トップへ

「妹さえいればいい。」連載インタビュー【第1回】原作・平坂読先生"伊月と春斗は両方とも自分"

2017年12月16日 19:03  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

「妹さえいればいい。」連載インタビュー【第1回】原作・平坂読先生"伊月と春斗は両方とも自分"
『僕は友達が少ない』の平坂読先生が執筆し、『変態王子と笑わない猫。』のカントク先生がイラストを手がける、人気小説が原作のTVアニメ『妹さえいればいい。』。妹をヒロインに据えた小説を書き続けるライトノベル作家の主人公・羽島伊月を筆頭に、彼を取り巻くキャラクターたちの関係性から目が離せない作品だ。また、青春ラブコメの要素がありつつも、伊月たちラノベ作家の裏側を知ることができる一粒で二度美味しい面も見逃せない。

アニメ!アニメ!では、「妹さえ」の魅力を深掘りするためスタッフ陣へ全6回にわたって連載インタビューを実施。第1弾として今回は原作・シリーズ構成の平坂読先生へ、本作が誕生した経緯や実体験がどれだけ作中に反映されているのか、さらに先生ご自身の「〇〇さえあればいい」をうかがった――。
[取材・構成=胃の上心臓(下着派)]

『妹さえいればいい。』
http://imotosae.com


■「カントクさんがイラストなら、すぐに打ち切りはない」

――まずは『妹さえいればいい。』が誕生した経緯を教えてください。

平坂読先生(以下、平坂)
元々作家物をずっとやりたかったんです。でも、中々売れ筋のジャンルではないことから二の足を踏んでいました。そんな時に担当編集の岩浅さんからカントクさんと組んで新しい企画をやりませんか? と持ちかけられて、カントクさんがイラストをやってくれるなら少なくともすぐに打ち切りになることはないだろうということで、始めることにしました。


――そんな本作のTVアニメ化が決まった時に、どのような想いがありましたか?

平坂
アニメ化は前作『僕は友達が少ない』から今回で2回目なので、もちろんすごく嬉しいというのはあるんですけれど、作業の忙しさや放送中のストレスとかもよく知っていたので、不安なところはありました。それでもやはり「いいアニメになってほしい」という期待が一番大きかったです。

――そういったご自身の経験は、同じライトノベル作家である羽島伊月や不破春斗らキャラクターたちに生かされているところがあるのでしょうか?

平坂
ええ。とくに春斗がそうですね。べつに前作のアニメが失敗だったと思っているわけではないのですが、アニメ化がいいことばかりではないということはちゃんと描きたいなと。

――劇中ではお酒やゲームなど、平坂先生ご自身の趣味趣向や遊び心が散りばめられています。そのほか「こだわり」や「遊び」の描写はありますか?

平坂
実在のライトノベルや漫画がたくさん出てくるんですけれど、それは実際に自分で読んだ好きな作品を出しています。あと、そんなには使っていませんが、中の人ネタも出していたりしますね。例えばオーバーロード的な人や、パンツマンガ先生ですね。

――春斗や三国山蚕ですね。蚕の好きな妹は、原作では藤田 茜さんが演じられたあの妹キャラでしたね。

平坂
あれを書いた時はまだキャストが藤田さんに決まっていなかったので、偶然でした。


――アニメ化する際に、原作者としてここは守りたいと思った大切なポイントは?

平坂
原作の雰囲気を崩さずキャラがブレないように、ということですね。ただそのまま原作をなぞっていくのではなくアニメとして1話1話をまとまりがあるように最適化しつつ、全12話を見直したときにこれはいいアニメだったなと思ってもらえるよう心がけました。

■キャストさんたちの多彩な表現が支える物語

――アニメでキャラクターに声が付いたことによって、原作小説のご執筆に変化はありましたか?

平坂
最初に声が付いたドラマCDの時から、主要キャラの伊月、春斗、那由多、京、千尋の5人に関しては漠然とした声のイメージがあって、そのイメージにあった人を選びました。なので声が付いたことで特に意識が変わったところはないかなと。

――少し声優陣についても聞かせてください。千尋役の山本希望さんは『僕は友達が少ない』にも出演されていましたよね。

平坂
千尋役の山本さんについては、『はがない』で実は女の子だというキャラクター(※楠幸村)を演じて貰ったことも踏まえたキャスティングです。「平坂読の作品で、幸村の中の人だぞ、あとは……わかるな?」みたいな……(笑)。もちろん、千尋の声のイメージを最優先した上で、ですが。
アフレコ時の印象的なエピソードだと、春斗役の日野聡さんは、7話のTRPG回がすごく大変そうでした。敵の冒険者たちが同時にしゃべるところがあったのですが、ひとりひとりの声を別々に録って何度も繰り返していました。あと、姫様(シルヴィア)の「らめぇぇえええ」というセリフで、日野さんが収録中に笑っていたのが印象的です。アンデットやゴブリンとかも全部やっていただきました。


――ちなみにローパーは?

