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TWICEが紅白出場、防弾少年団はMステ進出 K-POP人気の現在

2017年12月22日 11:01  CINRA.NET

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左からBTS(防弾少年団)、TWICE
今年の『NHK紅白歌合戦』に韓国の9人組ガールズグループTWICEが出演する。K-POPのグループが同番組に出演するのは、東方神起や少女時代、KARAが登場した2011年以来、実に6年ぶりである。

また12月22日に放送される『ミュージックステーション スーパーライブ』にはTWICEとBTS(防弾少年団)が出演。こちらも2015年のBoAを除けば、『ミュージックステーション スーパーライブ』にK-POPアーティストが出演するのは2011年以来となる。

日本では、『冬のソナタ』の「ヨン様」ことペ・ヨンジュンら「韓流スター」と呼ばれる俳優たちが人気を博した2004年前後の第1次韓流ブーム、少女時代やKARA、東方神起らK-POPアイドルたちが中心となった2010年前後の第2次韓流ブームを経て、現在はかつての勢いは収束している。ブームの沈静化は日韓の政治的な関係悪化などが要因とされ、韓国ドラマや韓国のアーティストをテレビで見かける機会は大きく減った。

そんな中、『紅白歌合戦』や『ミュージックステーション スーパーライブ』といった年末恒例の大型音楽番組にK-POPのアーティストが6年ぶりに出演する。韓国のアーティストはブームの収束後も東京ドームなどの大きな会場でライブを行ない、日本盤CDをコンスタントにリリースしてチャートの上位に食い込んでいたが、日本のプライムタイムのテレビ番組への出演の道はほとんど閉ざされていた。その扉を開いてみせたTWICEと防弾少年団の活動を軸に、2017年のK-POPアーティストの日本活動、そして来年への展望を考察してみたい。

■TWICEは今年のブレイクアーティスト 「JC・JK流行語大賞」1位

TWICEはK-POP/J-POPの垣根を超えて、今年の日本の音楽シーンにおけるブレイクアーティストのうちの1組だろう。彼女たちは今年6月に『#TWICE』で日本デビューし、翌月に東京体育館で初の単独公演を開催。10月には初の日本オリジナル曲“One More Time”が初週で20.1万枚を売り上げ、オリコンウィークリーチャートで1位を獲得している。

オリコンが実施している「2017ブレイクアーティストランキング」では、米津玄師に次いで2位にランクイン。また日本デビュー決定時には10代に人気の動画アプリ「MixChannel」とコラボしてダンスコンテストを行なうなど若い層にアピール。そうした戦略が功を奏したかのように、今年11月に10代のマーケティング支援を手掛ける株式会社AMFが発表した「JC・JK流行語大賞2017」のヒト部門で、俳優の竹内涼真らを抑えて1位に輝き、若者からの人気の高さを証明した。

■真似したくなる「TT」ポーズでTwitterトレンド入り

代名詞とも言える「TT」ポーズをはじめ、真似したくなるキャッチーな振付がTWICEの持ち味。かつてKARAや少女時代のダンスを小さな子供から大人までが真似していたように、一発で覚えられるポーズや振付があるというのは大衆にアピールできる大きな武器だ。

6月に『ミュージックステーション』に初出演した際も、関ジャニ∞のメンバーなどほかの出演者がカメラに向かって「TT」ポーズを見せて話題を呼び、Twitterのトレンドに「TTポーズ」という言葉が入った。

また韓国人メンバー5人に加え、台湾出身のツウィ、日本出身のサナ、ミナ、モモで構成される多国籍なメンバー編成も彼女たちの特徴の1つ。『紅白』の記者会見でも日本人メンバーのサナやミナがマイクを取り、出場の喜びを語っていた。

『紅白』会見時にTWICEの選出理由を問われた番組プロデューサーは、「TT」ポーズの流行やCDの売上など、今年の活躍が顕著だったことを挙げた。6年ぶりのK-POPアーティスト出演となった彼女たちが、『紅白』という大舞台でどんなパフォーマンスを見せるのか、またそれがどんな反響を呼ぶのか、期待しながら大みそかを待ちたい。

■アメリカで快進撃を見せた防弾少年団

一方でBTS(防弾少年団)の『ミュージックステーション スーパーライブ』出演は、TWICEとは異なりK-POPファンの間では驚きと喜びをもって迎えられたように思う。それは彼らが『Mステ』初出場であり、日本のゴールデンタイムのテレビ番組に出ることも初めてだからだ。

2014年に日本デビューした防弾少年団は7人組のボーイズグループ。「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく」という意味が込められたグループ名が表すように、若者の等身大の姿を表現するヒップホップサウンドと一糸乱れぬ群舞が魅力だ。

韓国ではトップクラスの人気を誇り、日本でも10月に京セラドーム大阪で初のドーム公演を行なった彼ら。12月には8枚目の日本シングル『MIC Drop / DNA / Crystal Snow』が海外アーティストとして初めて、シングル初週売上30万枚を突破するなど日本でも高い人気を獲得しているが、2017年の彼らの活動において特筆すべきはアメリカでの快進撃だろう。

防弾少年団は5月にアメリカの『Billboard Music Awards 2017』トップ・ソーシャル・アーティスト部門を受賞し、11月には韓国のアーティストとして初めて『American Music Awards』に出演。最新アルバム『LOVE YOURSELF 承‘Her’』のリード曲“DNA”はビルボード「Hot 100」チャートで67位にランクインしており、さらには『Jimmy Kimmel Live!』『The Ellen Show』『The Late Late Show with James Corden』といった現地の人気番組に立て続けに出演した。

