F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。2017年シーズンを戦った20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出する。
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☆1 パスカル・ウェーレイン
開幕時点のレギュラーで、全戦参加していないのは5人。そのひとりが1月マイアミで行われた『レース・オブ・チャンピオンズ』で負傷した彼だ。事故直後は問題ないと思われたが開幕戦初日走行で胸椎損傷が発覚、急遽アントニオ・ジョビナッツィと交代。復帰した3戦目スペインGPの8位入賞は“ベスト・レース”。病み上がりながら戦闘力に劣るザウバーで計5ポイント、チームメイトよりいい仕事をやり遂げても来季契約は無い。あの事故が悔やまれる。
☆1 カルロス・サインツJr.
高速コーナーでの思い切りがいい。闘争心(メンタル)が若手のなかではピカイチ、そのDNAはWRC王者の父親から受け継いだもの。テクニカル・フィードバックもたしか、それがルノー移籍初戦の7位で証明された。
☆2 エステバン・オコン
21歳フランス人は、足は細いが神経は図太い。コース上で並んでも「引かない」走りをアピール、それでいて新人・27戦完走記録、レーシング・センスがある。昨年マノーで走った後半戦のコースでは予選もペレスに先行、タイヤ・マネージメントが進歩したとチームも高評価。
☆2 ニコ・ヒュルケンベルグ
ジョリオン・パーマーとサインツ相手に予選は19勝1敗。とくにシルバーストーンでの6位、100%アタック能力は見事だった。ルノーワークス1年目のエースとして孤軍奮闘、アドバイザーのアラン・プロストも絶賛。初表彰台はキャリア8年目となる2018年シーズン序盤か?
☆2 キミ・ライコネン
獲得ポイントでは12年207点に迫る205点、2016年の186点を上回っている。9年ぶりPPのモナコGP、P2のイギリスGPとマレーシアGP、マシンと一体化したときの速さはけして鈍くはない。なによりもセバスチャン・ベッテルとのコンビネーションにおいてチームに貢献、兄貴分的な役割で彼を駆り立てる。冷静に見回すなら2018年契約で他の選択肢はなく、いまチームの和を保てるのはキミしかいない。
☆3 バルテリ・ボッタス
いきなり初めての家に招かれ、自分の居場所を見つけるのはたやすくはない。メルセデス新人の気苦労は相当なものだったはずだ。予選“7勝13敗”、コテンパンにやられたかに見えるが2年前のニコ・ロズベルグも“7勝12敗”で大差ない。史上最高『PPキング』に挑んだ“チーム・ルーキー”としては健闘と言えるだろう。ポップスター気取りのルイス・ハミルトンが太陽光なら、北欧育ちの彼は月光のよう……。
☆3 ダニエル・リカルド
イギリスGPでオーバーテイク13回、17年最多追い抜き王は合計43回も。なかでもアゼルバイジャンGPで魅せた“3台抜き”がハイライト・シーン。表彰台の“シューイ飲み”ばかりか、見せ場をつくるキャラクターはいまのF1で貴重なタレント。
☆3 フェルナンド・アロンソ
ブルーフラッグを振られたときには周回遅れとして潔く譲る。だが競り合っているときには徹底抗戦する。まるでふたりのアロンソを見るような波乱万丈のレースが続いた。しばしば無線で悲痛な叫び声、ストレート途中であっさりパスされるのはレーサーにとって屈辱以外のなにものでもない。それはチームもPUサプライヤーも分かっている。分からずに騒ぎ立てたのは……?
☆4 セバスチャン・ベッテル
シーズン通じて感じたのは、金曜にイニシャル・セッティングが外れていてもそれを修正し、立て直していたこと。レッドブル時代にはあまりそういう印象はない。メルセデスに劣る部分があっても懸命に限界まで攻め込み、昨年よりフリー走行でスピンする回数が増えた。『努力するセブ』、来年にはもう200戦を超える。
☆4 ルイス・ハミルトン
2017年後半のW08は“ルイス・オーダーメイド”といっていいマシンに変化していった。前後のスライド・アングルがステアする手の角度とシンクロしていて、意のままにコーナーをクリア。勝つたびにインタビューで技術陣に感謝、まわりに気配りをする四冠王。
☆5 マックス・フェルスタッペン
満点星をマックスに――。四冠王二人の対決にあちこちでからみあい、タイトル・マッチを“攪乱”。なにも怖れず立ち向かうレーシング・スピリットこそ、複雑化・政治化したいまどきのF1に刺激を与えた(本人はそう思っていなくとも)。もしこのオランダ人がいなかったら、17年は単調な筋書きで結末を迎えたことだろう。ハミルトン以上の☆をちりばめたい。