平坂
ローパーも日野さんです。元々効果音の予定だったんですが、日野さんが「やりますか?」と言ってくださって。

――日野さん凄いですね! では伊月役の小林裕介さんはどうでしょう? TRPGでは女性キャラになっていましたが。

平坂
TRPGでは普通に男の声でやって貰いました。一度テストで女性っぽくやってもらったんですが、流石に違和感が強いということでこの形になりました。

――第1話のラストシーンの表現も印象深いですよね。

平坂
声質を最優先して選んだのですが、上手い方だというのは知っていたので、伊月としてのお芝居をこなしてくれると信頼していました。細かい感情をしっかり汲み取った演技をしていただけて、小林さんを選んだのは間違ってなかったなと思います。


――京の加隈亜衣さんについてはどうでしょう?

平坂
6話のラストで京が泣くシーンがオーディションの台本にあって、その泣きのお芝居がグッとくる感じだったので、そこが決め手になりました。


――那由多の金元寿子さんはどうでした?

平坂
那由多はもう最初から完璧で、とにかく上手いなと。第6話でキャット&チョコレートをプレイするときに「壊れろ、壊れろ」と繰り返す場面があるんですが、あそこは本当はもっと長かったんです。尺を短くしても、ちゃんと病んでる感じが伝わる素晴らしいお芝居でした。


――本作で特に気に入っているキャラクターは誰ですか?

平坂
原作のデザインとして気に入っているのは京ですね。カントクさんのこだわりで髪形や服装も毎回変わるので、見ていて楽しいです。

――カントクさんと初めて顔合わせをした時は、どんなことを話されたんですか?

平坂
元々面識はあって、社会人としてすごくしっかりした人ということも知っていたので、「これからお世話になります」的な……。

――刹那と伊月みたいに、一緒に旅行に行ったりは……!?

平坂
カントクさんと一緒に行ったことはないですね(笑)。

■キャラクターたちとお酒を飲んでいる感覚を味わおう

――お酒についてもうひとつ。劇中ではキャラクターたちがお酒を楽しげに飲んでる姿が印象的ですが、ファンの方が作品を見ながらお酒を飲むとすれば、どんなお酒がオススメでしょう?

平坂
作中でキャラクターが飲んでいるものと同じものを飲むのが、一番雰囲気にあっているのかなと。お花見の場だったらフルーティーなビールとか日本酒みたいな形で、一応シーンに合わせたお酒を選んでいます。基本的にはちゃんと現実で手に入るお酒ばかりなので、ぜひ調べてみてください。


【※本作に登場するお酒の情報は、公式コンテンツ「うまい酒があればいい。」でチェックできます。】

――ちなみに先生が一番好きなお酒は?

平坂
原作に出てくるんですが、グーデン・カロルスのケイゼル・レッドですね。

――作家にとって欠かせないのが「編集者」という存在ですが、4話で伊月が放った「やばい、編集者だ、逃げろ!」というセリフが衝撃的でした。いま、平坂さんのお隣に担当編集の岩浅さんが同席していらっしゃいますが、作中の土岐と伊月のようなエピソードはありますか?

平坂
う~ん……ロクな話が出てこないですね(笑)。岩浅さんとは『はがない』の時からの付き合いなのですが、『はがない』のアニメ放送当時はふたりして酒に溺れていました。

岩浅
僕は平坂さんに付き合ってたんですよ!

平坂
毎回放送日になると編集部にお酒を持って行って酔っぱらって……

――編集部でですか!?

岩浅
携帯に平坂さんが倒れて寝ている写真が入ってます。

――(笑)。話題は変わりますが、作中の伊月の部屋は、平坂先生が住んでいた部屋を元にしているとうかがいました。

平坂
ほぼそのままです。カントクさんに来て頂いて写真を撮って貰ったので、レイアウトや間取りも一緒になっています。コタツはなかったんですけれど、それ以外は大体同じです。


――当時は伊月のようにほかの作家さんを招いたりもしたんでしょうか?

平坂
ええ。

岩浅
友達は多いんですよ、残念ながら。

――原作第1巻には色々な作家さんからメッセージがありました。

平坂
あれは別に友達では……。

岩浅
そこは友達と言っておきましょうよ!

一同
(笑)。

岩浅
平坂さんの家はよくたまり場になっていますよね。本当に作中そのままです。遊びに来るのが美少女じゃないだけで。

――そのような作家同士の交流を発信することはあるんですか?

