子供のころ、30代や40代の中年を目にしていると、なんとなく小汚い印象を抱いていた。青髭を生やして、髪には白いものが混じり、肌もガサガサ。そして腹も出てるといった中年男性を何人か見ていたからだ。
ひるがえって現在。僕は33歳になったが、まさにあの頃の僕が嫌悪していた中年そのもののルックスになってしまっている。オッサンになってしまったことを自覚するというのは、なんとも切ないものだ。(文:松本ミゾレ)
「今32歳なのだが大学生のフリしててもバレない。バレるようになるのが怖い」
先日2ちゃんねるに「外見がオッサンになったのって何歳?」というスレッドが立った。立てた人物は30代なんだけど、見た目はまだ若いという自覚があるそうだ。
「今32歳なのだが大学生のフリしててもバレない。バレるようになるのが怖い」
と書いている。怖いなんていっても、すでにオッサンなのだからいつかはもっと見た目も劣化するわけなので、怖がっても意味がないと思うんだけど……。
個人的な見解を書かせてもらうと、人って生まれてから死ぬまでに容姿はことごとく変化する動物なのだから、その変化を恐れてもしょうがない気がする。
若いころのルックスに固執するよりも、体質的な変化やら、徐々に薄くなる頭髪やら、そういった変化を受け入れて生きるほうが気楽に感じてしまうのだ。少なくとも僕はどんどんデコが広がっているが、リアップやらアデランスなんか全く興味がわかない。
加齢に伴っての外見の変化は、それだけ自分の体が真っ当に成長できている証なので、それを拒絶するというのは、男らしくないように思える。第一、この32歳のオッサンだって本当にそこらの大学生と並べば確実に浮くわけなのである。だから見た目が実年齢よりちょっと若いだけというのも、どこまで有効なのかわかりにくい。
しかもそこらの大学生と同列に見られるルックスって、年齢に伴う威厳もへったくれもないから、僕は嬉しくない。年齢は覆せないのだから、32にもなったらオッサンであることを認めてもいいと思うんだけどなぁ……。
「ハゲでも白髪でもデブでもない。ただどう見てもおっさんなんだ」
スレッドには、自分がオッサンになってしまったと感じた瞬間について、オッサンたちがいろいろと書き込んでいる。2ちゃんねる自体が今やオッサンの巣窟なのだ。
「42~3で老眼がきて小さい字とか読めなくなる。目に見えて筋肉の量が減って軽い運動程度では維持できない。ちょっとしたことが思い出せなくてあれとかあのとかが増える」
「43歳の秋。気がついたら白髪の量が一気に増えてた」
「ハゲでも白髪でもデブでもない。ただどう見てもおっさんなんだ」
「30代後半になると萎んだ風船のように皺が増えてきて。顔の毛穴がミカンの皮みたいに大きく広がっていく恐怖に怯える。そして鏡で自分の顔を見るのが怖くなる」
こういう書き込みを見ていると、老化を恐れるオッサンの卵たちはきっと戦々恐々としてしまうんだろう。
でもどんなにあがいても、それこそ整形なんかしたって老化の波には抗えないんだから、抵抗は無意味と思って諦めるべきなのだ。年齢不相応な若いルックスって、なんか気持ち悪いし。
実際、年齢不相応な顔だちの中年って、男女問わずいることはいる。ちょっと太り気味だったりすれば、それだけで肌にハリが出て年齢不詳になったりするし、服装と髪型でうまく若作りしてるオッサンもいる。
あと、単純に人生経験というか、これまで味わってきた苦労が顔に出ておらず、幼い印象が抜けてない中年もいる。
だけど、実年齢にルックスが見合っていないって、やっぱり違和感が強いし、不自然なのだ。10代の頃の自分と、20代の頃の自分。そして30代、40代と年齢を重ねていった自分とでは、ある程度見た目も変化していないと成長している実感がわかないように思える。そして変化を感じられない人生ほどつまらないものはない。