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accessが語る、チャレンジし続けた25年と音楽への思い 「ラブ&ピースを共感したかった」

2017年12月22日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 1992年のメジャーデビュー以降、数々のヒットを解き放ってきたエレクトロニックダンスミュージックユニット、access。今年で25周年を迎えながらも、最先端テクノロジーを積極的に取り入れ、日本独自の進化を感じられるシンセポップを奏で続けている彼ら。12月20日には、ツアーで先行披露した楽曲を主に収録した、26年目のスタートを告げる5年ぶり8枚目のアルバム作品『Heart Mining』をリリースした。


 ニューウェーブでハイエナジーな「Crack Boy」。ドラムンベース調ながらもシティ感溢れる華麗な「Vertical Innocence (Heart Mining Ver.)」。名曲バラード「Inside me, Inside you」。泣きのメロディアスな展開が90年代へ舞い戻る「Tragedy」。新境地な「Discover Borderless」でのデジタルながらも軽やかなロックセンス。ピュアテクノな「Knock beautiful smile (Heart Mining Ver.)」でのクールで美しい展開。エディット感がポップな「Friend Mining」。メッセージ性を感じるSFチューン「Heart Mining」。極上アッパーな「永遠dive (Heart Mining Ver.)」という攻めまくりの1枚。チャレンジし続けるキーボーディスト浅倉大介とボーカリスト貴水博之のゴールデンコンビに、この四半世紀と最新作について聞いてみた。(ふくりゅう)


■「新しいことをやろうと命がけで作ってました」(貴水)


――最新アルバム『Heart Mining』のリリースでaccessの26年目がスタートしました。それこそ結成当時は珍しかったですけど、トラックメーカーとボーカリストの2人組スタイルって、この25年間で増えましたよね? 


浅倉:当時はまだバンド全盛で、打ち込みがそんなになかったですからね。トラックメーカーがイニシアチブを取るスタイルは珍しかったですね。


貴水:デビューした当時はまだ“アクセス”って言葉自体が使われてなかったんですよ。でも、今では“アクセス”って言葉無しではネット文化は語れない世の中となりました。そういった意味では、僕らは音楽を通じてファンの方と“ツーウェイなコミュニケーションで音楽を作っていけたらいいね”ってところからスタートしたんですけど。25年経った今も変わらずに応援してくれてるファンの方がいることに感謝ですね。しかも最近僕らのことを知って、ファンになってくれた人も多くて。そんな中、5年ぶりにアルバムを出せることが嬉しいです。


――デビューライブとなった、25年前の原宿RUIDOでのライブを覚えてますか?


浅倉:ちょうどこの前、舞浜でやったアニバーサリーライブで、25年前にやったRUIDOの映像を使ったんです。バックステージ映像まであって(苦笑)。それこそ、まだ右も左もわからない状態での初ライブでした。しかも、映像を見ているとステージ後ろにシンセを立てかけてあって。ステージの舞台袖にはシンセ用の機材が全部置き切らないぐらいあって。あの頃ってまだ、ハードディスクが無かったので、全部本体をMIDIで鳴らしてたんですよ。ステージの後ろにSYがあったり。


――今から振り返るとすごい環境ですよね。ある種の力技を、しかもライブハウスで。


浅倉:チャレンジャーですよね。MIDIで全音源を鳴らすなんて。でも、そういうのを恐れずにやってました。フレッシュな気持ちを思い出しましたね。


貴水:フレッシュなんですけど恥ずかしい気持ちになりましたよ。まず第一に当時の僕はシャツをパンツにインしてましたから(笑)。でも、時代が巡って逆に今は流行ってますね(笑)。あの映像をみて、NO.1を目指したいっていう気持ちを持ち続けていたことを思い出しました。会場自体は数百人しか入らない小さな小屋だったんですけど、花道を作ったり、未来を見つめながら頑張っていたなって。いろんな意味で、スタート地点に戻れた瞬間でした。


――当時、10年後、そして20年後は、どんな風になっているかなんて話し合ったりしましたか?


