お笑いコンビ・ウーマンラッシュアワーが12月17日に放送された「THE MANZAI」(フジテレビ)で政治をネタにした漫才を披露し、話題を呼んでいる。あまりにも政治の話題に終始したことに戸惑ったり、面白くないと感じたりした人も多かった一方で、識者からは称賛の声も相次いでいる。
漫才は、原発問題を皮肉るところから始まった。村本大輔さんの出身地・福井県には原発が4基あるが、夜7時になると街は真っ暗になるという。村本さんは「電気はどこへ行く」と絶叫し、大量の電力を消費しながらも、原発を地方に押し付ける"東京中心主義"を批判する。
「日本の問題をグサグサついてくる」「街頭演説にしか見えない」と賛否両論
さらに小池百合子東京都知事のことを「都民ファースト」ではなく「自分ファースト」と揶揄。そして、米国から大量の兵器を購入している日本を「都合のいい国」と腐す。これまでも「ファンクラブ」のようなネタで、社会を風刺してきたウーマンラッシュアワーだが、今回はさらに政治色が濃くなった形だ。
そのため、この漫才に戸惑いを覚える人も少なくなかったようだ。例えばネットでは「漫才というより街頭演説の類いにしか見えなかった」「単に早口で政治的主張をまくし立ててるだけで、笑えない」といった感想もあった。
一方で、脳科学者の茂木健一郎さんを筆頭に、称賛する識者は後を絶たない。かねてから日本には「権力者に批評の目を向けた笑い」がないと発言していた茂木さんは、今回のネタを絶賛。ツイッターで「日本のコメディが変わるきっかけになれば」とまで語っていた。
ジャーナリストの津田大介さんや映画作家の想田和弘さん、マーケティングアナリストの原田曜平さんらも評価していた。一般の人からも、「今の日本の問題をグサグサついてくる」といった声が上がっている。
トランプ大統領が誕生してからは「政治風刺のネタが人気」
茂木さんや想田さんも指摘しているように、米国には日本と異なり、権力を批判するコメディアンがたくさんいる。今年10月に放送された「町山智浩のアメリカの"いま"を知るTV 第16弾」(BS朝日)によると、米国ではドナルド・トランプ氏が大統領に就任以降、「みんな政治に敏感になり、ネタも政治風刺の方が人気」だという。人々が抱いている政治への不満を笑いに変えるコメディアンが多いというのだ。
さらに町山さんは、中世ヨーロッパの宮廷道化師を引き合いに出し、コメディアンの本来の役割は政治を良くするために、政治を批判することではないのかと投げかけていた。この番組には村本さん自身も出演しており、コメディアンは「権力を監視する側にいたんですね」と共感を寄せていた。
村本さんは17日、「アメリカのスタンドアップコメディに刺激うけた」とツイートしてもいる。日本では珍しい政治色の強い漫才の誕生には、こうした背景があったようだ。