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安室奈美恵は“200万枚を売り上げた最後のアーティスト”となるか? 2017年最終週チャート分析

2017年12月31日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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参考:2018年1月1日付の週間CDアルバムランキング(2017年12月18日~2017年12月24日)


 2018年1月1日付、いよいよ今年最後の週のアルバムチャート。初登場作品はすべて12月20日にリリースされたものです。年末ギリギリに出る作品は、いわゆる「年間ベスト」に選ばれづらい、師走の音楽特番ラッシュのなかで大きな話題になりにくい、などのデメリットがあると言われますが、トップ10の作品はそれぞれ2万~7万枚と好セールスを記録しています。


(関連:DAOKO、荻野目洋子、東方神起……年末に向けてダンスMVと一緒に楽しみたい新作


 その中で「あれ?」と思った作品がひとつ。同じ12月20日に発売されたDAOKOの2ndアルバム『THANK YOU BLUE』。上位ランクイン間違いなしと思いこんでいたら、13位という結果になりました。


 ここで面白い記事を。YouTube Rewindが先日発表した、今年注目を集めた音楽動画ランキングです。1位はDAOKO×米津玄師の「打上花火」。米津玄師は他2曲もランクインしているので、ネットと米津の相性の良さが証明されたとも言えますが、それでも「打上花火」はDAOKOの歌唱なしには成立しない名曲。今年全体を振り返っても、数少ないヒット曲のひとつと言えるでしょう。


 米津玄師と組んだあと、DAOKOは岡村靖幸と、さらにはBECKともコラボを果たし、ライトユーザーからコアな音楽ファンにまで高く評価されるアーティストに成長していきました。その集大成となるのが今回のアルバム。D.A.N.やO.N.O.(THA BLUE HERB)のトラックを気怠く乗りこなしていく姿は超絶クールだし、かと思えば玉屋2060%(Wienners)や小島英也(ORESAMA)のハッピーなサウンドで可愛い女のコとして振る舞う歌声も蠱惑的。ラッパーとシンガーソングライターの垣根を超え、ポップとアンダーグラウンドの両方から愛される、そんな独特の才能が開花した力作です。


 むろん作品の評価は高く、SNSで絶賛する声も多い。要するに、広く聴かれていることと、CDが購入されたことが、ものすごく乖離しているのだと思い知る結果なのです。いまのオリコンランキングは「どれだけコアファンを抱えているか」の目安なのでしょう。若い世代を中心に「広く聴かれていること」とは別の話です。


 例外は安室奈美恵。コアファンの枠を超え、『Finally』は今も老若男女に求められ続けています。4週前の記事で「150万枚突破!」と書きましたが、先週も5.4万枚、今週もまた5.4万枚を売り上げ、いよいよ180万枚を突破しそうな勢い。数字が衰えないのは『第68回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)出場決定のニュースが大きかったようですが、だからこそ、いざ『紅白』が終わってみればまだまだセールスが伸びることは容易に想像できます。2018年になって、安室奈美恵は「200万枚を売り上げた最後のアーティスト」と呼ばれるのかもしれません。あるいは「コアファン以外もパッケージを求めた最後のアーティスト」と。


 CDメディア勃興時代に歌とダンスに目覚め、初期に流通していた縦長のシングル(通称・短冊CD)でデビューし、CDバブル全盛期に最初のキャリアハイを迎えた彼女。2000年代に入ってからテレビで彼女の姿を見る機会はぐんと減っていきますが、それでもCDジャケットで変わらぬ美貌を確認し、またジャケット内に散りばめられたクールな写真に惚れ惚れしながら、ファンは「安室ちゃん健在!」を感じ取ってきたものです。


 最後のベスト盤。やっぱり配信じゃ無理。CDをこの手に持っておきたい。そんなふうに思わせるアーティストは、この先、もう出てこないでしょう。年末が近づけば近づくほど切ない気持ちが高まっていきます。(石井恵梨子)