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zoppが語る、これからの作詞家像「キャッチコピー的な歌詞も書ける人が台頭する」

2017年12月27日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家や小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまでの本連載では、ヒット曲を生み出した名作詞家が紡いだ歌詞や、“比喩表現”、英詞と日本詞、歌詞の“物語性”、“ワードアドバイザー”としての役割などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらってきた。第15回目となる今回は、2017年の音楽シーンを振り返りながら、これからの作詞家に求められることについて教えてもらった。(編集部)


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■「“憧れる存在”というのが一つのキーワードになっていく」
ーー今年は昨年に比べ、ヒット曲に恵まれなかったという声も聞きますが、2017年を振り返ってみていかがでしょう。


zopp:今年は過渡期のような印象で、ここからどのメディアが台頭してトレンドを作っていくのか、というところ。ヒット曲というと、DAOKOさんと米津玄師さんの「打上花火」ですかね。彼らのように色々な人とフィーチャリングして、お互いに名前をあげていく手法は海外のトラックメイカーっぽいですよね。米津さんが去年、中田ヤスタカさんとコラボした「NANIMONO」(映画『何者』主題歌)も、クロスメディアして盛り上がっていく感じがありました。過去、Dragon AshのKjくんがいわゆるヒップホップとJ-POPを繋げた始祖のような存在でしたが、彼のようなカリスマ的存在になりつつあるのが米津さんのように思います。


ーー2018年はどんなアーティストが人気になりそうですか。


zopp:個人的には男性アイドル戦国時代に突入していくんだろうなと予想しています。ボイメン(BOYS AND MEN)や、僕が何曲か歌詞を書いている超特急も人気が出ているので、次世代男性アイドルの筆頭になるかもしれません。どちらのグループのメンバーも最近はドラマや映画に出演していますが、まだ音楽面ではきちんと評価されていない。新しい音楽のトレンドを取り入れている超特急と、和や歌謡曲を大事にしているボイメンがどうブレイクするのかが今後大事になってくるでしょうね。


ーーボーイズグループが台頭することで、歌詞の面でもトレンドに変化があるんでしょうか。


zopp:彼らのようなグループが盛り上がっていくと、季節を意識した歌詞やオーディエンスに寄り添った歌詞が増えてくると思います。あとはK-POPグループにも注目しています。僕の後輩もK-POPアーティストに歌詞を書いているんですが、ダンスや歌のレベルが本当に高くて。最近だと東方神起が復活したり、TWICEが紅白に出たり、BTS(防弾少年団)も人気です。TWICEもBTSも、グループアイドルの良さを明確に打ち出していて面白いですよね。


ーー韓国のオーディション番組の盛り上がりも凄いです。一般人をアイドルにするというシンデレラストーリーを楽しむ日本とは異なり、技術力で徹底的にバトルして選ばれたメンバーをデビューさせるというような内容で。


zopp:だからファンの層も少し違うんです。もちろんどちらも好きな人もいると思いますが、K-POPのファンは彼らに憧れているのに対して、日本のアイドルファンは憧れというよりは共感に近い感情で。そう考えると今後、“憧れる存在”というのが一つのキーワードになっていくのではないのかなと思います。だからきっと、歌詞もオーディエンスに寄り添う歌と、オーディエンスを引っ張る歌詞が今後はっきりと分かれていく。


■「サビは1行1行コピーライトっぽく」
ーーK-POPの場合、歌詞はリズムを重視したものになりますよね。


zopp:彼らにとって歌詞は凝った比喩表現や物語よりも、音やリズムをいかに殺さない言葉を乗せるのかが重要なんですけど、実はそれってすごく難しいことで。以前は作詞で物語を作ることを求められがちでしたが、最近は1行1行にキラーワードを入れてほしいというオーダーも多い。その辺のトレンドはちょっと変わってきたと思います。


ーーたしかに日本のポップシーンにおいても、「FLY」(向井太一)に阿部広太郎さんが参加したり、コピーライターが歌詞を書くことも増えていますね。


zopp:これまでは阿久悠さんや、秋元康さん、宮藤官九郎さんをはじめとした放送作家や脚本家が歌詞を書いて、物語を大事にする作詞をして人気を博していた。今後はセンテンスを重視するようになっていって、阿部さんのようなコピーライターが作詞家として活躍することも増えていきそうです。


ーー職業作家の方たちは物語を書く能力と、インパクトのある言葉を書く能力の両方を求められていくんですね。


zopp:最近はミュージックビデオから楽曲がバズるケースも多いので、いかに映像に寄り添えるのか、リズムを生かせるのかを重視した言葉選びが求められる。僕の場合は歌詞を書くと自然と物語っぽくなってしまうので、そこを生かしながらもサビは1行1行コピーライトっぽくしていくようにしないとな、と思っています。


ーーzoppさんが作詞した「青春アミーゴ」の歌詞はもちろん物語として成立してるんですけど、サビだけ切り取ってもインパクトがありますよね。


zopp:当時は意識していませんでしたが、自然とそうなっていました。作詞家としてはその辺りをもっと鍛えていく必要があるでしょうし、今後台頭してくる次世代の作詞家はキャッチコピー的な歌詞も書ける人だと思います。
(取材・文=リアルサウンド編集部)