電車やバスといった交通機関でストライキが起こると、利用者は足を奪われ不便な思いをする。それでも働く人の労働条件改善のためには、必要なことなのだろうか。
全日本海員組合は12月25日、ストライキに突入し、長崎と五島列島などを結ぶ九州商船の船便を全て欠航させた。翌26日には解除されたが、2000人に影響が出た。
今回のストでは、高速船の整備員の置き換えを巡り労使が対立。最終的に会社側が組合に譲歩したため、労働者側には一定の成果があったようだが、ツイッター上では島民だという人から「(ストがあると)生活がぶっ壊れるんです」といった困惑の声が上がっていた。
「ヨーロッパでは、消費者の利便性よりも労働者の権利が優先」
交通機関のストライキが行われると、「迷惑」と感じる人も少なくないようだ。一方で日本労働弁護団に参加する塩見卓也弁護士はキャリコネニュースの取材に対し、
「ストライキの権利は、憲法28条で定められた『団体行動権』で保証されています。労使交渉の中で、会社側が不誠実で交渉が前に進まないことがあります。そうしたときに実力行使で要求を飲ませることが必要になります」
とストの意義を指摘する。近年、大規模なストライキが減っていることについては、
「国鉄の分割民営化のころあたりを境に労働組合が弱体化し、ストライキは減ってしまいました。最近では、大規模なストライキはほとんど起こらないですね。しかし近年でも、都内のカレーチェーンやアメ横で職場占拠のストライキが起こっています」
と話す。また、ストに対して不寛容な人が多いことについては次のように語っていた。
「日本では、労働者の権利に対する理解が広まっていません。ヨーロッパでは、労働者の権利についての社会的な理解がもっと深いです。例えば、ドイツでは、定時で帰るのが基本ですし、残業しても1日10時間労働が限度です。お店は平日でも夕方までしかやっていないところが多く、日曜日はほとんどのお店が開いていません。『日曜は休むもの』という意識が定着しており、消費者の利便性よりも労働者の権利が優先されるんです」
「組合の組織率が低下し、労働運動が他人事になっているのではないか」
首都圏青年ユニオンの原田仁希さんも、
「組合はストライキを武器に交渉を行い、労働条件の向上を目指します。ヨーロッパでは日本よりも頻繁に起こりますが、多くの人がストライキに寛容です」
とストライキの意義を語る。日本では迷惑だと感じる人も少なくないようだが、「組合の組織率が低下し、労働運動が他人事になっているのではないか」と背景を指摘した。
2016年12月には、川崎鶴見臨港バス(神奈川県川崎市)の組合が、運転士の拘束時間短縮を求めてストを決行している。近年、日本ではなかなか見られなくなったストライキだが、働く人の労働条件を改善するためには、必要な手段なのかもしれない。