浅倉:いえいえ、目の前のことでいっぱいいっぱいでしたから。がむしゃらに表現し続けて、それこそリミックスアルバムを出したり、3部作を作ってみたり。面白そうだねって思ってもらえるような仕掛けをたくさんやってきました。accessにしかできないことを、次から次へとやり続けてきました。途中にお休みも挟みましたけど。


――それこそ、accessって実は楽曲構成やセンスなど、日本のアニメソングの制作スタイルに影響を与えていますよね。。今や、アニメソングは海外へ誇るカルチャーとなりました。


浅倉:ありがたいことに「accessを聴いてシンセ始めたんです!」っていう、売れっ子のクリエイターに出会えることが多くて。嬉しいことだし、責任も感じなきゃいけないなって。今回、5年ぶりにアルバムを作るので、そんな意味でもプレッシャーになってます。いろんな曲を聴いていると曲調でわかりますよね。イントロの音だったり、サビに入る前の展開のつけ方だったり。たぶんaccess以前は無かったと思うんですよ。必ず大どんでん返しな展開を1回サビに入れるとか。命がけで作ってましたからね。他の人がやらない新しいことをやろうって。


――そして、デジタルサウンドに貴水さんのハイトーンボイスが絡むという斬新さ。


浅倉:あの素晴らしい声があってのaccessだから。


貴水:素晴らしいサウンドがあってのaccessだよ。


浅倉:あれだけシンセが鳴ってる中でも聴こえてくる歌、声を持ってる人に出会えたというのは、人生の中で大きなことでした。


――最初出会った時の印象はどんな感じでしたか?


浅倉:全然、正反対のところで生きてる人だなっていう印象でした。自分は絶対そこで遊ばないだろうなっていうところで、遊んでいる人なんだろうなっていう。


貴水:僕は、夜遊びばっかりしてましたからね(苦笑)。


浅倉:その頃、僕はディズニーランドに行きまくってた頃だから(苦笑)。


貴水:当時は、踊るクラブに行きまくってました。夢と魔法の反対側だね(笑)。


浅倉:それぞれのテリトリーが異なるというか、考え方や価値観が違うので、いい意味で重ならないからぶつからないですね。デビュー時からそうだし、今回の『Heart Mining』にも通じるんですけど、こう投げたらこう返ってきたかっていう驚きを今でも感じられるんです。大変ありがたいです。


■「本当の意味で、アルバムの価値を感じた」(浅倉)


――最新アルバム『Heart Mining』を聞かせていただいたんですけど、極めてaccessらしい、しかもフレッシュな作品でした。


浅倉:本当の意味で、アルバムの価値を感じたのが本作なんですよ。なんていうんだろう……一般的な形でいうと、アルバムを作って、さぁライブやってっていう流れになりますけど、今回は25周年イヤーの中で、春と秋にライブツアーをやって、途中ベストアルバムを出して、その集大成というか、いま感じている音を残しておきたい気持ちでアルバムを作ったんです。そんな意味では過去も入ってるし、今の瞬間もある。これからのaccessの未来を感じられる瞬間も切り取ってアルバムに残せました。そんな部分では、長く活動をしてますけど新鮮な気持ちで取り組めましたね。


貴水:音楽って基本的にラブ&ピースが大事だと思っていて。そんな部分も臆することなくみんなと共感したかったんです。アルバムでは、エッセンスとして不透明な未来への不安だったり、不穏な空気も描いてます。それを全部受け止めたうえで一歩でも1㎜でも前に進んでいけるような、一緒に歩んでいけるようなアルバムにしたかったんです。そんなところを感じていただければ嬉しいですね。


――今回、アルバムを作るにあたってテーマやキーワードはありましたか?


浅倉:アルバムタイトル『Heart Mining』をいち早く決めました。最新のキーワードと相反する言葉を組み合わせた造語にしたかったんです。なので“マイニングとハート”。前にも、CDが配信に移り変わるタイミングで作ったアルバムのタイトルが『Rippin’ GHOST』だったり、趣味が多彩化してクラスタ化される様を描いたアルバムが『Secret Cluster』だったり。今回、僕の中で“マイニング”って言葉が新しいと思ったんですよ。IT業界でも、“マイニング”って言葉はビッグデータ時代に重要性が高いです。それこそビットコインのことについて調べようとすると、マイニングっていう言葉がでてくるんですよ。採掘する/ 発掘するっていうIT用語であり、そこに心や精神の部分を司る“ハート”のイメージをかけ合わせて世界観を創り上げたかったんです。


貴水:そうだね。


浅倉:人と人との繋がりも今の時代、リアルな繋がりだけじゃなくてネットを介してのアクセスで繋がる人も多くて。いろんな繋がりがあると思うんです。そんな中、心の持ち方や精神性などと一緒に作品としてパックできたらいいなって思ったんです。


――『Heart Mining』って、まさしくアクセスするって感じですよね。


浅倉:accessとして今の時代の音を鳴らしたかったんですよ。


――今回のアルバムで貴水さんが手ごたえを感じた曲はどれでした?