また『LOVE YOURSELF 承‘Her’』にはThe Chainsmokersが参加しているほか、収録曲“Mic Drop”にラッパーDesiignerをフィーチャーしたスティーヴ・アオキによるリミックスも公開。グループのリーダーでラッパーのRMは、先日Fall Out Boyのリミックス曲にも参加した。

■満を持して日本のゴールデン番組初登場

しかしそんな彼らの勢いは日本のお茶の間まで届いているとは言い難い。SNSなどを通じて絶え間なくファンたちと繋がることで大きなファンダムを築いてきた彼らだが、現在の日本において大衆的な知名度を獲得するにはやはりテレビの力は大きい。

『ミュージックステーション』への出演は、K-POPファンの枠を超えて防弾少年団の存在を知らしめ、新しいファンを獲得する契機となるだろう。彼らは“DNA -Japanese ver.-”をパフォーマンスする予定。TWICEの“TT”のようにわかりやすいフレーズや振付はないものの、次々とフォーメーションが変わるダンスは初めて見る視聴者にも驚きをもたらしてくれるはずだ。

■BIGBANGや東方神起らの根強い人気 アイドル以外の韓国カルチャーも

TWICEや防弾少年団は韓流ブームが沈静化した後にデビューしたグル―プだが、ブーム当時からK-POP人気を支えるグループの人気も根強い。

11月4日発売の『日経エンタテイメント!』(日経BP社)が発表した「コンサート動員数ランキング2017」では1位の三代目J Soul Brothersに次いで、2位にBIGBANG、7位に兵役を経て今年再始動した東方神起、8位にSHINeeがランクイン。BIGBANGは今年まで5年連続ドームツアーを行なっており、安定して大きな人気を誇っていることがわかる。

今年の日本デビュー組としてはTWICEをはじめ、EXOのメンバーによるユニットEXO-CBXや、PENTAGON、MONSTA X、SF9、KNK、UP10TIONなどがいる。

また先日「#韓国人になりたい」とInstagramに投稿する若い女性が増えているという記事(「インスタ女子の間で「#韓国人になりたい」流行中の意外と深イイ理由」)が話題を集めたが、とりわけ女性ファッション誌で韓国のコスメやファッションが取り上げられることは今や珍しくない。さらに『WOOFIN'』2017年1月号ではラッパーZico(Block B)が表紙を飾り、韓国のヒップホップを特集。夏から今年後半にかけてはDok2、The Quiett、Loco、Sik-K、Reddy、G2といった韓国の人気ラッパーが来日したほか、『サマソニ』にも出演したバンド・HYUKOHのツアーも行なわれた。

来年1月には渋谷WWW Xの新イベント『In&Out』でインディーバンド・Parasol、Silica Gelがトクマルシューゴ、シャムキャッツと対バンする。『EYESCREAM』9月号では韓国のユースカルチャー・サブカルチャーを特集するなど、K-POPアイドルだけではない韓国のカルチャーにも光が当たり始めている。

■2018年はどうなる?日本デビューを控えるNCT127や大型新人Wanna One

2018年に新たにデビューを控えるK-POPグループとしては、東方神起やSHINee、EXOの後輩にあたるNCT127がいる。

来春の日本デビューが発表されている彼らもまた日本人メンバーのユウタをはじめ、韓国・中国・アメリカ・カナダと多国籍なメンバー構成。Abema TVでのレギュラー番組も始まっており、東京、名古屋、大阪、福岡でのショーケースツアーも予定されているなど、日本での活動に力を入れそうだ。

今年にオーディション番組『プロデュース101』シーズン2から誕生し、本国のチャートを駆け上ったWanna Oneも、すでに本国アルバムのジャパンエディションをリリースしており、11月に日本初パフォーマンスを行なった。

また少女時代やf(x)の後輩にあたるガールズグループ・Red Velvetは11月に日本で初の単独イベントを行ない、3月にも単独公演を控えており、来年以降の日本での展開も期待される。そのほか日本での1stアルバム『COUNTDOWN』のリリースを1月24日に控えるEXOや、2月から3月にかけてアリーナツアーを行なうSeventeen、今年日本デビューして多くのファッション誌にも登場したBLACKPINKらの活動にも注目したい。

反韓感情の高まりなどから韓流ブームが収束し、急速に日本のメディアから姿を消したK-POPアーティストだが、特に日本デビューし、日本語の曲をリリースしているグループに関しては、国外のアーティストながらJ-POPとの境界は極めて曖昧だ。もちろん日本のゴールデン番組に出ることが彼らのゴールでないことは承知だが(「日本デビュー」という手続きの是非についても議論の余地がある)、売上や動員数などの目に見える結果を出しているアーティストをあえて排除するような措置がとられることはないよう願いたい。まずはTWICEと防弾少年団の『Mステ』出演およびTWICEの『紅白』出演が、J-POPのリスナーにどのような反響を呼ぶのか、期待がかかる。

最後に、日本でも高い人気を誇るSHINeeのメンバー・ジョンヒョンが先日自ら命を絶つという悲しい出来事が起きた。2011年の日本デビューから毎年全国各地でライブを行なってきたSHINeeは2月に京セラドームと東京ドームでコンサートを開催することを、事件の数日前に発表していた。ジョンヒョンの音楽やファンに対する真摯な姿勢は、SHINeeのファンだけでなくK-POPファンの多くが知るところだろう。その音楽や言葉や笑顔で多くのファンの心を救ってきた彼の死がもたらした悲しみはあまりにも大きい。彼の残した数々の音楽が人々の心に輝き続けることがせめてもの救いだろうか。今はただ苦しみから解放されて天国で安らかに眠っていることを祈りたい。