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「ULTRAMAN」神山健治×荒牧伸志インタビュー “ダブル監督体制”で目指すものとは

2017年12月28日 19:24  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

「ULTRAMAN」神山健治×荒牧伸志インタビュー “ダブル監督体制”で目指すものとは
12月1日、千葉県幕張市にて開催されたポップカルチャーイベント「東京コミックコンベンション2017」のメインステージにて、『ウルトラマン』のその後を描いた人気コミック『ULTRAMAN』が、2019年にフル3DCGにてアニメ化されることが発表された。また、その監督を神山健治監督、荒牧伸志監督の両名が担当することも明らかになった。
今回はステージでの発表を終えた直後の神山・荒牧両監督にインタビューを実施し、『ULTRAMAN』を”ダブル監督体制”で制作する狙いを伺った。
[取材・構成=いしじまえいわ]

ヒーローズコミック『ULTRAMAN』アニメ公式サイト
http://anime.heros-ultraman.com/
2019年公開予定


■Production I.G×SOLA DIGITAL ARTS本気のコラボレーション体制

――歴史あるシリーズである『ウルトラマン』の新作映像化という事で衝撃の発表でした。フル3DCGでのアニメ化という点も驚きでしたが、一番のサプライズは、神山監督と荒牧監督による豪華な“ダブル監督体制”だったことです。単刀直入に伺いますが、これは誰の采配なのですか?

神山健治(以下、神山)
いきなりそこからですか(笑)。でもまあ確かにそこは気になりますよね、きっと。

荒牧伸志(以下、荒牧)
そうですね、ではお答えしますと、まず3年ほど前にProduction I.GとSOLA DIGITAL ARTSの2社のコラボレーションによる新しい制作体制を発案したのは石川社長(Production I.G代表取締役社長 石川光久氏)で、それにジョセフ(株式会社SOLA DIGITAL ARTS CEOのジョセフ・チョウ氏)が賛同して実現しました。

神山
1年くらい前に、このチームで世に初めて出す作品として『ULTRAMAN』をやらない? と持ってきたのも石川社長でした。

荒牧
このチームの発足を機にSOLAの制作スタジオやモーションキャプチャースタジオもProduction I.Gの懐である三鷹に新設し、スタッフも移動しています。

神山
で、その中に僕やI.Gのメンバーが入るという感じで。

荒牧
入れ子状になっていますね(笑)。

――短期的なコラボではなく、今後しっかり組んで作品作りをしていくという意気込みを感じますね。

■神山「目が4つあるのがこんなに助かるとは!」

――神山監督から見て、荒牧監督やこのダブル監督体制はどのように感じられていますか?

神山
クリエイターは“猿山の猿”と同じで、チームの中で「誰についていけばいいんだ?」という考えがあると思うんですよ。その点、デジタルでの作品制作、特にモーションキャプチャーを用いた作品作りにおいて荒牧監督以上に経験と実績のある方は日本にはいないし、スタッフも荒牧監督と一緒にやってきた方が多いこともあるので、やはりこのチームのボスは荒牧監督だなと僕は思っています。
最初に荒牧さんから声をかけていただいた時に面白いなと思ったのは、今、映像の制作フローが複雑化し、ユニットも2つ3つ同時に並行する機会が多いなか、監督の業務が膨大になってきています。そのためハリウッドの実写の世界でもダブル監督という体制はありますし、アニメ監督もまた一人でやることというのが信じられないくらい多い。

荒牧
全部スタッフに任せてしまい、上がってきたものにOKを出すだけ、という手もありますが、二人ともどちらかというと自分で見て細かく手を入れたいタイプなんですよね。

神山
はい。そうなった時に「二人で監督するのっていいかもしれない」と思ったんです。実際に始めてみても、ものすごく助けていただいていて「これはすごくいいな!」と思っています。この作品ではシーン毎に分業するようなことはせず、全てのシーンを二人で見ているのですが、「目が4つあるのがこんなに助かるのか!」と感じています。
また、僕が知らなかったモーションキャプチャーの世界だったり、小さなところから作品を構築していく3DCG特有の制作フローだったり、ノウハウを教えてもらう新鮮さがあり、楽しくやらせてもらっています。

■荒牧「僕自身にとっても緊張感がある相手でないといけない」

――荒牧監督はこのコンビ、今はどのように感じられていますか?

荒牧
2社コラボレーション体制が決まった時、神山さんとやりたいと思って僕からお声掛けさせていただいきました。
自分が監督として猿山のボスをやっていく中で「自分一人でやるには限界があるな」という事を感じていたんです。このチームや制作フローをもっと汎用化して柔軟にしていかないと、僕とだけしか作品作りができないチームになってしまう。だから誰か一緒にこのチームを見てもらわないといけない。
こういう場合、仲良しなお友だちと一緒にやっても意味がありません。僕自身にとっても緊張感がある相手で、僕の作ってきた仲間や制作フローを別の視点から本気で見てくれる人でないといけない。そう思った時に神山さんがいいな、と。

神山
ありがとうございます。

荒牧
直感的な面もありましたが、実際に一緒に組んでみると、アニメに対する距離感や向き合い方のようなものも非常に馬が合う感じがあり、やはり神山さんにお願いして正解だったと思います。また、神山さんにも面白がってもらえているようでよかったなと思っています。

■両監督に共通する「アニメに対する向き合い方」

――アニメに対する向き合い方というのは、具体的にはどういった事でしょう?