貴水:「Heart Mining」っていうアルバムタイトル曲は大事かな。accessは煌びやかな世界を表現していきたいんですけど、そんな中で、これからの現実の未来を見据えた不安感や不安な空気だとか、実は、結構シビアに歌詞を書いているんです。それはリスナー側の日常に置き換えてもらってもいいですし。ある意味、問題提起をしてます。それでもノリノリなビートなのは、accessだからですよね。


浅倉:本当に、どの曲も思い入れは大きいよね。


――「Heart Mining」の歌詞で投げかけられてましたが、今の世の中、SFとリアルが混在した時代になってきてます。そんな中、「Friend Mining」という曲がaccessにおいて、レプリカントっぽいというか新鮮さを感じました。


浅倉:パッと聴きは「アンプラグド系の曲もあるんだ!」って感じるかもしれません。コンピューター上で作られたギターのカッティングに歌が乗って、そこにハーモニーをいろいろ付けています。当初、こんな和声のコーラスでとスタジオに持っていったら、音源に入っていた無機的な声が面白いってなって。それは、5年前にサンプリングしたHIROの声だったんです。ある種ボーカロイド状態? 


貴水:僕もコーラスを重ねずにすむし(笑)。


浅倉:ガイド用に作ったトラックが面白かったから、異質な世界観になりましたね。ふっと気をぬける曲なんです。アルバムでは異彩を放ってるかもしれませんね。


――あと、僕は「Discover Borderless」という曲が好きなんです。この曲のリズムの展開が面白いなと。どのように生まれたんですか?


浅倉:嬉しいなぁ。やっとこの曲のリズムをわかってくれる人に出会えた。


貴水:僕も好きだよ、この曲。最終的な形になるまで、こんな仕上がりになるとは思わなかったですね。


浅倉:制作途中に、1回ツアーで演奏したんですよ。その時はすごいベーシックな馴染みのあるリズムで。もちろん、ライブでテンションが上がるチューンであることは確かなんですが、いかにドラム以外の楽器でグルーヴを作り出せるかにこだわりました。スネアも鳴ってなきゃ、ハットもシンバルも鳴ってない。キックが1拍目と3拍目に鳴ってるだけで、あとはブラシのスネアだけでグルーヴを作っているんです。自分の中でもトライだったし、大人のライブ感ですね。


――途中、ドラマティックにシンセソロが決まるところが好きで。


浅倉:嬉しいです。それこそ「~に似てるね」って言われるのが僕は1番嫌で(苦笑)。いつも新鮮な気持ちで受け取って欲しいので、いろんなチャレンジをしています。


■「“ときめいた気持ち”をレコーディングしていく」(浅倉)


――浅倉さんの中で、この楽曲の“ここ”をよりチェックして欲しいなというナンバーは?


浅倉:25年間やってきた過去と現在と未来。中でも、今いる状況のaccessを表したアルバムにしたかったんです。今回、『FAST ACCESS』のミックスを手がけてくれたエンジニアも参加してるんですよ。僕がミックスをやっている曲もあれば、GARIのYOW-ROW君、彼のセンスがすごい好きで、仲良しなこともあるので、ここは大胆にリミックスではなくミックスをお願いしました。時代に合わせたコンプな質感とか、これからの未来が見えるトライをしてみたかったんですね。


