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『陸王』で有終の美を飾った竹内涼真 2017年、大ブレイクへの軌跡を振り返る

2017年12月31日 07:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 次々と起用されるCMでのキャラクター、テレビで見せる爽やかな印象が世に浸透し、この2017年、もっともブレイクした俳優のひとりとして走り続けてきたのが竹内涼真だ。ついに最終回を迎えたばかりの日曜劇場『陸王』(TBS系)のランナー・茂木裕人役は、この流れの決定打ともいえるものであった。そんな彼の活躍を振り返ってみたい。


 まずは、今をときめく若手俳優が大集結した『帝一の國』。それぞれの野心のぶつかり合いを描いた本作では、 “誠実さ”をまるで絵に描いたようなキャラクター・大鷹弾を演じた。エッジの効いたキャラクターたちによる演技バトルの中、彼の持つ快活さは、同様に作品にも快活なテンポを与えていた。昨年のテレビ放送に引き続き映画化された『ラストコップ THE MOVIE』での若山省吾役は、“イケメンキャラ崩壊”も辞さず、大いに楽しませてくれ、NHKの連続テレビ小説『ひよっこ』では「島谷製薬」の御曹司・島谷純一郎役を好演。穏やかな佇まいと語りで昭和40年の人物を体現した。みね子(有村架純)との恋の行方に、たちまちお茶の間の顔ともなったのだ。


 前クールに放送され大きな反響を呼んだ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)では、麦野初を演じ、もはや知らぬ者はいないほどの存在となった。ピュアで世間知らずな加穂子(高畑充希)のコッテリした口調に対し、彼のあっさりとした物言いは絶妙なバランスを生んでいた。理路整然と加穂子を導いていく姿は頼もしいものであった。


 そして、オーディションにより茂木裕人役を獲得した『陸王』。彼が運動経験で培ってきた身体が、まさにフィットするキャラクターであった。『下町ロケット』(TBS系)と同じく、池井戸潤小説原作のテレビドラマ化であり制作チームも同じ本作で、大ベテラン役所広司や、音尾琢真、ピエール瀧、小籔千豊といった曲者たち、そして同世代の若手俳優の筆頭株である山崎賢人や佐野岳らの中、人々の出会いと奮闘の中核的役割をまっとうした。3ヶ月におよぶトレーニングや食事制限により造り上げられた、前へ前へと繰り出されるしなやかな肉体は、足元に輝くマラソン足袋「陸王」と一体となり、じつに軽やかで美しいものだった。真摯にひたむきに走りに打ち込む“静かなる情熱”と、時おり見せる激情への転換も見事である。ランナー茂木として、そして『陸王』に出演する俳優のひとり竹内涼真として、有終の美を飾ったのだ。


 男である筆者から見ても、やはりかっこいい。しかしそのかっこよさが非現実的なものではなく、あくまで現実的な、たとえば学校や職場にいそうな(だが、そうそういないだろう…)、親しみやすさが魅力である。この親しみやすさのひとつには、あまりクセのない、聞き心地の良い声が挙げられると思う。滑舌よく、澄み渡る彼の声はどんなキャラクターとも見事にマッチする。


 今年の活躍でいえば、演じることでキャラクターを表現するというよりも、竹内自身の爽やかなイメージが、そのままキャラクターにしっくりハマっていたという印象が強い。誠実、爽やか、快活、そんなポジティブな言葉がことごとく当てはまる彼だが、根暗、冷酷、残忍といった、ネガティブな一面も見てみたい。というより、観客である私たちがそれを渇望することで、彼が新たな可能性へ踏み込んで行く、その支えともなるはずだ。


参考:竹内涼真のブレイクに見る、イケメン像の変化 トレンドは草食系から体育会系へ?


 群雄割拠のイケメン戦国時代、『帝一の國』から『陸王』へと、早くも“イケメン俳優枠”から飛び抜ける活躍を見せた2017年の竹内。2018年は、今のところ出演の情報はないが、ぜひともテレビだけでなく、スクリーンでも彼の姿を見たいところだ。そして彼の声と身体は、間違いなく舞台でも映えるはずである。そちらにも期待したい。


(折田侑駿)