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松岡修造がアツくない!? 『陸王』予想を裏切るクールな演技を考察

2017年12月17日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 第1話から骨太でアツい展開が続く日曜劇場『陸王』(TBS系)。日本の映画・ドラマを牽引するベテランから注目の若手まで、粒ぞろいの俳優たちの中に、第7話から、満を持して登場した松岡修造。日本一アツい男の、初めての演技が話題を呼んでいる。


参考:『陸王』はなぜ“群像劇”に? 池井戸潤ドラマ『半沢直樹』路線からの変化を読む


 『半沢直樹』シリーズや『下町ロケット』の池井戸潤の小説を原作とし、15年ぶりの連続ドラマ主演である名優・役所広司を筆頭に、今をときめく山崎賢人や竹内涼真といった若手から、寺尾聰といったベテランまで豪華キャストが集結した本作。


 老舗足袋屋の100年の歴史を背負いながらも新規事業である「陸王」開発に情熱を燃やし、「こはぜ屋」の、そしてこの『陸王』の顔として、みなを引っ張っていく役所。本作のために身体をつくり上げた、竹内や佐野岳をはじめとしたランナーたちの手に汗握る闘いや、「こはぜ屋」の奮闘の陰で暗躍する大企業、アトランティス社のピエール瀧や小籔千豊らの容赦ない悪役ぶり。今どきの若者の葛藤を等身大の演技で魅せる山崎と、父を演じる役所とのぶつかり合いと支え合い。夢破れた男が、いまいちど誰かの夢について行く、寺尾の男気。人と人との繋がりと絆を第一に、「陸王」開発の立役者のひとりとして奔走する風間俊介。


 毎週このドラマを見ていて、目に涙を浮かべながら、思わず連発してしまう「アツい…」という言葉。ここにきて松岡修造の登場とは、あまりにもアツすぎる。


 本作で松岡が演じるのは、世界的なシェアを誇る米国のアウトドア用品メーカー「Felix」の社長・御園丈治である。彼は「陸王」の、そして現在の「こはぜ屋」の要といえる「シルクレイ」に目をつけ、その特許保持者である飯山(寺尾聰)に近づき、高額の特許使用料を提示する。ところが飯山はこれを断った。そこで御園は「飯山さんが全幅の信頼を寄せている、あなたと手を組みたい」と宮沢(役所広司)に話を持ち掛け、「こはぜ屋」買収に乗り出したのだ。


 松岡の本作への出演が発表された時点で、「演技ができるのか」「アツい演技をするのか」といった声を多く耳にしていた。ところがふたを開けてみれば、松岡修造という人物に世間一般が抱くイメージとはあまりにかけ離れた、クールな演技を披露している。普段からの健康的な快活さはそのままに、穏やかだが芯の通った声と態度には、大企業のトップに君臨する男らしい貫禄すら感じられる。そして役所広司を相手に、鋭く力強い視線で迫る。自社「Felix」の説明、「こはぜ屋」の技術力への賛辞、買収という提案。いずれも内面からにじみ出る、陽のエネルギーに裏打ちされた、誠実で自信に満ちあふれた物言いである。公式のコメントで本人は、「『陸王』は、日本の魂を感じさせる本気ドラマです。明日へ向かうための活力になるドラマの一員になれるよう、本気勝負させていただきます。まさに修造チャレンジ、自分を変える覚悟はある」と語っている。


 “アツい演技”ではないものの、演じる御園という、その世界でのし上がってきた人間の、内に秘めたるアツさとマッチしているのは間違いない。しかしながらやはり、いつも通りの〈松岡修造=アツい男〉を、本作の中で見てみたいという欲求は否定できないところである。


 物語はいよいよクライマックスへ。果たして御園とは、「こはぜ屋」にとって敵なのか、味方なのか。次回第9話では、「こはぜ屋」の大きな敵であるアトランティス社と御園が接触する展開があるようだ。アツいドラマを、クールに引き締める。彼の動向に注目である。


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記


(折田侑駿)