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竹内力が明かす、映画プロデューサーとしてのスタンス「誰が観ても楽しいと思ってもらえる作品を」

2017年12月20日 15:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 竹内力が原案・製作総指揮・主演を務めたクライム・サスペンスドラマ『闇の法執行人』のDVDが本日より、1月には、初の“ヒロイン”役を務めた『大馬鹿代』のDVDも発売される。リアルサウンド映画部では、発売を記念して竹内力にインタビューを行った。2作品の魅力から、『オケ老人!』『聖の青春』を手がけたRIKIプロジェクトのプロデューサーとしての活動まで、じっくりと話を聞いた。


■「お客さんが楽しんでくれることが第一」


ーー石井裕也監督作『ぼくたちの家族』、森義隆監督作『聖の青春』など、RIKIプロジェクトとして、質の高い日本映画のプロデュースも手がけています。自身が役者として出演するだけではなく、プロデューサーとして映画に携わるようになった経緯は?


竹内:32歳のとき、仲のいい俳優や後輩を集めて会社を設立しました。初めは映像製作を手がけていなかったんですが、役者として仕事をしていると、お客さんのことをまったく考えない、役者たちのことも考えない、納得のできない現場も多くありました。だったら自分たちで映像製作も手がけてしまおうと。紆余曲折を経て、最初はVシネを撮って、次に単館系作品を撮って、という感じで徐々にステップアップしていき、それが昨年の『オケ老人!』や『聖の青春』の成功につながりました。


ーー竹内さんが映画プロデューサーも務めていることを、多くの方は知らないように思います。


竹内:ほとんどの人が知らないと思います。俺もテレビ番組でアピールするのは嫌だし。大工の息子だからなのか、元々物作りが好きなんです。役者として、酷い現場も経験してきたからこそ、作る楽しさをみんなが感じれるような現場作りをしたい。それがプロデューサーとしての思いですね。才能があって実力ある監督たちがRIKIプロジェクトでやりたいと言ってくれることは本当に有り難いです。


ーーRIKIプロジェクトとして、今年も『ポンチョに夜明けの風はらませて』を手がける一方で、今回の2作品『闇の法執行人』『大馬鹿代』は竹内さん自身が主演を務めています。こちらの企画は最初からセットで考えていたのですか?


竹内:企画を提案したらどちらも通った。だったら同じ時期に出した方が2作品のギャップが出て、より面白みが増すと思いました。単発で出すと宣伝の時に、出来ることが限られる側面があるけど、2作品あるといろんな方向からアプローチできる。


ーーどちらも原案・製作総指揮・主演の肩書ですが、監督も務めようとは思わなかったのですか?


竹内:役者の演技や現場の指揮を取る監督ではなく、どうしたらお客さんが楽しんでくれるか、それを考えられる立場にいたいんです。監督を務めると、どうしても自分本位の作品になってしまうと思うので。でも、それはお客さんが見たい作品にはならない。お金を払って映画館で作品を見てくれたお客さんに、その入場料金以上の満足感を与えられなければ意味がない。そのためなら、役者として監督にも文句を言うよ。だけど、俺が監督だったら誰も文句言えなくなっちゃうからね(笑)。


ーー『闇の法執行人』は、資格を剥奪された元エリート弁護士の男・龍崎が主役のクライムサスペンスです。現代の日本が抱える問題を取り上げ、それを龍崎が成敗していく姿が、どこか“ブラック・ジャック”に近いものを感じました。


竹内:ブラック・ジャックか。それは面白い意見だな。龍崎は、『ミナミの帝王』と『仁義』シリーズのストーリー展開と、それぞれの作品の主人公である“萬田銀次郎”と“神林仁”を掛け合わせたような、頭脳明晰でアクションもできるキャラクターを作り出したかった。その意味では、近しいものがあるかもしれないね。


ーー4~6話は、OZAWA(小沢仁志)さんが監督を務めているのも注目のポイントです。


竹内:1~3話と4~6話では、まったく別作品と言えるほど作品のトーンが違う。小沢さんがアメリカのドラマが好きなこともあって、よりスタイリッシュになっている。それと同時に、1~3話では描かれなかった龍崎の過去が見えてきて、トーンもダークになっていく。主題歌に選んだ小田純平さんの「恋月夜」の歌詞が、4話から登場するヒロインの胸中にピッタリと合うんです。当初は、主題歌も俺が作曲するつもりで考えていたんだけど、たまたま飲み屋で聞いた小田さんの曲とイメージしていたストーリーがハマり過ぎていて、「これだ!」と思いカバーさせてもらうことになりました。歌詞の意味も踏まえて、4~6話を見ていただけるとやっとその意味がわかってもらえますよ(笑)。


■「いかに“生の芝居”が出来るか」


ーー“格好いい”龍崎から一転、そのビジュアルだけ見ると驚いてしまうのが、『大馬鹿代』です。しかし、本編を観始めると、タイトルとビジュアルの印象とは違う、しっかりした人情ドラマになっていました。


竹内:大馬鹿代は、霊長類最強のオバハンで、過去が謎であるが、記憶喪失で、娘と生き別れてて……という設定がまず思い浮かんだ。一見、ぶっ飛んだ女性に見えるんだけど、芯には愛があるというキャラクター。さっき言ったギャップと通じるんだけど、ただふざけているだけでは視聴者はついてきてくれない。格好いい、可愛い、面白い、それだけでは駄目なんだよ。キャラクターたちの明かされていない背景を視聴者が思わず想像してしまうような奥行きがないといけない。だから、ぶっ飛んだオバハンが悪を退治するという勧善懲悪だけのストーリーにはしたくなかった。


ーー『大馬鹿代』2話の大立ち回りが活きるのも、そこに至るまで登場人物たちの関係性をしっかりと描いているところにあります。そして、竹内さん演じる大馬鹿代が可愛くも見えてくる不思議さがあります(笑)。


竹内:そうなんだよ(笑)。自分で言うのも何だけど、本物の女性に見える瞬間があるよね。大馬鹿代のメイクも衣装も全部俺が決めたよ。メイクさんに頼むとどうしてもマトモになっちゃうからね(笑)。


ーー現場ではどういったスタンスで芝居にのぞんでいるんですか。


竹内:リハーサルをきちんと行わないで、本番にガツンと力を出す形でいつもやっています。何回もテストを重ねると、役者同士どうしても馴れがでてきて、芝居の新鮮さがなくなってしまう。それが嫌だから、アドリブも入れるし、いかに“生の芝居”が出来るかという点にこだわっている。


ーー2作品とも、シリーズ作品として今後の展開を期待したい内容に仕上がっていると感じました。


竹内:老若男女、誰が観ても楽しいと思ってもらえる作品を提供したい。そうでなければ作る意味がないからね。だから、企画・脚本作りには時間をかけている。龍崎も大馬鹿代も、事件を解決して、また違う街で新たな問題に立ち向かう、その過程で知られざる過去のエピソードも明らかになっていく……、そんな展開を今後も作って行くことが出来ればいいね。


(取材・文=石井達也)