「恋愛資本主義」の打倒を掲げる団体、革命的非モテ同盟が12月24日、毎年恒例の「クリスマス粉砕デモ」を開催した。参加者ら約20人が約40分に渡り、渋谷周辺を練り歩いた。ニコニコ生中継での放送も行われ、1万2000人の視聴者が彼らのデモを見守った。
デモに先立ち、革命評議会議長のマーク・ウォーター氏(42)は「すべての失恋された方に加え、クリスマスがあることで賃労働を強いられている労働者はたくさんいる。そういった方々の解放も訴えていきたい」と、今年のデモの目的を説明した。
世界の諸問題を見て改めて「非モテが受難の世界を生きていると感じた」と主催者
マーク氏は今年8月、「ピースボート」に乗って世界を回り、シンガポールやイギリスなど、各国の諸問題について考えたという。しかし、
「船内に300人の若者がいるのに、モテない。船内で数十組のカップルが誕生している状況下、船の中で好きになった女の子に振られてしまい、階級としての非モテ、フラレタリアートに属することを改めて感じた」
と、自身の苦い思い出を振り返る。
「世界には様々な問題があり、それをくまなく体験してきたが、非モテが受難の世界を生きていると痛感した。船を降り、改めてその苦難を伝えていきたいと考えている」
と語ると、周囲からは「その通り!」「異議なし!」の声と拍手が起こった。
デモは代々木公園を出発して渋谷駅を経由し、神宮通公園を目指した。おなじみとなった「リア充は爆発しろ」「カップルは自己批判せよ」のシュプレヒコールに加え、今年は「リクルートは結婚を煽るのをやめろ」「電通は非モテの敵だ」などの声も上がっていた。
道行く人たちは、怪訝な顔の人や二度見する人もいるが、多くは思いのほか温かな眼差しで彼らを見守っていた。女性とデート中の20代男性は「楽しそうですね。彼らは彼らなりの楽しみ方があっていいんじゃないでしょうか」と笑い、30代の男性も
「ネットで知って見に来ました。この発想は無かった。自分は今結婚しているが、モテない時期も経験しているのでよく分かります」
と感想を述べる。「楽しそうですね。あの中でカップルが出来てもおかしくなさそうですけどね」とも言っていた。
中学1年生の男の子は、沿道からデモの様子をガラケーで熱心に撮影していた。同団体が昨年行ったハロウィン粉砕イベントから興味を持ち、実際に見に来たのだという。デモの主張については「納得できますね。これだけカップルがいる中で、こういう非モテの人達もいるんだなと」と、憐れんだ。
笑顔で手を振っていた中年女性は「あれは芸術だと思う」と感心していた。さすがに開催10回目ともあって、街の人も驚かなくなってきたのかもしれない。
「童貞も非モテも生きやすい多様な社会を目指す」
終着点の神宮通公園に着き、マーク氏が「非常に有意義な粉砕が出来た」と、デモの成功を宣言した。今回のデモでは非モテの連帯を強めるだけでなく、サンタコスを強いられる労働者の解放も目的に掲げていたが、
「資本者側から、サンタコスでクリスマスに働かされるという極悪なブラック労働を強いられている。クリスマスを粉砕することで、彼らが真っ当な労働に従事できるよう今後も戦っていく」
と、話していた。
マーク氏に、昨年も粉砕宣言をしていたのに何故今年も粉砕デモを行ったのかについて聞くと「平和は恒久的な維持努力が必要。クリスマス粉砕も同様だ」と説明していた。最近よく言われる「若者のクリスマス離れ」については、
「意外と離れていない気がする。未だにクリスマスは恋愛資本主義によって先導されていて、若者はそれに取りこまれている。若者が離れて行っていると言っている人は、そういった警笛を鳴らすことで『我々は若者の味方としてマーケットを取れる』と言っているだけ。大資本に巻き込まれてしまうことは危険だ」
と否定的な考えを示した。
記者からは、現在一部で波紋を呼んでいる「童貞を揶揄するのはセクハラか」という問題に関する質問も飛んだ。革非同のデモでも、非モテをネタにしているかのようなシュプレヒコールを叫んでいるが、
「必ずしもみんなが童貞を卒業しなければならないという強迫観念にとらわれず、童貞も非モテも生きやすい多様な社会を目指している。童貞いじりはしない。我々は社会活動として行っている」
という認識を示した。ちなみに、マーク氏のクリスマスの過ごし方について聞くと「今日はデモだけ。明日は友達と過ごします」とのことだった。