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ラストアイドルが語る、デビューにかける思い 「覚悟とか受け入れる強さが全然違う」

2017年12月18日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 2017年8月より放送を開始した、秋元康総合プロデュースによるアイドルオーディション番組『ラストアイドル』(土曜深夜/テレビ朝日系)。「プロアマ問わず、兼任可能」というこれまでに例を見ない応募条件で始まった同オーディションは放送前から話題を呼び、今では番組放送中のTwitterが実況ツイートで溢れるほど、アイドルシーンの中でもっとも熱い視線が注がれている。


 番組では、暫定メンバー7人に対して毎週新たな挑戦者が指名制で勝負を挑み、1対1のパフォーマンスバトルを繰り広げる。そのバトルをギュウゾウ(電撃ネットワーク)、大森靖子、吉田豪など、アイドルに造詣の深い各界著名人たちが審査員として評価。そのバトルに勝ち抜くことができたメンバーが、12月20日発売のメジャーデビューシングル『バンドワゴン』のユニットメンバーとしてデビューする。


 先日放送された12月16日回では、ついにデビューを勝ち取ったメンバーが決定。センターの阿部菜々実(15歳)、吉崎綾(21歳)、大石夏摘(13歳)、安田愛里(18歳)、長月翠(17歳)、鈴木遥夏(14歳)、古賀哉子(19歳)の7名だ。リアルサウンドでは、いち早くメンバー全員にインタビューを行うことができた。毎週のように入れ替わるメンバーたちとの出会いと別れ、多くの人々の思いをのせて掴み取った新たなステージ……この数カ月で急速な成長を遂げた彼女たちのまっすぐな言葉、熱い思いをお届けする。(編集部)


(関連:オーディション番組『ラストアイドル』なぜ人気? 1対1バトルで“波乱の展開“続く


■『ラストアイドル』は思っている以上にいろんなものを得られた番組(吉崎)


ーー皆さんが『ラストアイドル』という番組に応募しようと思ったきっかけを教えてください。まずは、番組初回時の暫定メンバーだった吉崎さん、安田さん、長月さんから。


吉崎綾(以下、吉崎):私は小泉今日子さんや松田聖子さんのように、歌って踊れて演技もできる、マルチな活動をされている方にすごく憧れていて。『ラストアイドル』でなら、そういうアイドルになれるんじゃないかと思って、最初はそういう理由で応募しました。


安田愛里(以下、安田):私はもともとアイドルになりたくて芸能界に入ったんですけど、今の事務所からは女優として押していくと言われていて。何度か「アイドルになりたいんです!」という気持ちを伝えても、「君はアイドルっぽくないし、アイドルにはそんな簡単にはなれないから」と言われてきたんです。でも、『ラストアイドル』の話を初めて聞いたとき、「事務所に所属していても既存のアイドルグループに所属していても、誰にでもチャンスがある」と知って、アイドルに向いていないと言われる私にも応募するチャンスがあるんだと思って応募しました。


長月翠(以下、長月):私は前に所属していたグループを辞めると決めたときに、この番組のことを知って。もっとアイドルとして有名になりたいという気持ちが強かったから、秋元康さんの名前をみつけて応募しようと思ったんです。


ーーなるほど。で、お三方を含む暫定メンバー7人で8月12日に番組がスタート。第3回(8月26日放送)で早くもメンバーが入れ替わります。最初は古賀さんでしたね。


古賀哉子(以下、古賀):はい。私が挑戦者として参加したのは、最初の番組収録日で。だから暫定メンバーにとっても最初の収録だったんです。


ーーでは古賀さん自身もどんな番組になるのか、詳細を知らなかった?


古賀:そうなんです。収録の1週間前に挑戦することが決まったんですけど、ちょうど学校のテスト期間中だったからバタバタしていて。それで、いざ収録に行ってみて、スタッフさんから説明を聞いて、詳しい内容が理解できたんです。


ーーそうだったんですね。古賀さんはもともと、芸能界で活動していたんですよね?


古賀:はい。高校のときに2年間だけモデル事務所に入っていたことがあって。で、高3になる前に進路を考えなくちゃいけなくなって、専門学校への進学を選んだんです。だけど、この世界に対する未練もあって……もしこのオーディションに落ちたら、そのまま専門学校で勉強を続けようと考えていました。


ーーそこから中盤にかけて入れ替わりが続き、第8回(9月30日放送)で鈴木さんが暫定メンバーになります。鈴木さんはアイドルに対する憧れは?