荒牧
何故アニメーションをやっているのか? という事です。こういう言い方すると邪な感じがあり怒られるかもしれませんが、僕がアニメ業界で映像が作りたいと思ったスタートポイントは、要するに「アニメで『スターウォーズ』みたいなものが作りたい!」という事だったんです。
アニメでも、特撮やVFXを用いた写実的な画作りで表現ができる、というところに面白みを感じていて、3DCGもその過程で出てきたので導入したという感じです。アニメを使って空間やリアリティをしっかりしたと表現した作品を作りたい、というのが僕の目指すところなんですが、そのスタートポイントが神山さんと似てるな、と最近感じています。それもうまくいってるポイントだと思うんですが、どうですか?

神山
僕も同意見です。傍から見ていた時から荒牧さんの作品はハリウッド的で目指しているところが明確だし、僕が頂点と思っているところと同じところを目指している、おそらく似ている方だなあと思っていたんですね。
僕は『攻殻機動隊』、荒牧さんは『APPLESEED』と、同じ士郎正宗先生の代表作を手掛けていますし、士郎先生もまた海外から高く評価されつつ、ハリウッド的なものを意識されていたんじゃないかな、と思います。
アニメで制作する以上、絶対に実写にはならないんですが、だからこそそこを目指しているんだ、というところが似ている感じがしました。一時日本のアニメもその方向を目指そうという潮流があったんですが。

荒牧
80年代、90年代ですね。

神山
それがだんだんアニメは独自進化を遂げ、誰かが描いたもの、素材そのものを楽しむようになっていった。空間の表現よりも、キャラクターの魅力にアニメの力点がシフトしていく中で、僕はまだまだレイアウトがしっかりしていて空間があってドラマがあって、そこには世界があるんだ、という作品を作ろうという意識が強くあります。

荒牧
芝居をちゃんとしていてね。

神山
そうです。だから荒牧監督に声をかけてもらって組むことになったのには必然性があったなと思います。

荒牧
形や方向性はもちろん二人それぞれ違うんですが、「これを実現したい」という理想とするビジョンは上手く共有できるな、と思っていました。

神山
今年『ブレードランナー』がまた作られましたが、あの映画に魂を惹かれてこの仕事をやっている人は世界中にいると思いますしアニメ業界にもかつてすごくたくさんいたんですが、時が流れてまだあの作品が頂点だと思っている人間、だいぶ減ったじゃないですか!

荒牧
(笑)。

神山
荒牧監督は日本でずっとそれを追い続けていた人ですし、僕も形は少しずつ変わってはいったけど「(『ブレードランナー』監督の)リドリー・スコットが作るような映像に、アニメだったらどうやったら近づけるんだろう?」という事をやっていた人間ですので、組んでみたら目指す方向が一緒だから「いける」と思えました。そこがアニメとの距離感、向き合い方という事なんじゃないかと思います。
そういうところが、荒牧監督と仕事していて夜遅くなって、仕事から離れた話もするようになると、改めて共有できているなと感じられているところです。

荒牧
神山監督の方が僕より少しお若いんですが、見てきた作品、好んで見る作品というのは共通しているように感じますね。僕たちは、キャラクターももちろんだけど、他の部分もこだわりたいんだよね。

神山
いい悪いではなく、キャラクター重視というのも今アニメに求められている潮流だと思います。一方で、キャラと同じくらいレイアウトにもこだわりたいんですよ。

荒牧
光と影とか、世界観とかにもね。

■実写の代用品ではない、アニメを軸にするこだわり

――お二人とも『スターウォーズ』や『ブレードランナー』のような作品を作りたい、ということがスタートだということでした。踏み込んだ質問で恐縮ですが、お二人にとってアニメは実写の代用品だった、という事でしょうか?

神山
スタートの時点では「『スターウォーズ』を作る人になろう」と思っていました(笑)。当時日本で『スターウォーズ』的なものを作ろうと思った時に「最適なのはアニメだ」と思ったのでアニメを始め、技を磨く中でアニメの良さを知っていきました。だからまず第一に、アニメが好きなんです。
ただ、「絶対に手描きじゃなきゃダメ」という人もいるんですが、僕は3DCGなどを効率的に使っていけばいいと思います。でもその一方で、3DCGの場合、手描きと同じように作り手の熱量や作家性が乗っかってくるのはどこなんだろう? という事も追求したい。
つまり、アニメを軸に写実的な画作りを目指し、様々な手法を取り入れていくことそのものに面白さを感じています。だから「実写が撮れないから代用品としてアニメをやっている」という意識はないですね。

――荒牧監督はいかがですか?

