2017年12月20日 21:03 弁護士ドットコム
飲食チェーン「サイゼリヤ」の女性スタッフ(当時20代)が2014年冬に自殺したのは、教育係だった男性副店長(当時)のセクハラが原因だったなどとして、遺族らがこの副店長や男性店長(当時)、会社を相手に東京地裁で争っている。
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この裁判で12月20日、副店長と店長の本人尋問があった。女性の日記などを根拠に、性的関係の強要があったかなどが争点になっているが、副店長は「女性の日記には事実ではない記述が多い。セクハラ、パワハラはしていない」、店長は「セクハラ、パワハラを見聞きしたことはない」と述べた。
訴状などによると、遺族側の主張は、妻子もいる副店長が上下関係を利用して、セクハラを行ったというもの。女性は準社員(非正規雇用)で、昇格や正社員登用を目指していたため、副店長の要求を拒めなかったとしている。その上で、関係を知りながら対処を怠ったなどとして店長を、セクハラ防止策が不十分だとして、サイゼリヤの責任も問うている。
遺族側が根拠とする日記は、女性のパソコンに残っていたもので、出来事が詳細に記録されている。副店長について、勤務時間中もボディタッチが激しく、「距離感が近い」「怖い」と複数回の記述がある。一方で、お互いの関係性を「師弟関係」と表現し、尊敬もしていたようだ。店舗内で二人の交際を疑うような噂があったことをうかがわせる記述もある。
日記によると、副店長の行為は、女性が一人暮らしをするようになってから激化。家に押しかけてくるようになり、性的関係も結ばされた。女性はその度ごとに、「悲鳴」を書き綴り、関係を終わらせたいと求めている。
遺族側は、「不倫関係」は終わらせたいものの、上司としての敬意は残っており、女性に葛藤があったとする。副店長が関係を断ってくれず、精神が不安定になっているところ、副店長から心中を持ちかけるような言葉をかけられ、動揺の末に自殺したと主張している。
一方、この日の尋問で副店長は、「不倫に関しては問題があった」としつつ、女性の日記については、「事実とはかなり異なる」「まったく別人のようで、自分の前で見せていた素振りと全然違う」と述べた。
副店長の主張は、むしろ女性の方が交際に積極的だったというもの。性的関係にも合意があり、その後も女性から「会いたい」という内容のLINEが送られてきたことを示した。別れ話を持ちかけられたことはなく、むしろ女性と家族のどっちを取るかを迫られていたという。2014年冬、女性に家族を選ぶことを伝えたといい、悲観した女性が自殺したという認識のようだ。
この事件では、不倫関係が始まる以前から、副店長が女性の給与明細に「わたしは、あなたが好き」と記すなどしていた。一方、副店長の上司だった店長は、セクハラやパワハラの現場は見たことがないとし、「(不倫関係は)女性が亡くなってから知った。二人を親密だと思ったこともない」と述べた。
証人として出廷した、当時の同僚も「店内で二人の関係をあやしいという話はなかった」と語った。
なお、ハラスメントなどを相談する、サイゼリヤ内の「ホットライン」に女性からの相談はなかったという。
セクハラ被害者の言動と内心が違うことは多く、相手に迎合するようなメールを送ったり、性的関係が継続したりすること自体は珍しくない。
女性の日記やサイゼリヤ側の証言、LINE記録などの評価が結果を分けそうだ。今後、最終弁論が行われ、年度内に結審する見込み。
(弁護士ドットコムニュース)