鈴木遥夏(以下、鈴木):はい、小学1年生の頃からずっとありました。でも、最初の暫定メンバー7人を決めるオーディションには参加していなくて。そのときはメンバーが入れ替わるのが怖いと思っていたから、もともと受けないつもりでいたんです。でも番組を観ているうちに、「受からなくても良い経験になるんじゃないかな」と思うようになったので、挑戦者募集に応募しました。


ーー続いて、第10回(10月14日放送)でセンターが阿部さんに入れ替わります。


阿部菜々実(以下、阿部):私は今もパクスプエラというグループと兼任しているんですけど、そっちの活動が以前と比べて少なくなっていて。しかも今受験生で、今後の進路を考えたときに周りの人からは「受験に専念したら?」と言われたんですけど、自分はこのままずっとアイドルを続けたいと思ったんです。もし『ラストアイドル』に受かったらアイドルを続けられるし、周りの人たちにも認めてもらえるんじゃないかなと思って、挑戦者オーディションを受けました。


ーーそして、第12回(10月28日放送)で大石さんが加わります。


大石夏摘(以下、大石):私はこの番組を最初から観ていて。綾ちゃんとか愛里ちゃんのことが、すごく好きだったんです。


安田:えー、嬉しい(笑)。


大石:みんなすごくキラキラしていて、いいなと思っていて。私自身、歌ったり踊ったりするのが好きで、ミュージカルもちょっとだけやったことがあったんです。でも、ミュージカルって知っている人は知っているんだけど、世間一般の人は出演している人のことまで知らないじゃないですか。私はみんなが知っているような存在になりたかったから、挑戦者オーディションを受けてみようと思ったんです。


ーー先ほど古賀さんが「どんな番組になるか知らなかった」と言っていましたが、それこそスタート時から参加する皆さんはこんなことになるとは……。


長月:思ってもみなくて(笑)。収録が進むにつれ、「あれ、これはちょっと普通の番組ではないぞ?」と気づいて、バトルもこんなに険しいものだと思ってませんでした。それこそ最初は、書類審査を通らなくてもいいかぐらいの気持ちで応募したのに、気づいたらどんどん気持ちが入り込んでいくというか、「やりたいな」って思うようになって。とにかくアイドルになりたかっただけでここに来たので、その過酷さにはびっくりしました。


吉崎:最初はメンバーとも仲良くならないでおこうと思ったし。でも「バンドワゴン」を一緒に練習していくうちに、みんなの優しさとか良いところが自然と見えてきて。それで仲良くなったときに、初めて暫定メンバーが入れ替わって、そこで……入れ替わったときの悲しさもあるけど、勝った子が一生懸命馴染もうとしていたり、その子も私たちと同じ夢を持っているんだと気づいたりすると、その子を受け入れようとする気持ちも生まれてきたんです。私が思っている以上に、いろんなものを得られた番組ですね。


■収録前日に「ああ、もうあの衣装を着られないかも」と(長月)


ーー番組では皆さん、挑戦する側、挑戦を受ける側としていろんな感情があったと思いますが、挑戦者から「立ち位置○番、○○さん」と指名されたときは正直どういう心境なんでしょう?


吉崎:そこは意外と、みんな思ってることはバラバラそうだよね。


他のメンバー:うんうん。


吉崎:私は自分に自信を持ってないとダメだなと思って。最初の頃はずっと自信を持てなくて、挑戦者が来ても「当てないで!」って目線をそらしてたんです(笑)。でも、初期メンバーが2人(吉崎、安田)だけになってしまって「いつ指名されてもいいような覚悟でいないとダメなんだ」って気持ちを切り替えた日に、初めて挑戦者から指名されたんです。そのときはもう「私は負けない!」っていう気持ちができていたから、「私は石原さとみだ!」くらいの気持ちで収録に臨みました(笑)。


長月:でも、なんとなく「あ、今日(指名)くるわ」ってわかるんですよ。私の場合は一回負けているんですけど(※長月は10月21日放送の第11回で蒲原令奈に敗退したが、蒲原の辞退で再挑戦。暫定メンバーに復帰)、そのときは収録前日に「ああ、もうあの衣装を着られないかも」とふと思ったんです。実際、収録当日もみんなに言ってたしね。


