の『バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~』。こちらは言うまでもない。最高だ。


 『アンナチュラル』はいつも極上のサスペンスと人間ドラマを驚くほど丁寧に描く『リバース』、『Nのために』の製作陣と、『逃げるは恥だが役に立つ』や『重版出来!』など愛すべき個性的な登場人物を描いてきた野木が脚本を手がけ、石原主演、さらには井浦新に窪田正孝の出演ということで、間違いなく上質で面白い優れた医療サスペンスになるだろうと100%の期待を寄せているのであるが、今回は、2010年放送の松雪泰子主演『Mother』『Woman』に続く、日本テレビと坂元裕二がタッグを組んだドラマ第3弾である『anone』を取り上げたい。


 小さかった芦田愛菜の名演技や、出演シーンが少ないのに関わらず強烈な印象を残す、子供に暴力を振るう母親の恋人役を演じた綾野剛など、未だに鮮烈な第1弾『Mother』は、「母性は女性を狂わせる。」というキャッチフレーズ通り、松雪が虐待されていた芦田を引き取ることで、「母親」となり、彼女を守るためにひた走っていく物語だった。それに芦田の実母・尾野真千子や、訳あって離れて暮らさざるを得なかった松雪の実母・田中裕子、それぞれの「母親」としての感情が入り乱れて物語は予想もしない方向に進んでいく。


 満島ひかりと鈴木梨央の親子、高橋一生、二階堂ふみの好演が記憶に残る2013年放送の第2弾『Woman』は、「わたしには、命をかけて守る命がある。」がキャッチフレーズで、貧困や、母親・田中裕子との確執、夫・小栗旬の死の謎、さらには闘病と、子供2人を育てるシングルマザーの苦悩と奮闘を描いた。両作とも母親と娘の真っ直ぐだったりこじれたりする愛を丁寧に描いてきた。


 そして、『お母さん、娘をやめていいですか?』や『母になる』、『過保護のカホコ』、『明日の約束』など多くのドラマが、「母親と子供」の愛憎や葛藤を描いた2017年を経て、2018年1月、坂元裕二と水田伸生が描くのは、「私を守ってくれたのは、ニセモノだけだった。」というキャッチフレーズが印象的な広瀬すず主演の第3弾『anone』である。これまで「守る側」を中心に描いていた物語が、「守られる側」でありながら誰にも守られなかった孤独な少女を描く物語に変わっている。力強い名詞から丸みを帯びた小文字の「あのね」へ。まるで小さな子供がそっと呟くような「あのね」だ。そしてその言葉を呟くべき対象である「母親」は現在のところ登場人物欄のどこにも存在しない。


 また、これまで『Mother』、『Woman』と意味が大きくなっていったタイトルは、前2作において、「母親」を演じてきた田中裕子の役名「林田亜乃音」そのものになることによって、母親から女性、さらに超越したなにかになるのではないか。そしてそれは、もしかしたらこれまでの作品含め3作を総称するなにかになるのかもしれない。


 物語の鍵を握るのは、捨てられた大量の1万円札。広瀬演じる孤独な少女ハズレこと辻沢ハリカ、田中裕子演じる1人の老齢の女性・林田亜乃音、そして死に場所を探す旅をする阿部サダヲと小林聡美演じるカレー屋の店主と客という、違う道を歩んでいた人々が、それぞれに「捨てられた大金」によって引き寄せられていく。田中裕子、阿部サダヲ、小林聡美、そして瑛太と、完璧な布陣におとぎ話めいた物語。


 タイトルとキャッチコピーとあらすじだけでこれだけ妄想を膨らませてくれるだけで(ちょっと膨らませすぎたかもしれないが!)、このドラマは確実に秀作になるだろう。坂元裕二脚本の『カルテット』もそうだったが、みんながちょっとずつ孤独な今の世の中において、多分、このドラマは私たちの心に必要なものになる。そんな予感がする。(藤原奈緒)