2017年12月28日 10:42 弁護士ドットコム
リニア中央新幹線の建設工事をめぐる入札談合事件が注目を集めている。かつて「談合との決別」を宣言しただけに、ゼネコン業界に激震が走る事件だ。
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独占禁止法違反容疑がかかっているのは大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手4社。4社は12月20日までに、同容疑で東京地検と公正取引委員会による捜査を受けたとそれぞれ発表した。報道によれば、大林組が「課徴金減免制度」に基づいて4社による受注調整があったと公取委に対して自主申告したという。
この制度を使って申告すれば、課徴金を100%免除され、さらに刑事告発も免れるそうだが、具体的にどんな制度なのか。大林組とは違い、他3社はどんな扱いを受けることになることが予想されるのか。独禁法に詳しい山田晃久弁護士に聞いた。
「課徴金減免制度とは、事業者が自ら関与したカルテルや入札談合について、公正取引委員会に自主的に報告した場合に課徴金が減免される制度です。違反事業者に自主申告のインセンティブを与えて、カルテルや入札談合の発見・解明を容易にし、競争秩序を早期に回復することを目的としています。
公正取引委員会が調査を開始する前に他の違反事業者よりも早期に報告すれば、課徴金の減額率が大きくなる仕組みとなっており、公正取引委員会の調査開始日前と調査開始日以後で合わせて最大5社(ただし、調査開始日以後は最大3社)に適用されます。具体的には、この記事の画像の表にあるとおりです。
調査開始日前の申請の4番目以降及び調査開始日以後の申請の場合は、公正取引委員会が把握していない事実に係る報告・資料の提出が必要となります。なお、公正取引委員会は、調査開始前に最初に申請した事業者に対しては刑事告発を行わない方針としています」
それでは今回のケースではどうなのか。
「仮に公正取引委員会の調査開始日前に大林組が1番目で自主申告していた場合、同社は課徴金が免除され、刑事告発されることもありません。ただし、公正取引委員会に報告又は提出した資料に虚偽の内容が含まれていたり、公正取引委員会からの追加報告要求に応じない等の場合には、減免申請が失格となり、課徴金免除等を受けられないことがありえます。
他方で、大林組以外の事業者は、公正取引委員会の調査開始日前に自主申告していなかった場合、課徴金の減額を受けるためには、調査開始日以後の自主申告になりますので、単に自主申告するだけでは足りず、公正取引委員会が把握していない事実に係る報告や資料の提出を行う必要があります。したがって、詳細な社内調査を行いつつ、速やかに自主申告しなければなりません」
「なお、課徴金減免申請を適切に行わなかったことにより当該企業が課徴金の支払義務を負ってしまった場合、当該企業の役員に善管注意義務違反があったとして、株主代表訴訟で責任追及される可能性があります。課徴金減免申請は、企業不祥事の事後対応における役員の責任問題とも関わるので、迅速かつ適切な対応が求められます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山田 晃久(やまだ・あきひさ)弁護士
独禁法・下請法その他企業法務全般、組織再編・M&A、金融法務、事業再生・倒産を取り扱う。
事務所名:弁護士法人中央総合法律事務所
事務所URL:http://www.clo.jp/