安田:うん。「今日、嫌な予感がする」って言ってました。


長月:そうしたら自分の勘が当たって、本当に負けちゃったので(苦笑)。対戦のときは考えることをやめたいなと思うぐらい、感じることがあるんですよ。


吉崎:収録日はごはんが喉を通らない子も多いし。


鈴木:私は胃が痛くなって、お弁当を全然食べられなくて……。


安田:私は最初の頃は残りたいって気持ちが強くて、スタッフさんとしてでも残っていたいと思ってました(笑)。


他のメンバー:(笑)。


安田:もともと『ラストアイドル』に応募したときも、これで残れなかったら芸能界を辞めて、一般の女の子に戻ろうと思っていたんですけど、番組が始まると「やっぱり芸能界をここまで続けてきたんだから、少しでもしがみついていたい!」と思うようになったんです。だから最後の収録の頃には、自分の中で芸能界でやっていく覚悟も決まって、悔いの残らないように頑張ろうと思ってました。


■スタジオから退場していく姿がずっと頭から離れなくて(古賀)


ーーさっき吉崎さんが「最初はメンバーとも仲良くならないでおこうと思った」と言っていましたが、それは誰がいついなくなるかわからないから?


長月:そうですね。仲良くなったその子が負けていなくなったら寂しいし、勝って新しく入ってきた子をちゃんと受け入れてあげられないんじゃないかっていう怖さは、全員にあったと思う。仲は良いんだけど、友達にはなっちゃいけないなという距離感でした。


吉崎:わかる。半分以上メンバーが入れ替わったときも、「誰も悪くない」って感情が自分の中でずっと渦巻いていて。たぶん、この経験をしてないほかのアイドルさんとは、覚悟とか受け入れる強さが全然違うと思います。


長月:でも、途中から誰かが負けることが怖くなくなったときが、一番怖かったです。「あ、慣れたんだ」って。


吉崎:わかる。


長月:涙は出るけど、悲しくない。それが当たり前なんだって思ったときがね。


吉崎:だからみんな、一回心が死んでるんじゃないかな(笑)。


他のメンバー:(笑)。


ーー番組開始時からのメンバーが吉崎さんと安田さんだけになって、そのちょっとあとくらいからグループの雰囲気が少し変わりように映りましたが?


吉崎:初期メンバーが2人だけになってしまったあとはどうしても気持ちが切り替えられなくて、収録後に(安田と)2人でごはんに行って、緑茶を飲みながら号泣して(笑)。「今のラストアイドルは、周りからどう思われているんだろう?」とか話したよね。


安田:あったね(笑)。


吉崎:でも、そこで泣いたのが正解で、次の日から気持ちがスパッと切り替えられて。今のメンバーで頑張ろう、ゼロからでいいから頑張ろうと思えるようになったんです。


安田:逆にしっかりしないとダメ! ってね。だって、みんな良い子なんですよ。


ーーそれこそ8~9月の放送と、11月後半から12月にかけての放送とでは、全然グループの雰囲気が違って見えるんですよ。


吉崎:けど、逆に恥ずかしいよね、番組内で成長しすぎて。


古賀:私は相澤さん(相澤瑠香。初期暫定メンバーで、現在セカンドユニット「Good Tears」メンバー)に勝って今ここにいるんですけど、収録のときも相澤さんは歌う前から泣いていて。その泣き顔のイメージが鮮明に残っているんです。しかも、収録が終わって福岡に戻ってからも、相澤さんがスタジオから退場していく姿がずっと頭から離れなくて。そこから、「こんなにアイドルに命をかけてやってきた女の子に勝ったんだから、ここで負けちゃダメだ」って思いがどんどん強くなりましたね。


■センターが変わると、こんなにも受ける印象が変わるんだ(大石)


ーーラストアイドルのデビュー曲「バンドワゴン」は、それこそ番組初回から歌ってきた大切な曲で、メンバーが入れ替わったらその都度、新しい編成でパフォーマンスをしてきました。歌うときの気持ちや感情の込め方も、毎回違ったんじゃないでしょうか?


吉崎:メンバーが入れ替わったときは、新しく入ってきた子が心配になってしまって、その子のことを気にかけてパフォーマンスすることが多くて。曲中に7人で円を作るところがあるんですけど、そこでは無意識のうちにその子に向けて笑顔を見せてる気がします。


他のメンバー:うんうん。


吉崎:でも、今までは暫定メンバーとして歌って踊ってきたから、いまだに「私たちの歌!」という感じがしなくて。この曲を歌うと、まだ周りに試されているんじゃないかって気持ちになってしまうんです。


長月:わかる。


大石:でも、なな(阿部)が入ったときは、曲の印象がガラッと変わったよね。センターが変わると、こんなにも受ける印象が変わるんだって驚いたのを覚えています。


長月:一緒に踊っていても、菜々実はついつい見ちゃうんです。本当にすごいよね?


