2017年12月24日 08:42 弁護士ドットコム
今年10月に発覚した神奈川県座間市のアパートから9人の遺体が見つかった事件は非常に衝撃的なものでした。その残忍な手口が多く報道されましたが、事件発覚からしばらくすると、「このマンションの住人や管理人は慰謝料を請求できるのか?」という点に注目が集まりました。
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いわゆる「事故物件」というものです。よく聞く言葉ではありますが、「事故物件」をめぐって、何が起きるのかをご存知ですか。12月25日深夜24時28分からテレビ東京系で放送される「それってタブーですか?」では、事故物件について注目します。
「事故物件」とは、不動産取引や賃貸借契約の対象となる土地や建物などで、何らかの原因で前居住者が死亡した経歴のあるものなどのことです。「何らかの原因」とされるものには、自殺や殺人、事故死などがあげられます。こうした事故物件を売却する場合や貸す場合、売主や賃貸人(家主)、仲介業者は、購入者や賃借人に対して、どのような義務を負うでしょうか。
知っておきたい基本的な知識について、「それってタブーですか?」に出演・解説する田上嘉一弁護士(弁護士ドットコム)に聞きました。
不動産を売買したり賃貸したりする場合、雨漏りしたり、壁が崩れていたりしたら、それは物件の瑕疵(法律上、何らかの欠点や欠陥があるもの)として取り扱われます。同様に、自殺や殺人があったような物件については、物理的には問題がなくても、心理的嫌悪感を感じるものですので、通常であれば、このような物件の本来の住み心地の良さといったような性質を欠いているといえる場合があります。このような場合、物件に「心理的瑕疵」があるというわけです。物件に心理的瑕疵があると認められれば、買主や賃借人は、取引自体を解除したり、損害賠償を求めたりすることができます。
もっとも、物件で殺人や自殺があったからといって必ず心理的瑕疵が認められるわけではありません。心理的瑕疵の有無の判断については、明確な基準があるわけではなく、個々の具体的なケースで判断されます。裁判では、事件の重大性や経過年数、買主・借主の使用目的、大都市か農村地帯か、近隣住民に事件の記憶が残っているかどうか等を総合的に考慮し、判断がなされます。
不動産業者は、宅地や建物を売買・賃貸する契約の仲介などを行う場合は、当該物件の性質などについて、相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項については、事実を告げなければなりません(宅地建物取引業法47条)。
したがって、物件に心理的瑕疵があるのに、そのことを告げなかったり、嘘をついたりする場合は、法律違反となります。
実際に、「心理的瑕疵」に当たるであろう事柄について、不動産業者はきちんと告知しているのかと言うと、必ずしもそうも言えないのが実態です。
告知義務があるのに適切にこれを果たさなかった場合は、損害賠償を求められ、場合によっては業務停止などの措置を受けることもあります。
不動産業者は、何よりも信頼が第一です。仮に相手を騙して不動産を購入等させて一時の利益を得たとしても、その結果生じるリスクの高さを考えれば、見合わないといえるでしょう。
このように告知義務が発生するかは、案件によって変わってきます。
それでは、自殺のあった物件の隣の部屋には告知義務は発生するのでしょうか? マンションの廊下など、共用部で事件があった場合はどうなのでしょうか? さまざまな疑問が浮かんできます。くわしくは、番組をご覧ください。
【番組情報】
放送日:12月25日(月)夜24時28分ー25時30分
番組名:「それってタブーですか?」http://www.tv-tokyo.co.jp/sorettetaboodesuka/
放送:テレビ東京ほか
出演者:田原総一朗、小島瑠璃子、谷まりあ、田上嘉一(弁護士ドットコム) ほか
番組概要:「もっと攻めた番組を見たい」という視聴者の声にお応えして去年、制作・放送した報道SP『それってタブーですか?』が復活!12月25日(月)の深夜、今回も知っているようで知らない街のタブーに記者が直撃します!テーマは(1)「電車内でよく見る謎の広告…歌って踊れる教祖って!?」(2)「不動産のタブー!?『事故物件』を追跡!」(3)「あのスキャンダルの裏側…『デリヘル』って?」など、乞うご期待!
(弁護士ドットコムニュース)