荒牧
学生の頃、「『スターウォーズ』なら作れるんじゃねえか?」と本気で思ってたんですよ(笑)。それでアニメと実写、両方作ってみたんです。

神山
両方やったんですね!

荒牧
キャラが出てこないメカだけのものでしたが、実写の方はミニチュアを作って8ミリカメラでコマ撮りしたりしましたよ(笑)。
で、同じものを同じくらいの時間をかけて作ってみると、アニメの方が完成度が高かったんです。その時「アニメならプロっぽいものが作れるんだ」と感じてアニメが面白くなっちゃったんですね。それでアニメ業界に入るとすごい人もいっぱいいるし住み心地がいいところだったので、そのまま(笑)。
だから、スタートとしては代用品という意識はどこかにあったかもしれないけど、そういう角度で入ったからこそちょっと違う視点から「アニメおもしれえな」と感じられたし、3DCGも「複雑な形でも崩れないし、メカやるんだったら絶対にこっちの方がいいじゃん!」とポジティブに受け入れられた。3DCGからモーションキャプチャーを用いる過程で、役者の動きや芝居の面白さにも気付けた。
アニメからスタートしていろんな技術や表現に関心を持ったので、アニメが代用品という意識は今は僕にもないです。「ここまで写実的な作品作りができるなら実写撮りませんか?」とよく言われるんですが、アニメであれば培った技術もあるし仲間もいるんだから、アニメでやるよ、って感じです(笑)。

――ありがとうございます。お二人ともアニメを軸としつつ、様々な技術や表現を取り入れる事にも積極的であるということがよく分かりました。

■神山「『ULTRAMAN』はかなりアニメっぽい仕上がりになる」


――それでは『ULTRAMAN』の作品そのものについてお伺いしたいと思います。本作は漫画原作のアニメ化ですが、その前には伝説的特撮作品があり、制作もフル3DCGでモーションキャプチャー使用と、まさに様々な表現が盛り込まれた作品だと感じます。ティザーPVも公開されましたが、『ULTRAMAN』は単純な「漫画原作のアニメ化」ではない、実写的、特撮的なものになるんでしょうか?

神山
いいえ、面白い試みをたくさん盛り込んではいますが、ちゃんと画が出来上がると「間違いなく漫画『ULTRAMAN』のアニメ化だ」と思ってもらえるものになると思います。この辺説明が難しく、早くお見せして伝えたいんですが……(笑)。

荒牧
見てもらえればすぐに伝わると思うんですけどね(笑)。原作のファンやアニメファンの方に受け入れられやすいものになると思います。

神山
これまでの情報で「実写っぽいものになるのかな?」と思われる方が多いかもしれませんが、(まだ公開されていない)キャラクターはセルアニメに近いので、最終的にはかなりアニメっぽい仕上がりになるという手応えはあります。
今日お見せできればみなさん腑に落ちたと思うんですが、セルアニメと違って3DCGでアニメを作る場合、前工程の段階がすごく長くて、ある瞬間急に完成に近づく感じなんです。

荒牧
今、二段階目くらいまできています。これが四段階目くらいになると目に見える形になるので、もう少しお待ちください(笑)。
いわゆるアニメ的でありつつ、モーションキャプチャーの役者による芝居や3DCGの質感など、何か違うぞ? と思っていただける、陳腐な言い方ですが今までに見たことのない面白いものになると思います。

――最後に、アニメ版『ULTRAMAN』を楽しみにされている全てのファンの方々に向けて、メッセージをお願いします。

神山
作り方から新しい挑戦をした作品になっています。僕もアニメ監督としてはもう大概ベテランになってきちゃいましたが、僕自身が毎日新鮮に感じながら制作しているので、見る人にとっても新鮮で楽しい作品になると信じています。早くお届けしたいと思っていますので、楽しみに待っていただけたら幸いです。

荒牧
CGの作品はこれまで作ってきましたがアニメ作品はほぼ初めての経験ですし、神山さんと一緒に制作するという事もチャレンジや刺激になっています。それがいい形でフィルムに出て、期待を裏切らないものになると思いますので、ぜひよろしくお願いします。



【原作情報】
<公式HP>
http://anime.heros-ultraman.com/

<公式Twitter>
https://twitter.com/heros_ultraman

[スタッフ]
タイトル:『ULTRAMAN』(仮)
監督:神山健治×荒牧伸志
制作:Production I.G×SOLA DIGITAL ARTS

(C)TSUBURAYA PRODUCTIONS (C)Eiichi Shimizu, Tomohiro Shimoguchi (C)「ULTRAMAN」製作委員会

◆神山健治&荒牧伸志両監督のサイン入りポスタープレゼント
アニメ!アニメ!では、両監督のサイン入りポスターを2名様にプレゼントします。募集要項は以下をご確認ください。

[プレゼント]
「ULTRAMAN」神山健治監督×荒牧伸志監督サイン入りポスター2名様

応募先:present@animeanime.jp
必要事項:件名に“「ULTRAMAN」サイン入りポスタープレゼント”、本文にメールアドレス、お名前、電話番号、ご住所(郵便番号必須)
〆切:2017年1月14日(日)23時59分

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