2018年01月03日 10:02 弁護士ドットコム
石川県かほく市の子育て中の市民で構成された「かほく市ママ課」と財務省主計官との意見交換会で、「独身税」の創設を求める声があがり、この意見交換会を伝える記事(2017年8月)をきっかけに、ネットで炎上したことを記憶している人も多いのではないだろうか。
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この独身税は、新たに徴収しようとすると、「独身ハラスメントだ」という批判が独身者からあがるのは当然かもしれないが、既に結婚して、子どものいる家庭には様々な税の優遇があるため、実質的に日本には「独身税」が見えないものとして存在しているのではないだろうか。
子持ちの世帯の場合、独身者と比較して、税金や社会保障の優遇がどの程度あるのか、三宅伸税理士の協力を得て、シミュレーションしてみた。
(独身者)年収1000万円の40歳男性会社員。東京都内で購入したマンションに暮らす。好きで独身でいるわけではない。
(既婚者)年収1000万円の40歳男性会社員。35歳専業主婦の妻と、2人の子ども(10歳と5歳)がいて、東京都内で購入したマンションで一家4人で暮らしている。
既婚者と独身者で納税額に差が出る要因は、配偶者控除と扶養控除です。既婚者に適用される優遇税制には以下のようなものがあります。
<配偶者にかかるもの>
(1)配偶者控除・配偶者特別控除(本人の所得制限あり)
配偶者の年収が150万円以下(平成30年から)であれば配偶者控除を、その年収が150万円超~201.6万円未満であれば、その収入金額に応じ配偶者特別控除の適用があります。
<子にかかるもの>
(1)扶養控除
子が16歳未満までは控除はありません。子が19歳以上23歳未満であれば63万円(住民税は45万円)の控除を受けることができます。
では具体例で検証します。40歳男性会社員、年収1000万円の既婚者(専業主婦と子2人)の年間「所得税額+住民税額」を独身者と比較してみます。
(1)既婚者に16歳未満の子がいる場合(または子がない場合)
子の扶養控除がないため配偶者控除のみの適用となり、年間納税額は132万5千円になります。独身者の143万6千円に比べて税負担は11万円少なくなります。
(2)子の年齢が19歳から23歳未満の場合
配偶者控除と子の扶養控除(63万円)の適用があり、年間納税額は約98万円で独身者の143万6千円に比べて税負担は46万円少なくなります。
社会保険は、給与収入が同じであれば既婚者も独身者と同額が天引きされます。つまり配偶者自身は保険料の負担なしで世帯主の会社の健康保険や厚生年金保険に加入できます。以上から独身者は不利で「実質独身税が課せられているのと同じ!」と感じられるかもしれません。
(試算の詳細は以下の画像に記載)
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しかし、家族がいれば生活費が増えます。特に子がいれば教育費等の負担は重く、子一人当たりの生涯教育費(幼稚園から大学まで)は、全て国公立の場合1千万円強、私立であれば1千710万円程度かかるようです。(公益財団法人生命保険文化センターのまとめよりhttp://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/education/6.html)
既婚者が税制等の優遇措置をうけ、また会社の配偶者手当てや公的な児童手当を受け取ったとしても、「既婚子どもあり」の方の金銭的余裕はあまりなさそうです。この実態をどうみるのか、という話になるでしょうね。
【取材協力税理士】
税理士 三宅伸(みやけしん)
大阪府立大経済学部卒業後大手リース会社勤務。仕事、育児、勉強を両立しながら大阪の税理士法人に勤務。3年前に後独立。クラウド会計の導入でストレスのない環境を提供。お客様の悩みや問題が少しでも減り共に成長していくことをモットーに起業支援、相続等幅広く活動している。
事務所名 : 三宅伸税理士事務所
事務所URL: http://miyake-tax.jp/index.html
(弁護士ドットコムニュース)