――ああ、過去と現在と未来の質感がミックスで表現されているのですね。


浅倉:そう、一度トライしてみたかったんです。「Crack Boy」や「Heart Mining」は、YOW-ROW君ミックス。ある程度はもう、音は作りこんでいたんですけど質感とかキャラクターってあるじゃないですか? そんな意味で、過去・現在・未来の視点で、音作りをいろいろトライしました。あと、聴きどころのひとつとしては4曲目の「Inside me, Inside you」ですね。これは春のツアーの新潟振替公演の時にピアノと歌だけで演奏しました。まだデモで、歌詞も仮で。その後、秋のツアーではバンドをいれて、ある程度打ち込んだものを披露しました。そして、アルバムでは、全部作り直しています。ベースを生音にしたいなとこだわって、ちょうど『堂本兄弟』の年末収録があったので、吉田建さんに「access 25周年の大事なバラード曲があるんですけど」ってお願いしたら「もちろん弾く!」って言ってくださって。僕の打ち込みがある上にHIROのハイトーンボイスがスーって乗って、建さんがすごいローのレンジでベースで歌ってくれているんです。その絶妙な絡み合いがうまくいったかなと思います。


――accessの作品って、アルバムを聴きこんでると発見がたくさんあって。


浅倉:発掘、マイニングされているわけですね(笑)。


――「Crack Boy」で感じるSF感とか、メロディーがくっきりはっきりしているのもツボで。それこそ、ブロックチェーンみたいな新しい技術にも注目しているんですか?


浅倉:新しいものが出てくると、それをどう音楽に使っていけるんだろうって考えちゃうんですよ。CDはもう時代遅れかもしれなないですけど、25年という歴史を重ねてきた年月を作品に真空パックするにはCDがちょうどよかった。もちろん、配信で曲単位で聞いてくれても嬉しいんですけど、アルバムとしての流れにはこだわりましたね。


――ファンの受け止め方としても楽しいですよね。今年の春と秋で行われたツアーで、いろんなヒントが開示されて、その上でのアルバム作品という。


浅倉:SNS時代、リアルタイムでシェア=共有するのって楽しいじゃないですか? 今回、初回限定盤はトラックにβバージョンの「Inside me, Inside you 20170916」も収録してます。それも、聞き比べながら楽しんでもらえたら嬉しいですね。


――アルバムのリリースで26年目へと突入しますが、2018年のaccessはどんな感じに進化していくのでしょうか?


貴水:これからがまた一層楽しみになったアルバムになりました。音楽に対する気持ちも更に強くなれたかな。『Heart Mining』の楽曲をライブでどんな風に表現していくかは、自分たちでも楽しみですよね。


浅倉:『Heart Mining』に込めた僕らの精神と、応援してくれているファンの皆さんの気持ちを大事にしていきたいです。


――完全に余談ですが、貴水さんが『仮面ライダーエグゼイド』で、敵役の仮面ライダークロノスとして大活躍され、次のシリーズ『仮面ライダービルド』の主題歌では、浅倉さんが小室さんとPANDORAという新ユニットで手がけられたというaccess繋がりは面白かったです。


貴水:長くやってるとそういうこともあるんですね(笑)。それぞれやってきたことを持ち寄れる余裕が、今の僕らにはもありますね。


浅倉:アルバムのマスタリングをバーニー・グランドマン・マスタリングでやったんです。が、スタジオにエンジニアさんのご家族が遊びに来ていて、HIROはその時、劇中のキャラで子どもに接してたんですよ。ちょっと感動したなー。


貴水:いやぁ、ちゃんとしないと裏切っちゃうことになるんで(苦笑)。若干、強面でいきました(笑)。


浅倉:でも、子供が抱きついてきて「夢を与える仕事してるじゃん!」って思いましたよ。


貴水:ははは(笑)。そういえば、この間、大ちゃんから話をもらってNHK Eテレのアニメ『クラシカロイド』に大ちゃんが編曲、僕がボーカルで参加させてもらったんですが、「accessじゃん!」って自分でツッコミ入れたこともありました(笑)。


――なるほど。ソロでもいろんなところで接点が生まれているのですね。accessって常にフレッシュで、半歩先を進んでいるアーティストなので、周年で振り返るというよりもどんどんソロ活動含め、前に進み続けている感じですよね。


浅倉:もうここまでくると、毎年が周年ですよね。ライブを観にきてくれる人がいて、同じ時間を共有して。また、そこで“ときめいた気持ち”をレコーディングしていく。25年前、原宿RUIDOでの最初のライブの時に“ときめいた気持ち”をまだ持ち続けられるって素敵なことですね。皆さんに感謝です。


(取材・文=ふくりゅう:音楽コンシェルジュ)