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『わろてんか』波岡一喜ら新キャラ登場で新展開 芸と恋を巡る三角関係に

2017年12月16日 13:22  リアルサウンド

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 『わろてんか』(NHK総合)では第10週「笑いの神様」より、月の井団吾(波岡一喜)、月の井団真(北村有起哉)、お夕(中村ゆり)の3人を迎え、新たな物語が展開されている。第11週「われても末に」では、上方落語「崇徳院」で詠まれる下の句<われても末に/あはむとぞ思ふ>が意味するように、離れ離れになった団真とお夕が落語を通して、また思いが一つになる物語が描かれた。2週に渡る前後編で紡がれる、二人の兄弟弟子と先代の娘を巡る芸と恋のストーリーだ。


参考:藤井隆、大野拓朗、前野朋哉……『わろてんか』を支える名バイプレイヤーたち


 噺家が落語を披露するのが、『わろてんか』ではその週のクライマックスであり、てん(葵わかな)や藤吉(松坂桃李)らにとっての転機にもなっている。第7週「風鳥亭、羽ばたく」にて、喜楽亭文鳥(笹野高史)が「時うどん」を披露した際には「時うどん」がTwitterのトレンドに入り、その反響の高さを物語った。先週の第10週では、風鳥亭の番組に穴が空き、急遽団真が「崇徳院」を披露するも、客から野次を浴びせられ、途中で高座を下りることに。妻のお夕は、「よかったで。大丈夫や、元気出して」と彼を励ますものの、団真は「俺はとっくにあかんのや。それをお前が頑張れや、ずうっと言い続けてきたせいで……」と震えるほどの怒りと悔しさを滲ませる。追いすがるお夕に団真は手を上げ、「団吾んとこにでも行ったらええ」と冷たく言い捨てる。久しぶりに高座に上がるも“ニセ団吾”と呼ばれ、噺家としての最後のプライドをズタズタにされた団真。それは自身を愛してくれているお夕には見られたくなかった醜態であり、彼女の優しさが彼の思いを逆撫でしていた。お夕の頬を叩いたのも、団吾の元に行った方が幸せになるという団真の思いからなのかもしれない。


 団真に足りないのは、自身の噺家としての腕を信じること。お夕が団吾の別宅で世話になることを選んだのには、きっと団真に人知れず落語を練習する時間を与えたかった思いもあるはずだ。互いに思い続ける2人にてんと藤吉は、団真にもう一度高座に上がるチャンスを与える。そこに、現れたのが団吾。彼もまたお夕を好いていた。恋敵であり、兄弟子の団真に団吾は、「演れるもんなら演ってみい、下手くそ!」と背中を扇子で押し、“兄弟弟子”としてのまじないをかける。普段は破天荒な団吾が、噺家としての人情を見せた瞬間だ。団真は、人が変わったような見事な立ち振る舞いで「崇徳院」を披露する。拍手喝采の寄席には、涙を流すお夕の姿があった。かつて、藤吉にも“ニセ団吾”と揶揄された時、お夕は「ほんまもん」と団真を疑わなかった。それは妻として彼を信じ続けたお夕が、ずっと見たかった景色だったのだろう。


 演目を終え、緊張から解放された団真をお夕が迎える。多くを語らずとも通じ合い、寄り添う姿。<われても末に/あはむとぞ思ふ>は、お夕と団真に加え、喧嘩続きのてんと藤吉にも当てはまる言葉である。2人は、お夕と団真の仲睦まじい姿を見て、改めて自分たちの関係を見つめ直す。さらに、かねてより藤吉が寄席に出ることを懇願し続けていた団吾は、風鳥亭への出演を了承。追い風が吹いたように思えた風鳥亭であったが、第12週「お笑い大阪春の陣」では寺ギン(兵動大樹)との揉め事により再び寄席が窮地に陥る。寄席の数を増やそうとする藤吉に、どのような試練が待ち受けるのか。


(渡辺彰浩)