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2017年ブレイク俳優・鈴木伸之の強み 『あなそれ』から『リベンジgirl』まで、幅広い役柄を読む

2017年12月25日 17:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 藤原紀香と共演したドラマ『眠れぬ真珠~まだ恋してもいいですか?~』(読売テレビ)のきわどい場面写真が大きな話題になっている劇団EXILEの鈴木伸之。今年は、4月クールで放送された連続ドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS)でクズ男を演じると、映画『東京喰種トーキョーグール』では、喰種排除にまい進する正義感の強い男、『今からあなたを脅迫します』(日本テレビ)では、癒し系男子、そして間もなく公開を迎える映画『リベンジgirl』ではクールな政治家秘書を好演するなど、さまざまな役柄に挑んでいる。


参考:劇団EXILE 鈴木伸之、体育会系男子の魅力!


 青柳翔や町田啓太、小野塚勇人、佐藤寛太ら、グル―プを超えて活躍している劇団EXILEのメンバーのなかでも、今年、非常に知名度を上げたのが、鈴木伸之だろう。今年だけで3本のドラマ、4本の映画に出演。185センチの長身に爽やかな笑顔は、非常にカメラ映えしており、テレビやスクリーンに映し出されると存在感は抜群だ。


 鈴木といえば、『HiGH&LOW』シリーズでも、山王連合会のヤマトとして存在感を表しているように、屈強かつ男気あるイメージが挙げられる。『HiGH&LOW』での鈴木は、まさにそんなパブリックイメージ通り、曲がったことはせず一本筋を通す男を、ストレートに表現した。オールバック風に髪を後ろに流しバイクにまたがる姿は、多くの女性ファンを虜にした。


 こうした硬派なイメージと真逆な一面を見せたのがドラマ『あなたのことはそれほど』で演じた有島光軌だ。波瑠扮するヒロイン・美都の小~中学校時代の同級生で、妻子がありながら美都と不倫関係に陥る。美都と有島の、あまりにも都合よく不倫を正当化(!?)する姿に、視聴者からは大きな反響が巻き起こった本作だが、鈴木は非常に潔く“クズ男”を演じ、ある意味でなんともいえない爽快感を視聴者に植えつけた。このような役に対して鈴木自身も「もちろん葛藤はあった」と語っていたが、一方で「反響が大きければ大きいほどやりがいはありますし、どうせだったら徹底的なクズをしっかり演じ切りたい」と自身の演技の引き出しを増やすことに徹したという。


 さらに『東京喰種トーキョーグール』では、喰種という存在に対して、とにかく駆逐すべき敵という意志を持ち立ち向かうCCG(喰種対策局)捜査官・亜門という役柄を、『HiGH&LOW』で演じたような一本気で熱い面を出しつつも、宗教的な背景のもと育ったというバックボーンを考慮した繊細な面をのぞかせるという役作りで挑んだ。鈴木はこの作品の役作りのために、「書いてあることはさっぱりわかりませんでしたが」と苦笑いを浮かべつつも、新約聖書と旧約聖書を読んで雰囲気をつかもうとしたという。こうした細やかな役への取り組みにより、キャラクターが立体的に表現されるのだろう。劇中、鈴木が演じた亜門は、屈強さと繊細さが入り混じったなんともいえない情緒的な人物になっていた。まさに硬軟入り混じったハイブリッド型キャラクターを見事に演じていた。


 ハイブリッド型といえば、先日まで放送されていた連続ドラマ『今からあなたを脅迫します』の京田カオル役も、まさに好青年⇔狂気という二面性を持った役柄だった。カオルは前半、武井咲演じるお嬢さま・澪のアパートの隣に引っ越してきた癒し系の好青年だったが、途中から豹変。ネット上では「白カオルから黒カオルになった!」と大きな話題になった。こうした同一作品のなかで、徐々に二面性が現れてくるというキャラクターは、伏線を張りすぎるとわざとらしくなり、あまりに突拍子がなく豹変しても、白けてしまうことがある。そんななか、鈴木はカオルという役の本質をしっかりつかみ、ぶれない演技を披露した。 


 今年最後を飾る映画『リベンジgirl』では、桐谷美玲演じる才色兼備ながらも性格ブスのヒロイン・宝石美輝の選挙戦を手伝う元敏腕政治家秘書・門脇に扮する。不愛想で毒舌ながらも、男気があり誠実という、まさに今年出演した作品の集大成ともいえる、さまざまな側面を持つ男だ。


 鈴木は以前のインタビューで「人間というのはさまざまな側面を持っているのが普通。ドラマでは特徴的な部分を強調するわけなのですが、優しいキャラクターでも悪い部分は必ずあると思う」と語っていた。硬派で表情を崩さない亜門でも、大笑いした経験はあるだろうし、クズな有島だって、優しい部分を持っているはずだ、という解釈だ。演じる役柄に対して、台本に掛かれていない部分にまで思いを馳せるというアプローチの仕方を象徴している発言だろう。


 このようにキャラクターを立体的に捉えることが自然にできるからこそ、どんな役にでもスムーズに対応していくのではないだろうか。持ち前のルックスに加え、役柄への理解力の高さ……鈴木が各方面から引っ張りだこになるのは頷ける。『桐島、部活やめるってよ』(2012年)、『ルーズヴェルト・ゲーム』(2014年/TBS)、『水球ヤンキース』(2014年/フジテレビ)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015年)、『花燃ゆ』(2015年/NHK総合)、『オオカミ少女と黒王子』(2016年)など、振り返れば多くの人気作に足跡を残してきた。「みなさんに面白いな、また見ようと思ってもらえる俳優になりたい」と語っていた鈴木。まさにその目標が現実になっているような活躍ぶりだ。(磯部正和)