平坂
たまにボードゲームをしている写真をTwitterに上げたりしています。

岩浅
春斗みたいにホモアピールもたまにしていますよ、志瑞祐先生と。

――作中では伊月の部屋に集まってゲームしてましたが、先生が今一番ハマっているゲームは?

平坂
最近気にいっているのは『ダイスフォージ』です。ダイスの面を自分で入れ替えて強くしていくゲームです。

【本作に登場するゲームの情報は、公式コンテンツ「作中の登場ゲームで遊ぼう!」でチェックできます】

――作中のオリジナルゲーム「ラノベ作家の人生」についても聞かせてください? 先生もいくつかネタを提供されたそうですが。

平坂
すごろく的な要素があるゲームなんですけれど、マスの指示に「コミカライズでお金が増えた」とか「実写映画化されて幸福ポイントが下がった」みたいな作家あるあるネタを提供させてもらいました。

■平坂先生の執筆スタイルは……!?

――執筆時のこだわりについてなのですが、作中の那由多みたいにこれが無ければ書けないというものや決まりはありますか?

平坂
僕はあんまりないですね。書く時は必ず作務衣に着替えるという人や、コーヒーを飲んで気合を入れるという人は知り合いにいます。

――では書けない時は?

平坂
書けない時はもう書かないです。ゲームをやったりお酒飲んだりします。

――伊月と春斗はタイプの違う作家として描かれていましたが、先生はどちらのタイプが近いですか?

平坂
両方とも……ですかね。作中だと伊月が才能タイプで春斗が職人タイプみたいにキッチリ分かれていますが、実際の作家だとそこまでカッチリ分かれている人はあまりいないんです。だから職人型の作家でも感覚でガーっと書きなぐっちゃう時もあれば、才能型の作家が他の作品をたくさん読んで研究するということもあります。伊月と春斗も作家としてのタイプは違いますが、お互いがお互いにコンプレックスを持っている似た者同士なので、両方とも自分かなと。


――Blu-rayボックスには先生書き下ろしのドラマCDが付属します。こちらの注目ポイントを教えてください。

平坂
風邪を引いた伊月のもとに、ヒロインたちが代わる代わるお見舞いに来て囁いてくれます。那由多、京、千尋のほかにも作中に出てくる女性キャラがほぼ出てきます。中には1話冒頭に出てきた現実にいないキャラも……。

――ちなみに、どんな感じでお見舞いをしてくれるのでしょう?

平坂
キャラごとに違うんですけど、普通にお粥を作ってくれるキャラもいれば、パンツで顔を拭いてくるキャラもいます。アフレコ時に聴いて驚いたのですが、臨場感がすごくて本当に看病をしてもらっているかのような感覚を味わえます。

――妹バカな伊月ですが、先生ご自身が理想だと思う“妹”はどんな妹ですか?

平坂
僕自身は妹がすごく欲しいというわけでは無いんですが……強いて言えば千尋が理想かな、と思います。どちらかというと嫁にしたい感じで。あんまり妹願望は強くないです。いたらいたで可愛がるとは思いますけどね。

――続けてタイトルにかけて、平坂先生の“〇〇さえあればいい”というものを教えてください。

平坂
伊月の好物にも反映されているのですが、“海老さえあればいい”ですかね。本当に大好きで、お酒を飲むときも自分でアヒージョや天ぷらを作ってつまみにしてます。


――最後にあらためてBlu-rayBoxで本作を見直す際に、注目して欲しいポイントを教えてください。

平坂
見返すというよりは新鮮な気持ちで見て欲しいです。過激なネタ以外にも、色々なゲームやお酒が出てきて、アイキャッチでそれらを説明しているので、一時停止してじっくり読んで興味を持ってもらえたら、実際にゲームを遊んでみたりお酒を飲んでみたりすると、作品の世界がより深く楽しめると思います。
また、ギリギリのところを攻めていこうというスタンスで脚本を書いており、オンエアでは規制に引っかかってしまった箇所がたくさんあります。観ていてピー音が多いと感じたかたも多いと思いますが、Blu-ray版ではだいたい外れるので、ぜひとも真の姿を味わってほしいです。映像面での規制も解禁されますので、楽んでください。

『妹さえいればいい。 』
Blu-ray BOX 上巻
価格:¥18,000(税抜き)
発売日:2018年1月26日

Blu-ray BOX 下巻
価格:¥18,000(税抜き)
発売日:2018年3月23日

【「妹さえいればいい。」連載インタビュー記事まとめ】
第2回 キャラクター原案・カントク先生「平坂先生のフェチを理解して再現する」
第3回 音楽・菊谷知樹「クリエイターの日常を“渋谷系”で表現」