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完食を強要する「給食ハラスメント」の相談が急増 教師の過剰指導が原因で不登校になるケースも

2017年12月16日 11:01  キャリコネニュース

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今年9月、小学校で50代教諭が給食指導で児童5人を嘔吐させたと報じられ、話題になったが、こうした行き過ぎた指導を「給食ハラスメント」と呼ぶ動きが出てきている。

11月下旬、フェイスブック上で給食ハラスメントに関する専門相談窓口を設置した一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会によると、ここ最近、学校給食に悩む子どもを持つ親からの相談が急増しているという。キャリコネニュースの取材に山口健太代表は次のように語る。

「今年の春頃から、親御さんから"子どもの給食"に関する相談が増えました。9月の件の他にも、今年は『食べる時間が短い』『まずい』など給食に関する話題が多くあがりました。11月までに約50件、今は1日2~3件の相談が寄せられています」

しかし「元々給食の悩み相談へのニーズはあった」といい、給食で何かしらのいやがらせを受けている子どもや、その親の悩みが表面化するようになった、と見ている。

「教員自身、食育研修は受けていても、給食"指導"は研修すらない」

相談内容としては、保育士・教員に無理やり食べさせられるなどの給食指導を受けた子どもが、余計に悪化して食べられなくなった、というものが多い。中には、学校給食が原因で不登校になってしまった子どももいるという。

「例えば、班の全員が残さず食べられたらシールがもらえるという取り組みも、食べられない子からすればプレッシャーです。同級生から『なんで食べられないんだ』と責められる。生き地獄ですよ。登校拒否に繋がるケースもあります。他にも、食べられない子には別室で食べさせる学校もあるようです」

このようなことが起こる理由として、教員も昔、同じような完食指導を受けてきたからではないか、と指摘する。さらに教員側の理解不足を挙げる。

「食材の栄養や、残さず食べようなどの食育教育の研修は多いのですが、そもそも給食"指導"の研修はないんですよね。手引きはあっても具体的に『こういう子にはこのような給食指導をしましょう』という指針はないようです」

実際、給食関係の相談者のうち2割は教員で、「あまり食べられない子にどのような指導をすればいいのか分からない」「いままで無理やり口に押し込ませていたが、これでいいのだろうか」などという悩みも寄せられているという。

悪化すれば「会食恐怖症」になりかねない 給食を避けて定時制高校に進学する人も

では、子どもが給食ハラスメントを受けていた場合、親はどうすればいいのか。対処法のひとつには、やはり親が教員に直接「こういう理由で食べられないので控えて」と伝えることが挙げられる。

しかし一番は「家庭内でのフォロー」が重要だという。家庭での食事も含めて「無理やり食べさせない」「食べても褒めない」「みんな一緒だと考えない」の3つの"ない"が大切だと話す。

「先生の中には、一人ひとりの食べるスピードや胃袋の大きさを考慮せず、給食指導をする人もいます。でもそれって体罰みたいなものですよね。だから先生と一緒になって怒ったり励ましたりするのではなく、特に親御さんには『子どもの味方』でいてほしいんです」

完食を褒めることは同時に「食べられないことはダメなんだ」と思わせることにも繋がる。給食が食べられないのは不安障害が原因になっているケースもあるため、プレッシャーでより悪化するケースもある。

「もちろん、親や先生が『子どもの食べている姿をちゃんと見ている』ということは重要です。だから声をかけるにしても『えらい、すごい』ではなく、『一杯食べたから元気が出るね』『野菜食べるとキレイになるんだよ』という方が、気楽に食べられるのではないでしょうか」

山口さん自身、かつて人前で食事をすることに恐怖感を覚える"会食恐怖症"だった。給食ハラスメントは会食恐怖症につながる可能性があるという。一番つらかったことは「周りに話しても理解してもらえないこと」だそうだ。

また寄せられた相談の中には、「人前で食べるのがつらいから午前だけの定時制高校にしか進学できなかった」という人もいると話す。

「会食恐怖症が原因で夢や目標を諦めることだけはしてほしくないですし、給食ハラスメントを受けている人に『気にしなくていい』と言いたいです。でも、やはり中々理解はされ難い。今後は、食育が栄養バランス以外の面からもアプローチされれば、と思います」