アルゼンチンの人気ツーリングカー選手権、『スーパーTC2000』もいよいよシーズン最終戦を迎え、12月16~17日にメインとなるフューチャーレース1発勝負となったラウンドで、2位表彰台を獲得したルノースポールのファクンド・アルドゥソ(ルノー・フルーエンスGT)が、自身初となるチャンピオンを獲得した。
アルゼンチンの州都コルドバにある名門トラック、アウロドローモ・オスカー・カバレンで開催されたSTC2000の最終戦は、シリーズ戦のような“クオリファイレース”ではなく通常の予選3セッションで日曜決勝グリッド確定の方式とあって、選手権大量リードを持って乗り込んできたアルドゥソ優位の状況を崩そうと、各コンテンダーが懸命のアタック合戦を披露。
チャンピオンシップ上位からふたつのグループに分けセッションが行われたQ1は、後半組のコースイン時点で気温45℃、路面温度52℃、コクピット内の温度は80℃以上という、極端なコンディションでの争いとなった。
そんななかでも、王者候補の面々は順調にQ2を突破しQ3へと進出。シトロエン・トタル・レーシングSTC2000チームのエステバン・グエリエリ(シトロエンC4ラウンジ)や、ランキング2位につけるチーム・プジョー・トタル・アルゼンティーナのマリアーノ・ウェルナー(プジョー408)、TOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナのマティアス・ロッシ(トヨタ・カローラ)らがアタックを続けるなか、2016年王者のYPFシボレー、アグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)は、この予選でのポールポジション獲得が数字上での逆転タイトルに望みをつなぐ唯一の方法とあって、決死のアタックを敢行。
セッション中盤でルノースポールのリオネル・ペーニャ、グエリエリのシトロエンを退け、カナピノのシボレーYPFクルーズが1分32秒282の暫定ポールタイムをマーク。そのまま予選Q3の結果確定かと思われた最終盤に、初タイトルに向け気合のこもったアタックを見せたアルドゥソが1分31秒970と、ただひとり31秒台に突入するタイムを記録し逆転。
ポールポジションはタイトルに向け盤石の体制を敷いたアルドゥソとなり、フロントロウにカナピノ。以下、ペーニャ、グエリエリ、ロッシのサードロウとなり、これでポールのアルドゥソは1ポイントを加算し192ポイントに。
この時点でシボレーの2016年王者カナピノと、トヨタのロッシはタイトル獲得権利を喪失。選手権2位のウェルナーは日曜決勝での優勝が絶対条件となり、アルドゥソは13位以上なら初タイトル確定と、絶対的に有利な条件でスタートすることとなった。
迎えた2017年最後のSTC2000決勝。レッドライト消灯でホールショットを決めたのは、ディフェンディングチャンピオンの意地を見せたカナピノのシボレーYPFクルーズで、ポールシッターのアルドゥソはチームメイトのペーニャを従え2番手に後退。
4番手を走る、WTCC世界ツーリングカー選手権レギュラー、グエリエリの背後には、ロッシの隣6番グリッドから発進したプライベーター・フォードに乗るダミアン・フィネンチ(フォード・フォーカス3セダン)が浮上。その背後に、唯一のタイトルコンテンダーであるウェルナーのプジョー408がつけ、勝利が絶対条件のウェルナーにとっては序盤から苦しい展開となることが予想された。
そのオープニングラップで、自らの置かれた立場を理解しているウェルナーは、ターン2のアウトからフィネンチに仕掛けるも、かなり強引なターンインとなりフィネンチは行き場を失いマシンをスライドさせて接触を回避。ウェルナーは5番手に浮上したものの、アクシデントを回避したフィネンチは9番手にドロップする形になってしまう。
しかしレースはその後、静かな展開を見せこう着状態に突入。2周目に入ったところで5番手ウェルナーに対し、首位のカナピノは6秒前方のセーフティーリードを構築。そして18周目には、2番手のアルドゥソに対しても2秒のマージンを築くなど、シボレーがじりじりと後続を引き離しにかかる。
最初の異変が起こったのは24周目。3番手でアルドゥソを護衛していたペーニャのルノー・フルーエンスGTが、右フロントタイヤにトラブルを抱え緊急ピット。これで3番手にグエリエリ、4番手にウェルナーと、プジョーが表彰台圏内目前にまでポジションアップ。
しかし波乱はここまで。33周のレースはそのままチェッカーとなり、“前”王者のカナピノが優勝。2位に入ったアルドゥソが29歳にして初のツーリングカー・タイトルを獲得。最後の表彰台となる3位には、世界選手権を含め激動の2017年シーズンを過ごしたグエリエリが入った。
これでアルドゥソ自身は、2009年のフォーミュラ・ルノー2.0アルゼンティーナに続く年間タイトルとなり、2016年に移籍したルノースポール・チームに、アルゼンチンでの活動で23年ぶりとなるツーリングカータイトルをもたらした。