吉崎:ふだんとのギャップ含め、大好き(笑)。


阿部:ふふふ(笑)。


大石:ふだんはすごくおとなしくて、あんまりしゃべらないんですよ。しかも、よく食べるのもギャップ(笑)。


阿部:私は毎回「もうこのメンバーで踊るのは最後かもしれないし、自分がここで歌うのも最後かもしれない」と思っていて、一回一回を大切に歌ってきたんです。みんなが言ってくれたように、ふだんは全然自分を表に出さないんですけど(笑)、パフォーマンスをしているときだけは少し自信を持てるので、パフォーマンスにすべてを賭けてます。


吉崎:そうだったんだ。こういうときしか、そんな話してくれないから(笑)。


阿部:(笑)。


吉崎:そうなんです。こういう取材も今後さらに増えていくと思いますし、お互い考えていることを知れる良いチャンスになりそうです。


■「アイドルといえばラストアイドル」と言われるまでに成長したい(阿部)


ーーでは最後に、ラストアイドルをどういうグループにしていきたいか、今後の目標を聞かせてください。


鈴木:私はもともとアイドルが大好きで、握手会とかライブにもずっと参加していたので、そこで見てきたことをグループに活かせたらと思ってます。そして、いろんな入れ替わりを経て最終的にこのメンバーになったので、一人ひとりが勝ったという気持ちを忘れずに、今までにないアイドルグループになりたいです。


大石:私はみんなの足を引っ張ることもまだ多いので、自分個人の強化がまず必要かなと。メンタル的にもちょっと弱い部分があるので(笑)、どんどん成長する姿を見せられたらいいなと思ってます。


古賀:普通はオーディションってファンの人が見てないところでして、そこで受かった人が表に出ていると思うんですけど、私たちの場合はオーディションしているところを全部テレビで見せていて。自己アピールをしたり歌ったり、それこそ恥ずかしいところも全部オープンにすることで、これからアイドルになりたい女の子にとって少しでも勇気づけられる存在になれたらいいなと思います。


長月:今アイドルといったらAKB48さんや乃木坂46さんとかだと思うんですけど、そこにラストアイドルファミリーって言葉が入っていけたらいいなと思っていて。私はセカンドユニットのシュークリームロケッツと兼任しているんですけど、ラストアイドルでは自分の個性を出すことを頑張って、シュークリームロケッツでは自分がグループを引っ張っていける存在になりたいです。


安田:私はこの番組を通して、夢を掴むことの難しさを改めて知りました。正直、自分のことが嫌いになるぐらいに性格がひねくれそうになったこともあったんですけど、逆にこの番組でいろんな感情を知れたからこそ、皆さんに「バンドワゴン」という曲を届けられるんじゃないかなと思っていて。「バンドワゴン」の歌詞は何度も挫折しそうになったけど、本当に自分がなりたいものは何なのか、自分のなりたいものに向かって、本気でぶつかっていって夢を叶えるっていう、人を励ます歌だと思うんです。私たちが今まで戦ってきて勝ち残れて、自分たちの夢を叶えられたように、今夢を追っている皆さんに「夢をあきらめないで」っていう応援の気持ちを込めて、一回一回「バンドワゴン」を披露して、聴いた人に元気や勇気を与えられるアイドルになりたいなと思っています。


吉崎:……ちょっと感動して泣きそうになっちゃったんだけど(苦笑)。


安田:えーっ?(笑)。


吉崎:えっと……ここまで4カ月間の成長とか覚悟とか、すべてを「バンドワゴン」という曲で表現していきたいです。私たちの魅力は、審査員一人ひとりに選んでいただいてここまで勝ち残れた強さだと思うんです。それによってメンタルが強くなったと思うので、それが魅力だと思ってもらえるようなアイドルになりたいです。


阿部:番組内で成長できたこともたくさんあるんですけど、私にはアイドルとして足りない部分がまだたくさんあるので、これからもっといろんなことに挑戦していくことで、「アイドルといえばラストアイドル」と言われるまでに成長したいなと思います。


(西廣智一)